短編:『それでも私は……』
ここで一次創作を書いていくための試作第1号です。
試作のため内容は短いです。
とりあえずこの時期に沿った内容を書いてみました。
まずは一読お願い致します。
それでも私は……
あれは蒸し暑かった三年前の夏。
私はいつも通り、いつもの電車に乗り、いつもの学校に通っていた。
ただその日だけはいつもと違う感覚があった。
「……何だろう」
何かが違うことはわかったけど、それが何なのかが分からない。
着ている服? それはいつも通りの学校の制服。
外の景色? それはいつもと変わらない田畑や住宅街、駅前のショッピングセンター。
今日の天気? それは今朝確認して夏特有の快晴+にわか雨と認識している。
乗車している車両? それはいつもと変わらない七両目の真中。
やっぱりいつもと同じだった。
「考えすぎかな……」
とりわけ電車が混んでいる訳でもなく、普段と変わらない会社に出勤する社会人、私と同じように学校に登校する学生。これもいつも同じ光景だった。
電車に揺られること十分。
下車する駅が窓から見えた。
結局、電車の中では何が違うのかが分からなかった。
とりあえず私は駅を出て自転車を取りに駐輪場へ向かった。
「あれ?」
この時、私の中で違っていたことに関して一つ気付いた。
「そう言えば、あの人今日電車に乗ってなかったな……」
普段乗車する駅は別だけど同じ車両に乗ってくる同じ学校の男子生徒がその日乗車してこなかった。
そして今も普段ならここで出会って挨拶して、他の生徒が居なかったら一緒に登校して……。
「今日は一本遅らせてるのかな?」
私はこんな日もあるだろうと気にせず自転車にまたがり学校へと向かった。
自転車をこぐこと二十分。
朝とは言え炎天下の中を自転車をこぎ続けるのは相当体力を消耗する。
学校の駐輪場に自転車を止め、カバンから水筒を取り出し水分を補給する。
「ふぅ、やっぱり暑い夏にはスポーツ飲料に限るね」
一人でそんなことを呟きながら校舎に向かおうとしたその時だった。
「あれ、先輩?」
部活の後輩のが私の姿を見つけて声を掛けてきた。
「あっ、おはよう」
「お、おはようございます」
何だろう、私を見て表情がいつもと違う。
何か顔についてるのかな?
「ねぇ、何か私おかしい?」
「えっ? いや、おかしくはないですよ。ただ……」
後輩が不思議そうに辺りを見渡しながら私の方に再度視線を向けてきた。
この「ただ……」の続きが無性に気になる。
やっぱり今日は何かがおかしい。
「ただ、何?」
「先輩、昨日何か忘れ物でもしました?」
忘れ物?
特に思い当たるものが無い。
いつも通り、寝る前に明日の準備をして必要なものをカバンに入れた。
「特に忘れ物をした覚えはないけど、何か忘れてた?」
「い、いえ。今日学校に来てるってことは何か忘れたのかなと」
「何で今日学校に来たって部活……あっ」
この一言でようやく自分が肝心なことを忘れていることに気が付いた。
この肝心な事こそが登校中にずっと気になっていたいつもと違う感覚の実態だった。
まず、いつも通り家を出たこと自体が違っていた。
次に電車の中。
これもまた普段なら居るはずの"同級生"が居ない。
最後に学校に到着してから。
後輩から部活以外の目的で学校に来たことを問われる。
「そうだ……、私昨日で部活引退したんだった」
あれから三年。
今は就職をしてあのころとは違った生活を送っている。
出張も増えて朝の時間が変則になり、決まった時間と言うのが無くなった。
それでも私はあの日になると決まってあの頃と同じ様に学校に通って後輩に顔を出すようにしている。
今ではすっかり「永遠に部員」と言う通り名がついていたり。
こんな通り名いりません!!
fin.
如何でしたでしょうか?
一応、今後なろうで書こうと思っている一次創作を連載するための第一歩として書かせて頂きました。
次は、現在他のユーザさんが参加を募られている「二文百物語」に挑戦してみようと思ってます。
ただ、投稿は8/12のため、その前にまた別のものを投稿しようと思ってます。
これにて退散します。
ではでは★