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異世界転生からの世界革命  作者: アーシャ
第2章 ウィルルアルトの幼児期
31/52

10節   ウィルとルーシャの日常 その2

第2章10節の改訂版(15/2/15)です。


ルーシャが眷属となってからの日常風景(幼児期)です。

少し長めです。

side ウィルルアルト・スヴュート



 ルーシャと契約してから随分と経った。

 俺達は相変わらず訓練の日々を送っている。


 ルーシャが3歳を迎えた時、骨格も大分しっかりとしてきたので魔術だけでなく体を鍛え始めた。

 俺は『武神』のお陰で、どんな武器でも手に取ればどのように扱えばいいか分かし、武技を見ればその特性などがなんとなく分かる。頭でなんとなく分かる程度では、実戦で格上と戦う時に使い物にならないだろう。だが、おぼろげながら理解することができるので【技能統制】で武技関連のスキルが取り放題だったりする。なので、一気に最高レベルまで習得し練習することで使いこなせるようにするという魔法と同じ流れができている。ちなみに、目標はミリ単位での制御を目指している。


 眷属関連の機能を利用してルーシャも武技を取得出来るので、彼女もスキルレベルだけは高い素人になっている。

 俺達のメイン武器は刀だ。俺は前世で剣道をしていたし刀というのにも憧れていたからこれを選んだ。ルーシャは巫術系統のスキルの中には刀や弓を使用する技があり両方とも鍛えているが、俺との手合わせが刀中心なので自然とメイン武器になったようだ。


 体を動かす訓練が始まったので、俺は『戦士』を追加で獲得した。今はいくつかの派生職や上位互換職を経て、『刀聖』『暗殺者』『忍者』と3個の職業を得ている。ルーシャも、眷属スキルで擬似的にスキルを持てることなどを利用して、相当な数の職業を取得している。



 うん、間違いなく2人とも仲良く怪物の仲間入りをしたな。

 なので、俺達も常にステータスには全力で偽装をかけることにした。MENが高いから何もしなくてもそうそう鑑定系のスキルで見破られることは無いが、念には念を入れておいたほうがいい。偽物のステータスを表示されていれば不審に思う人は少ないし、偽装情報に合わせた手加減をする練習もしている。



 さて、ルーシャも来たみたいだし今日は何をするかな。

 お、この気配はマルコか?一緒に来ているのか。


「隙あり!」


 マルコが俺の"横を通り過ぎて"いく。俺はその背中をそっと押して、大怪我しない程度に吹っ飛ばす。


 ズゴォォ……


 盛大に顔面ダイブを楽しんだようだ。ま、マルコだし大丈夫だろ。


「おはよう、ルーシャ。今日はマルコと一緒なんだな」

「ウィルくん、おはよう。うん、そうなんだ。今日はお兄ちゃんと3人で潜ろうと思う」


 最近俺達2人の訓練は、ダンジョンで行う実戦訓練が中心になっている。

 ダンジョンの名前は"クラインケラー"――母さんが支配下に置いているダンジョンだ。ダンジョン入口周辺は母さんの結界が張られていて、一般の者は立ち入れないようにしてある。


 この世界には人造ダンジョンと自然発生したダンジョンと2種類ある。人造ダンジョンは古代文明の名残らしいが、造られた訳や作成方法などは遥か昔に失伝されて分からないそうだ。長年の研究で人造ダンジョンのコアが"八大神剣"と似ていることを突き止め、やっと制御できるようになったらしい。八大神剣とは8大国家がそれぞれ所有する国宝の剣で、一説には神から直接賜ったとかいう話もある。国内の町を囲む石柱などは、この剣の力で機能しているそうだ。


 何でそんな宝剣の機能を調べられたのか?

 疑問は残るが、母さんの規格外っぷりを見てるのでとりあえず何も言わずに納得しておいた。


 話を戻そう。


 クラインケラーは、小さい地下室がいくつも繋がったようなダンジョンだ。ダンジョン内は壁に設置されている魔道具が照らしてくれるので、少し薄暗くはあるが行動に支障はない。天井も刀や槍を振り回しても大丈夫なぐらい高いので、人目に触れずに訓練するのにはもってこいの場所だ。


「おーい、マルコ。そろそろ起きろ」

「そうだよ、お兄ちゃん。早く行こうよ」

「…………お前ら、最近俺の扱い酷くないか?」

「そう言われてもなぁ……訓練になるからと言って、奇襲をかけて来てるのマルコだからな?」

「うぐっ」

「うん、それに気配操作を見抜けずに自滅してるだけだからね。今のお兄ちゃん」

「うぐっ…ウィルぅ。ルーがルーが最近冷たいよぉ」

「毎回説明して毎回注意しても直らないからじゃないのか?」


 毎回ちゃんと注意と対策方法おしえてるんだけど、マルコの奇襲には殆ど改善の兆しが見えない。多分ワザと笑いを取るためにやっているのだろう。まだ子供なのに、いっつも迫真の演技で凄いと思う。あ、今の俺も対外的には子供か。


「今そっちでPT(パーティ)組んでる?」

「いいえ。今日はウィルくんがPTL(パーティリーダー)の日でしょ?」


 PTに様々な特典を付与できるスキル【パーティコマンド】は、『探索者』のほぼ固有スキルだ。なんと、スキルの効果が『探索者』の職業レベルに依存する。普通の人はこの隠し効果は直接見れないので、長年の勘や先達の知恵程度しか情報がない。小さいことのようであるけど、スキルが完成して本当に便利になったと思う。


 ただ単純に結成したのと違い、回復魔法などのサポート系スキルが効きやすくなるし、PT内専用の特殊通話機能なども術者次第では使えるようになる。なので、俺は1PTに1人は『探索者』持ちを入れるべきだと考えている。



 俺は、2人をPTに誘い庭の転移陣に向かった。この転移陣の転移先はダンジョン入口の部屋となっている。最初の部屋は安全地帯なのでいきなり襲われることは無いが、一応何が起こってもいいように装備を確認する。


「準備はいいかな?」

「うん」

「おう、何時でもいいぞ」

「では、出発!」




side マルコ



 ボコーン!


 ウィルと対峙してたゴブリンが、"訓練用の木刀"を受け止めきれずに吹き飛んでいく。ああ、ゴブリンキングかもしれないな。反応してガードは出来たのだから、普通のゴブリンじゃないだろうな。


 ゴブッ!


「おわっと!」


 飛んだゴブリンを見てたら、背後から別のゴブリンに襲われた。

 しまった!やられる!!


「ぼーっとするのは後だよ、お兄ちゃん」


 衝撃がこないと思ったら、目を瞑った一瞬であのゴブリンは視界から消えていた。妹に助けられたようだ。

 相変わらず、こいつらは別次元の強さを持っているな……ウィルはともかく2歳年下の妹に助けられるって結構辛い。


 PTに入ってればレベルは上がる。一般に強い敵ほど倒した時の経験値は多い。なので、今の俺は客観的に見たらPTに寄生してるお荷物だが、このPTは普通のPTじゃない。他人が見ても怪しまれない程度に力を抑える訓練をしてるPTなのだ。

 そう、俺が一緒にダンジョンに入る時は、俺と連携を取れる程度に力を制御する訓練をしているのだ。

 何時もながらペースが無茶苦茶速い。ジェルマン兄さんもたまに俺と一緒に参加するが、兄さんも付いていくのがやっとだって言っている。長時間潜っていれば、今のように注意が散漫になるのは仕方の無いかもしれない。


 辺りをよく見渡すと、いつの間にか全ての出入り口にゴブリンが詰め掛けている。もしかしなくても完全に囲まれているな。


「うーん。火力的にこのペースだと囲まれちゃうのか」

「もうちょっと誘導方法を考え直した方がいいかもね、ウィルくん」

「だな。マルコ」

「おう、わかってる。大丈夫だ。いつでもいいぞ」


 このままじゃジリ貧だ。ウィル達は大丈夫だろうが、主に俺がヤバイ。


「んじゃ、やるかルーシャ」

「うん」


 2人は何もない空間から鞘に入った剣を取り出した。反り曲がった片刃の独特な形状の剣で、ウィルは日本刀とか言ってる。俺にはサーベルとの違いが今一ピントこないが、妹も全然違うと言っている。特に妹は、舞のスキルはこの剣じゃないと使えないらしい。舞とは踊りのことみたいだが、ウィルが言うには踊りでは無いらしい。謎だ。



 スゥ……


 2人の姿が消えた。


 次の瞬間、コブゴブ五月蝿かった群れの一部が沈黙をする。そして、ゴブリン達の体が上下左右にずれていく。

 いつみても凄い斬れ味だ。刀ならではの斬れ味らしいが、剣でも似たようなことされているので違いが本当にわからん。


 ウィル達の本気の速さは速過ぎる。

 兄さんは辛うじて軌道が少し見えるそうだが、今の俺には全く見えん。


 時間にして数分だろうか、疲れを全く見せずにウィル達は戻ってきた。


「何匹ぐらい居た?」

「276匹だな。ちょっと数が数だから、急いで素材集めよう」


 このダンジョンは古代の技術によって作られたものらしい。人造ダンジョンと言うそうだ。


 人造ダンジョンの魔物は通常の魔物と大きく異なる点が2つある。

 1つは、倒した魔物が10分ほど経つと消えてしまうことだ。もう、霧か幻かってぐらいに忽然と消える。

 もう1つは、倒した時にドロップアイテムを入手できることだ。ドロップアイテムの中には、通常では手に入らないようなアイテムもある。死体が消える前なら解体もできるので、追加でドロップアイテムが増える稼ぎがいいことで有名だ。


 俺も【解体】のスキルは持っている。【解体】で一度素材に分けてさえしまえば、時間経過で消えることもない。全部の死体を解体したいが、流石にこの数だから無理だろうな。


 俺はスキルレベルが低いから、練習と割り切って手当たり次第解体することにした。ゴブリンだし、魔石以外は特に取るものは無い筈だ。


 俺は黙々と解体作業をしていった。




side ルーシャ



 ウィルくんと眷属契約してから私の生活は変わった。


 暇さえあればスキルを使ってAPとSPを稼ぐようになった。

 同じスキルならスキルレベルが高い方を使う方がSPを多く入手できる。このようにして稼いだSPは、通常直前に使用したスキル――稼ぐために使ったスキルに自動分配される。最高レベルのスキルでSPを稼いでも、そのスキルのレベルは最高なのでSPは無駄になる。普通なら無駄になる(自動分配される)SPを今の私は貯蓄することが出来る。おかげで、私もウィルくんみたいに大量のSPを持つことが出来ている。


 他にも、スキルの訓練の仕方とか変わったし、職業なんかも積極的に取得していくようになった。

 以前とは比較にならないスピードでスキルレベルを上げられる。通常、レベルを上げるために訓練をして、レベルが変化する毎に微妙な差異を修正し自分に最適化していく。でも、いきなり最高レベルにとか出来るようになったので、スキルを使いこなすための訓練のみするようになった。

 また、スキル取得の難易度がかなり下がったと思う。例えば、スキル習得用魔石は取得などが困難なスキルを覚えるのに一般でも使われている。魔石を使用しても取得できるかどうかは本来は運次第だが、【技能統制】があると一度経験したモノは取得可能リストに載るので1回で確実に取得が可能になる。

 なので、覚えるスキルも不確かな習得予測を立てて訓練するのと違い、自分が望む構成に簡単にすることができていると思う。


 私はウィルくんと眷属契約をしてよかったと思ってる。


 時間や労力が物凄くかかるコトをそう苦労せずにポンとしているのは、人によってはズルしてるように見えるだろう。

 でも、そんなのはズルでも何でもない。絶対にそうなるための努力をしてるからだ。


 それに、私の場合は相当な力をつける必要があった。シャル小母さんの代わりに、世界を救う旅をするためだ。私には世界の崩壊なんてピントこないけど、このまま放置していたら自分の家が家族が消えていくのはわかる。何もしないうちから諦めるのは癪なので、小母さんの後継者に成れなくてもウィルくんに付いて行くつもりだ。準備(力)不足で出来ませんでした、なんてことがあったら多分私は私を許せない。


 直接言葉に出していないけど、マルコお兄ちゃんもウィルくんと一緒に旅する気満々だ。


 ハッキリ言ってお兄ちゃん達は弱い。

 少しでも力を付けるために、お兄ちゃんに私と同様に眷属になることを勧めたけど断られている。ウィルくんが断るのは分かるけど、何でお兄ちゃんが断るか――ウィルくんは納得しているようだけど私には理解できないでいる。

 こういうのが、経験の差なのかもしれない。


 今もお兄ちゃんは、黙々と【解体】のスキルレベルを上げるために頑張っている。


 人造ダンジョンの魔物の死体は【亜空間】にしまう事が出来ない。収納しようとしたら、霧みたいに消えてしまう。なので、この場で解体するしかない。


 【解体】は死体などから素材を作るスキルだ。スキルレベルが高いほど、素材が高品質になり高難度の解体作業ができるようになる。もっとも、同じスキルレベルでもちょっとしたコツを知っていかどうかで品質が若干変わる。常に勉強が必要なスキルだ。


 コツコツと努力する姿は、凄く括弧いい。私も見習わなくては。



「こっちの方は終わったぞ」

「私もこの辺も終わったよ」


 解体が終わってお兄ちゃんを見ていたら、部屋外の解体作業を終えたウィルくんが戻ってきた。


「後はマルコの周辺のやつだけか」

「手伝う?」

「そうだな……間に合いそうにないし、手伝うか」


 私達は【亜空間】を使って手に入れた素材を片っ端から収納できるが、お兄ちゃんは少し離れた場所に置くか袋などに収納するしかない。なので、常に手元が空いている私達と違って作業がし難く時間がかかる。


「マルコ、こっちの方が終わってない分か?」

「ウィルか。そっちはもう終わったんだな。ああ、そうだ」

「それじゃ、私はこっちからするね」

「おう」

「頼む」


 3人掛かりで急ピッチで解体していく。消滅前に何とか全部の固体を解体できそうだ。


「便利だよなー【亜空間】」

「そうでも無いんだがな。っとそれより手動かせ。時間がない」

「お、そうだった」


 【亜空間】は、異空間を作るスキルだ。その空間内に色々なものを収納しておくことができる。収納容量はスキルレベル以外にもMPやINTなども影響するらしく、容量は体積や重量依存じゃなくて表面積依存だ。これは一見不可解に見えるが、【時空掌握】で空間の認識を密に出来るようになったものなら納得がいくだろう。【亜空間】に限らず空間を認識する際、表面を包み込むように対象を認識するからだ。つまり、表面に感知用の網を張り巡らせて認識しているので、【亜空間】の容量も表面積依存となるわけだ。



 最後の死体を解体し終えるのと、死体が消えだすのは丁度同時だった。


「ギリギリ間に合ったな」

「ああ、あんな量間に合わんと思ってたぞ」

「さてと、今日はここまでにして帰って反省会をするか」

「だね。そろそろ戻らないと夕飯の手伝いに間に合わなくなっちゃう」

「だな。俺はもうクタクタだし」

「お兄ちゃん、体力なさすぎるよ」

「ルーシャ、俺達の体力のほうが異常なんだからな?マルコは多分体力あるほうだよ?」

「おい、ウィル。語尾に疑問符付いてなかった?そこは言い切ってくれよ」

「あはは。ま、同学年の子と比べてレベルが高すぎるのは確かだから、マルコは強いほうだよ」


 ステータスを偽装できてからは、たまに外に出かけようになっている。確かに近所の子と比べたらマルコお兄ちゃんは強いかもと思うけど……


「うーん。何か納得いかない……」

「俺達が異常すぎるんだからな?」


 その後色々説明されて、頭では理解できたんだけど、何でか納得いかなかった。ウィルくんが、異常な環境で育っている弊害だって言ってたけど、そうかもしれない。



 家に戻ってきてから、まずは戦利品を分配した。

 魔石なんかは冒険者ギルドに持っていくと結構な金になるらしいけど、今お金には余り困っていないしそもそも冒険者ギルドに登録さえしていない。私とお兄ちゃんは、パパ達に渡して材料として使ってもらうことにしてる。


 そして分配が終わってから、今日の問題点をシャル小母さんを交えて議論していった。

 今日は見通しの甘さが浮き彫りになった。いつも以上に白熱するだろう。


 こんな感じで、私の日常は過ぎていくのだった。

ご清覧ありがとうございました。


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