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星は雪色に瞬く

不思議なおんなのこ

作者: 妖鈴

 女の子という生き物は不思議だ。

 猫のように気まぐれで、けれども甘えん坊で、時にはまるで犬用に従順で一生懸命についてくる。

 泣き虫かと思いきや、凛とした美しさを持っているし、強かだ。時には勇ましい子だっているし、おとなしく可憐な子もいる。それに日本で言う大和撫子な子だっている。

 ファッションだって色々。少女のように愛らしく可愛らしく、ふわふわのスカートをはいてピンク色でいるかと思いきや、男のようにパンツスタイルでコツコツとハイヒールを履いて颯爽と歩いてみたり、きっちりとスーツを身に纏いタイトなスカートでビシッと仕事をこなす。

 髪型にしろ、ロングだったりショートだったり、ボブだったりはたまたふわふわのカールだったり、男のように短いベリーショートになったり。髪色だって、黒に茶髪、赤毛にブロンド。様々だ。

 男に比べたら、目は大きいしぱっちりだし、それに睫毛が長い。一重の女の子だってそこに美しさを感じる。

 ほっぺは丸くてピンクだったり、赤かったり。化粧ってすごいなとは思う。

 

 本当に本当に女の子って不思議だ。

 今まで色んな女の子と付き合ってきたけれども、みんなみんなやっぱりオレにとっては不思議な生き物に見えた。

 オレに比べたら小さくて、丸くて、柔らかくて、華奢な子を抱きしめているとオレがこの子を守らなきゃと謎の使命感を感じるし、時にはふくよかでぽっちゃりとした子を抱きしめているとなんだか安心するしとっても気持ちがいい。こういう風に言えばなんだか変態臭いかもしれないけれど。

 本当に同じ人間なのかと思う。

 だから、オレは色んな女の子を好きになる。浮気性って言われたらしょうがないかもしれないし、スケコマシなのかもしれないし、それでも女の子という生き物はオレを虜にする。

 でも、付き合っていた女の子はどの女の子大切にした。(つもりでいるけれど、相手からしたらどうかはわからない。)

 しかし、今まで付き合っていた子たちはオレがこんな感じで付き合っているのも承知だし、オレは常に本気の恋をしているつもり。一途ではないけれども、どの子も本気で好きだった。


 そしてかつて、かのマザー・グースはこう言った。

 女の子は砂糖とスパイスとそれと素敵な何かでできているのだと。

 その素敵な何かってなんだろう。その素敵な何かに男は惹かれるのだろうか、よくわからない。


 そんなこんなで、今でもたくさんの女の子と恋をする。もう落ち着いてもいい年だけれども、この性格はもう一生治らないんだろうなって思う。双子の弟は既に可愛い嫁さんもらって子供までいるのに、オレは未だに独身でふらふら色んな女の子のところに遊び回っている。

 昔に比べたらそれは減ったけれども。

 減った理由はこの女の子。親子ほど年の離れた小さくて可愛い女の子がオレを夢中にする。聞こえは悪いが年の差だ。ロリコンと言われたらそれまでだが、オレは彼女が愛おしい。

 親友セーファスとその妻であるおちびちゃん、ルーシュカとの子供リゼル。

 リゼルの両親である二人はもうこの世にはいない。父親であるセーファスは何者かに殺され、犯人はいまだ見つからず。母親であるルーシュカは彼を想い、病気になりそのまま亡くなってしまった。セーファスは一人っ子だったし、親戚も少ない。母親のルーシュカの実家はイギリスから程遠いロシアにある。それに彼女の親戚を思うと、オレはこの子が幸せに暮らせるか不安だったため、血の繋がりは一切ないが親友の子供である彼女を引き取った。後見人として。最初はそりゃ不安だったけれども、今はマイフェアレディ。彼女を素敵なレディにすべく育てているが、やっぱり女の子という生き物は不思議でうまくいかない。

 色んな女の子を見てきたけれども、やっぱりやっぱり女の子は不思議だった。


「ねえ、ヴァレンおじさま」


 可愛い声で彼女がオレを呼ぶ。背の高いオレを一生懸命見上げながら、オレを呼びかける姿が愛おしい。幼く小さい彼女の背に合わせ屈めば、彼女は嬉しそうに笑いその腕をオレの首へと回す。そうしてぎゅっと彼女に抱きしめられる。どちらかといえば抱きつかれた、と言った方が正しいのかもしれない。しかしそうされてしまうとまるで本当の娘のように錯覚する。そして、香水でもなく服から香る洗剤でもない甘い彼女の香りが鼻をくすぐる。女の子ってやっぱりいいにおいだなあと思いながら、抱きしめ返すと。ふふっと笑う彼女の声が聞こえた。


「あのね、おじさま」

「どったの、リゼルちゃん」

「…わたしのこといつも、ちゃん付けしないのに」

「あはは、そうだね。ごめんよ、リゼル」

「もうっ、別にいいもん」


 そう言うと丸い頬を膨らませて、さらに丸くなる頬。そんな様子が可笑しくて吹き出しそうになるけれども、そんなことをしてしまえば彼女の機嫌がさらに損ねてしまう。彼女の柔らかな頬にちゅと口づけをすると彼女は真ん丸で大きい瞳をこれでもかと見開き、ほんのりとピンク色だった頬は真っ赤に染まる。そして困った顔で彼女はオレを見つめる。(彼女的にはきっと睨んだつもりなのだろうけれども)

 こんな彼女が愛おしくて愛おしくて、頬を緩ませ微笑んでいると彼女は仕返しだと言わんばかりに小さな唇をオレの唇に押し当てる。勢い余って若干痛いけれど。


 「…キスは目を閉じて優しくするものだよ、お姫様」

 「うるさい、ヴァレンおじさまがわるい」

 「君が可愛いからだよ」

 「…そうやっていつも子供扱いするんだもん、わたし子供じゃないよ」

 「おじちゃんから見たら、リゼルはまだまだおこちゃまでちゅよー」

 「わたしはちゃんと女の子扱いしてほしいのにー…」


 ああ、子供扱いするとこうやって拗ねてしまう。そこがお子様だって言ってるけれど彼女はまだまだ幼い。子供扱いをするのは当たり前だ。というか、血の繋がりもない彼女を親として育てているのだ。彼女が立派な女性になったら勿論レディ扱いをするつもりでいるが、何も知らない無垢な彼女はこうやってオレを育ての父親としてみてくれない。


 それでもこんな彼女が愛おしい、娘のように妹のように、そして小さな恋人のように。

 ああ、女の子はとっても不思議。とっても魅力的。

 オレが育てるこの女の子はどんな風に育っていくのだろう。どんなレディになるのだろう。


 彼女の父親である親友には悪いが、オレはやはり彼女が実の子のように愛おしいのだ。


 さあ、素敵なレディになっておくれ。かわいいかわいいリゼル。

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