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異世界転生からの世界革命  作者: アーシャ
第2章 ウィルルアルトの幼児期
22/52

3節(2) 再戦、コボルトキング (2)

第2章3節の改訂版(15/2/5)です。


分割した2番目です。

side ケンセイ・ムラカミ



 ついにコボルトキング討伐作戦が始まった。


 今回の俺達の作戦は、簡潔にいえば"トレインして殲滅"ってことだ。


 部隊は役割ごとに殲滅部隊A,Bと囮部隊と遊撃部隊と4種類あり、これをローテーションで回す。


 部隊の動きだが、まず程よい大きさの直線通路に2箇所に分けて待ち伏せをする。このとき遊撃部隊と殲滅部隊Aはボス部屋に近い箇所に、殲滅部隊Bはボス部屋から離れた位置に陣取ることになっている。

 そして次に囮部隊が敵を釣って殲滅部隊AとBの丁度間に誘導する。誘き出しが終わるまで遊撃部隊と殲滅部隊Aは隠れておくが、もし囮部隊に被害が出そうなら援護することになっている。

 無事に目標ポイントまで誘い出せたら、囮部隊は殲滅部隊Bと合流し全員で一気に挟撃する。ただし、遊撃部隊は次のローテーションで囮部隊になるので基本的に余力を残しながら戦い、2つの殲滅部隊は全力で敵を殲滅することのみに集中する手筈になっている。


 つまり、丁度挟み撃ちできる場所に誘導した後一気に前後から挟撃というのが今回の作戦の基本となる。



 最初の囮部隊が帰ってきたようだ。俺達のパーティのスタートは殲滅部隊Bからだ。


 前回失敗したときと同じメンバーで俺達はパーティを組んでいる。

 俺としては先程の斥候パーティのほうが動きやすかったので、正直パーティは変えたくはなかった。


 唯一の救いは、アンナ(本名は井上杏奈)がパーティメンバーにいることだ。彼女とは1冒険者として外部パーティに参加した際にもお世話になっている。先程の斥候パーティでも一緒だった。アンナは回復系職業『プリースト』で、俺と一緒に鍛えてもらってるだけあって召喚組では凄く腕が良い部類に入ると思っている。安心して後ろを任せられる頼もしい仲間だ。


 アンナと俺は、先輩冒険者達のアドバイスで【パラメータ閲覧】というスキルを習得している。


 この世界はゲームとは違い同じ魔物でも個体毎にステータスが違う。傾向や平均的なパラメータなどは事前に調べられるが、実際に目の前にいる敵がどうかは分からない。実際の敵情報を少しでも知れば生存率を上がると、先輩方は言っていた。言われれば当然のことではあるが、言われるまで適当に度調べればなんとかなるというゲーム感覚でいた。ホント異世界を舐めていたと猛省している。


 この事実を知った俺達は、大金を叩いて【パラメータ閲覧】の学晶石を買うことにした。【パラメータ閲覧】の学晶石は需要があるため、共通通貨で一個数百万円もした。しかも、失敗すると再購入しなければならない。話は変わるが、通貨の単位が円なのは、異世界(日本)人が貨幣を普及させたからだ。俺は秘かにそいつは天才だったと尊敬している。


 命には代えられないので、全財産をかけて俺達は何度も【パラメータ閲覧】の取得に挑戦した。装備以外全て質に入れることになったが、結果的に見れば2人とも習得できたので後悔はしていない。


 俺達は【パラメータ閲覧】を習得後、何度も使用してスキルレベルを上げている。しかしまだスキルレベルが低く、自分より格下の相手の名称とレベル程度しかわからない。今回はなんとかレベルと魔物名は分かるので前回よりは良いが、その程度だ。かなり不安だが、この先何も分からない状況なんていくらでも出てくるだろう。その時の練習と思って割り切っている。


 皆にもコボルトの特徴を伝えてある。冒険者の間では常識と言われる内容だが、過去の俺達は全く知らなかった。ちょっと調べれば分かることだったのに、それをしなかったなんてホント異世界舐めていた。悔やんでも仕方ないので、教訓として活かそう。



 ワオォォォン!


 遠くからコボルトの吠え声と足音が聞こえてきた。

 目を凝らすと囮部隊とその後ろにコボルトの一団が見える。どうやら、無事釣れたようだ。


「よし、俺が合図したら戦闘開始だ!」


 タッチャンが相手との距離を測って合図のタイミングを見極めている。


「行くぞ!戦闘開始だ!!」


 タッチャンが大声で叫ぶのと殲滅部隊Bが囮部隊と合流するのが同時だった。


「こっち向けや!おらぁぁぁ!」


 俺はすぐさま敵の前に立ち、罵声をかけながら【挑発】などを使い敵のタゲを集める。

 『守護騎士』の職業特性は、防御力に優れ仲間の壁となることだ。敵の攻撃を一手に引き受けることにより、仲間は攻撃などに集中できる。また回復がしっかりとサポートしてくれなければ、壁役は敵の集中攻撃にさらされて死ぬ危険性が非常に高い。

 このパーティには信頼できる回復役がいる。俺は安心して前面に出て敵をひきつけようとした。


「【限界突破】発動!!」


 俺が敵のタゲを集めるためにスキルを使った時、急に後ろでタッチャンが叫んだ。


 振り返る前に横をタッチャンが高速で過ぎていく。

 タッチャンはいきなり敵の中に突っ込んみ、上昇したパラメータにものをいわせて殲滅を開始した。


 折角、タゲ集めたのに無茶苦茶だ……


 【限界突破】は自身の能力の限界値を"強制的に引き上げる"――つまり本来の自分の力以上の力をだせる非常に強力なスキルだ。使用時及び使用中に大量のHP及びMPを大量に消費するが、それに見合うだけのアドバンテージがこのスキルには存在する。

 このスキルの運用は、短期決戦や最後の決めに使うのが基本だ。一気に殲滅し、ポーションでも飲んで完全に回復できれば問題はないが……こんなどうでもいい序盤で使うのは俺には理解できなかった。


 よく見ると陣形は崩壊しかかっていた。

 全体の3割程度だろうか。タッチャン以外にも能力値に頼った殲滅戦を行う者がいたのだ。

 格下相手だと戦闘が雑になりがちになる。圧倒的なステータスが有れば悪くはない選択肢だが…



 第1団との戦闘はすぐに終わった。時間にして数分、俺達の圧勝だった。


「余裕だったな!よし、次はこれ以上の数を目標に行こうか!」


 タッチャンはトレイン数を上げる方針みたいだ。持久戦の筈なんだが、最初から飛ばしすぎではなかろうか……


 【限界突破】にかかる肉体の負荷は相当なものだと聞く。タッチャンとかは気にしていないようだが、命を削るという話もまことしやかに囁かれている。実際回復薬や回復魔法で十分万全な状態に戻るようなので、そこまでのリスクはないのかもしれないが……

 どちらにしろ、もう少し慎重に使いどころを考えて欲しい。序盤で使いまくって皺寄せが本命のコボルトキング対峙時にならないことを祈るだけだ。


 さて、ローテーションのため場所移動をしようか。

 …と、その前に忘れている事を指摘しておくか。面倒だが、このままでは不味い。


「次のローテ前に、この死体を焼くなりして処分しないと戦いにくいぞ?」


 タッチャンは驚いたような顔をしてこっちを見てきた。本当に気付いてなかったみたいだ。解決案を出すか。


「……他の場所探すのも大変だし、俺達は全員【アイテムボックス】を持っている。嫌かもしれないがそこに格納しておくのが一番時間を取らないと思うぞ」

「おお、そうだな!汚くて嫌だが、それがいい。囮部隊は釣りに、その他は各自死体を収容するように!」


 【アイテムボックス】は、最大収容量4[t]という総重量制限はあるが体積での制限がない非常に有用な個人用収容スペースだ。出し入れするときに対象に手で触れなければならないなど細かい条件は色々あるが、収容中は重量も感じなければ体積もゼロになるので戦闘に支障はでない。


 俺の次のポジションは殲滅部隊Aなので、死体回収をどんどんしていった。

 今の俺の【アイテムボックス】には予備のポーションと非常食と貨幣が少し入っている以外何も入っていない。ここに来る時に必要最小限にしておいたので、収容量は結構余っている。



 コボルトの死体を処理し終わり、俺達のパーティは脇の通路に身を潜める。


 数分後、囮部隊が次の敵を連れて戻ってきた。そして、また無駄に高火力で殲滅を開始した……


 もう、注意して全体を見ておいて疲れが出てきたら注意を促すことにしよう。それでなくとも、綱渡り的な危うさが俺達全体にある。一々指摘していたら、余計にバランスが崩れて崩壊しかねない。


 2回目の殲滅も上手くいった。



 その後、俺は遊撃部隊、囮部隊と次々ローテーションを回りながら、黙々とコボルトの群れを削っていった。その間に何度もヒヤヒヤしながら戦っていた。


 だいたい20回ぐらい戦った頃だろうか、俺はかなり精神的に疲れていた。


「タッチャン、1度休憩を挟まないか?」


 俺はタッチャンにそう切り出した。




side 田中達也(タッチャン)



 作戦開始から約3時間ほど経過した。


 俺は今勇者タッチャンとしてコボルト共を殲滅している。


 今回は俺達のみで立案し行動しているから順調そのものだ。

 最初は一度に40匹程度だったのが、今では100匹ぐらいまで1回に殲滅している。

 初っ端から全力で行っているおかげで予定よりも早く終わりそうだ。時間が短いほうが負担も少ない。さっさと終わらせるに限るのだ。


 さて、次のローテは殲滅部隊Bだな。おっと、その前に死体の処理だな。

 本当は俺達がするような仕事じゃないが…ま、戦闘状況を良くするためだ。我慢しよう。



「タッチャン、1度休憩を挟まないか?」


 村上が急に提案してきた。何馬鹿なこと言ってるんだろうか。


「今絶好調なのに、この波に乗らないでどうする?!」

「かなりの時間まともな休憩していないだろ」


 囮が誘き出している間、俺達はしっかりとHPとMPを全快にしている。休息は十分だろうに、何を言ってるんだ?


「そろそろ休み入れんと、集中力が途切れてしまう」


 なるほど、順調すぎて単純作業になっているからな。今一度集中しなおしたいわけだ。自分でコントロール出来ないとは軟弱者め。

 周囲を見ると、少し覇気の無い者がいる。なるほど、村上だけじゃないのか……


 俺は考える。


 昔いた会社ではよく単純作業をさせられた。大した労力はかからない作業だが、ずっと続けていると飽きがくる。そうなると効率は落ちたものだ。

 今現在、一部の者にはそれと同じ兆候が見られるってわけだ。

 そう考えると、一度休憩してもよいかもしれんか。パラメータ的には俺達が3時間ほどでへばる訳は無いんだが、仕方ないか。


「なるほど、それも一理あるな。よし、死体片付けて休憩にするか」



 俺は休憩中、現在の進捗状況について考えていた。


 作戦開始当初、1回40匹を10分で倒すとして時間を計算していた。

 だが、実際には1ローテーションは8分程度ですみ、しかも100匹一気にいけている。

 今現在の討伐数は約1600匹、残りは400匹程度だろう。後4回で取り巻きを排除できそうだ。



 休憩を始めてから結構経った。もう十分だろう。


「そろそろ良いかな。よし、後少しだ頑張ろう!」




side ケンセイ・ムラカミ



 やっと出来たまともな休憩時間、俺はパーティメンバーと一緒に休んでいた。



 現実はゲームとは違う。

 当然といえば当然のことだ。ゲームなら全快かどうかはパラメータを見ればいいだろう。だが、この異世界ではそれでは不十分だ。


 長時間の戦闘は、それだけで苦痛になる。

 それを少しでも短くすることはいいことである。おそらくその辺のことを考え、タッチャンはペースを上げているのだろう。

 余力があるならペースを上げることは悪いことではない。


 指揮を執るのは難しい。それに従い、文句を言うのは簡単だ。

 だがそれでも今の俺はタッチャンに文句を言いたい衝動に駆られている。"少しは周りを見てペース配分をしろ"とな。



「そろそろ良いかな。よし、後少しだ頑張ろう!」


 どうやら休憩の時間は終わりのようだ。

 本当はもう少し休みたいが、疲れもほぼ取れたしまあいいだろう。


 残りの敵数はおそらく400ぐらいだろう。このペースでいけば後数回ですむ計算になる。

 しかし、数が少なくなると"ボス以外を釣る"ということが難しくなる。ボスがボス部屋から出てくることは無いはずだが、突然ボスと戦闘になることも考えておいたほうがいいだろう。



 俺の心配はよそに、4回何事もなく取り巻きを削れた。

 コボルトがいくら知能が低いとはいえ、いい加減学習してそうなモノだが……

 残り数十匹程度まで削れたんだから、今は残りをどうやって倒すかを考えよう。予定ではボス部屋に全員で入って叩くだ。


「残敵数も残り少ない。ボス部屋に突撃し、全員で囲んで倒すぞ!!」

「おおー!!」


 どうやらプランどおりボスを叩くようだ。

 ついに最終段階に入ったと、みんなの士気も上がっている。



「準備はいいな。では突撃!!」

「うおぉぉぉぉ!」


 俺達はボス部屋に雪崩れ込んだ。


 残りざっと見て30匹といったところか。

 俺は【ステータス閲覧】でどの固体がボスなのか確認していく。部屋の最も奥に1体だけ表示されない個体がいた。おそらくこの固体がボスだろう。


「ケンセイくん、あの奥にいるの…」

「気付いたか、アンナ。おそらくあれがボスだ」

「でも、だとすると……」

「ああ、少し…いやかなり不味いかもしれん」


 斥候部隊のとき【ステータス閲覧】でボスのレベルと名前は表示できた。それが今できない。これの意味するところは、ボスが強化されているということに他ならない。

 俺とアンナのレベルは57、対してコボルトキングのレベルは38だった。だいたい20レベルあった差が埋まったか、それともパラメータが超強化されているか…どちらにしろボスは俺達よりは格上と考えて対処するべきだ。


「お、なんだ村上、ボスを見つけたのか?」

「ああ、あの奥の奴だ。だが…」

「よっしゃぁ!ボスは俺が引き受けた!!周りは任せる!」

「お、おいっ!」


 静止の言葉をかける間もなかった。

 タッチャンは【限界突破】を使っているのだろう。凄いスピードでボスに肉薄する。

 特攻なんて無用心だが、強敵を抑えてくれるのはありがたい。今のうちに少しでも戦いやすい状況を作ろう。


 俺は、取り巻きの処理を粛々と続けた。



 取り巻きを倒し終わった時、未だにタッチャンはコボルトキングと対峙していた。

 予想以上に苦戦しているようだ。パラメータを底上げした状態でなお競り負けているのだ。それにいつまでも【限界突破】は続かない。効果が切れてしまえば、一方的に追い詰められるだろう。


「タッチャン、下がって回復を!少しの間俺がもたせておく!」


 俺は【挑発】を使い、コボルトキングの注意をこちらに向けさせる。


「なっ!?く、ま、しばらく任せたぞ!!」


 悔しそうな顔をしたが自分の状態が分かったのだろう。すぐに後方に下がり回復薬を飲みだした。


 【挑発】ですぐにタゲが剥がれた(攻撃対象ではなくなった)のは、敵にとって脅威ではなかったつまりダメージを殆ど与えられてなかったに他ならない。さらに苛烈な攻撃を加える必要がある。


 さて、こっちはどうするかね…

ご清覧ありがとうございました。


今前から参考にと薦められていた『盾の勇者の成り上がり』を読んでいます。まだ全部読みきれていませんが、途中まででも自分の表現力の無さをヒシヒシと感じています。あまり、長時間最新話が増えないのはよくないので誤字脱字程度を直す程度にしていますが、いつかこの作品のように感情移入がしやすい作品に仕上げたいものです。

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