何かの予感
結婚式が終わってからクラウスは仕事に終われる日々だった。
朝ははやく夜は遅く日によっては一日中会えないこともあった。
あの夜からルイスを支えたいとは思うがその時間がない。
忙しくて疲れていてもルイスの寝顔をみると癒される。
そんな毎日が続いた。
ルイスはもちろん寂しいとも思うがそれよりもクラウスが心配だった。
でも、帰ってくるまで待っているとクラウスは怒る。
クラウスはどれだけ忙しくてもルイスの心配ばかりする。
そんなクラウスに私は何をしてあげれるだろうか?
何をすれば迷惑にならないだろうか?
侍女のアイラにきいた話ではクラウスは疲れた時に甘い物を食べるらしい。
だから、ルイスは寝る前にクラウスのためにお菓子をつくり、それに手紙をそえてテーブルの上に置いている。
メモの内容はその時によるが
シンプルに
〜おやすみなさい〜と書くときもあるが最近は1日の出来事をかくようにしている。
アイラと庭でお茶をしたことや図書室で本を読んだこと、その日によって様々だ。
そんな他愛ない事にもクラウスはきちんと返事をくれる。
そして、最後には必ずいっしょにいれなくてすまないってかいてある。
そんな事気にしなくていいのに…。
今日は何をしようと考えているとアイラがやって来る。
「ルイス様。お客様です。」
〜誰かしら?〜
「セリオン様です。
よかったらご一緒に庭でお茶でもいかがかと?
いかがなさいますか?」
うーん。
どうしようかしら…
私とお茶をしてもヒマにならないかしら?
会話はメモだし…
なんて、考えているとセリオンがはいってくる。
「こんにちは。
義姉ちゃん。
よかったらお茶でもって思ったんだけど忙しい?」
断ったら失礼よね。
〜私でよければ喜んで。〜
「うん。
じゃあアイラ。
用意を。」
「かしこまりました。
先に庭へ行ってらして下さい。
用意が整いしだいお持ちします。」
「うん。
いこっか。
ルイス王女。
お手をどうぞ」
さっと出された手に自分の手をかさねる。
幼くみえるセリオンは以外にも大人のようだ。
今日は、春のはじめで天気もよく、あたたかい。
外に出ると太陽がポカポカしている。
庭にある椅子とテーブルにも光があたり輝いてみえる。
椅子に座りセリオンと簡単な話をしているとアイラがティーセットを運んでくる。
紅茶のよき香りがする。
「ごゆっくり」
セリオンはとても優しく身体の事もよく気を使ってくれる。
前にあった気がしたのはやはり気のせいみたいだ。
2人でお茶を飲みながら微笑みあっていると、
「あぶない。」
セリオンがいきなり叫ぶ。
「えっ」
身体がセリオンにつきとばされる。
さっき座っていた所をみると椅子には何本もの弓がささっている。
弓からは魔力が感じられる。
いったい誰が?
「大丈夫ですか?
突き飛ばしてしまってすいません。
急な事だったので…」
〜いえ、大丈夫です。
ありがとうございます。〜
お茶などしている場合じゃない。
大きな音にアイラが驚きながらやって来る。
「どうされましたか〜?
ハウッ。
大丈夫ですかー?
ルイス様もセリオン様も中へおはいり下さい。」
しかし、それに従わずルイスは弓の方へ向かう。
「だめです!
あぶないです。
おやめ下さい。」
アイラとセリオンがルイスをとめようとする。
人に頼ってばかりじゃいられない。
そうっと弓に手を伸ばす。
そこからは、一本一本、一定の魔力が感じられる。
でも、これだけの量を…
そうとうの魔力だわ。
その時、
「あぶない。」
アイラが声をあげる。
ルイスはそれより前に危険を感じ剣を構え、弓をはねかえす。
そこかっ
すばやく弓がとんできた方向に短剣をなげる。
ドスッ
「ぎゃあーーー」
バタッ
そこには、一人の男が倒れている。
ちがう。
最後の一本はこいつだ。
でも、はじめの大量の弓は…
逃げられたか…
「大丈夫ですか?
ルイス様。
もう、中におはいり下さい。」
中にはいるとセリオンはすぐに行ってしまった。
「大丈夫ですか?
ルイス様すぐにお清めになってください。」
アイラの言葉どうり身体を清めて浴室からでると、そこには、クラウスがいた。
「大丈夫か!」
浴室から出てきたルイスを折れそうなくらい強くクラウスが抱き締める。
「無茶をするな!
お前がいなくなったら俺は…」
そうよね
大事にしなきゃこの身体を。
〜仕事はどうしたの?〜
「今日は、元々はやく帰るつもりだった。
明日久しぶりに休みをもらえるから町を案内してやろうと思ってな。
でも無理そうだな。」
〜ううん。私は大丈夫。
連れてって。
今日起こったなら明日は大丈夫よ。〜
「そうか?
だったら案内してやる。
明日は一日中いっしょにいような。」
その夜、2人はベッドの中にいた。
〜ねぇ。
わかった事全てを話して。〜
「でも…」
〜かまわない。
私は大丈夫だから。〜
「そうか。
そうだな。
お前も知る必要があるしな。
お前が捕まえた男と弓はアジファーのものだった。
でも、一人ではなかったはずだ。
何人かがいた。
しかし、警備は万全だったんだ。
どこから、何人はいりこんだかはわからない。」
〜椅子にささった弓は一人の人がうってたの。
それだけはたしか。
だから、強力な魔力の持ち主がいるわ。〜
「どうして、そんな事がわかる?
それに、あの量をひとりでだと?」
〜魔力にも気配があるの。
あの弓はどれも同じ魔力よ。
それに、あの量でもうてる人はいるわ。〜
そう、12龍士の一人であればね。
「そんな事がわかるのか?
なぁルイス。
お前の腕に竜のあざはあるか?」
えっ
〜何を急に?〜
すると、クラウスはルイスの手をとり、するすると袖をまくっていく。
キャッ。
離させようと、腕を降るが抵抗もむなしく二の腕まで捲られる。
「ないか…
一年前、俺がお前と出会った日に俺はお前の腕にある竜のあざをみた。
はじめは見間違えだとおもってた。
でも、見間違えなんかじゃないとおもうんだ。」
〜竜のあざなんてないわ。
おやすみなさい〜
クラウスは気になっていたがもう少し待ってみようと思った。
きっと何かまだ俺が知らない秘密をかかえている。
でも、俺はルイスが自分から話してくれる日が来ると信じている。