命がけの戦い
アジファーはガードが堅く強行突破するしかない。
それに、門衛だけなのでそんなに人数は多くない。
「行くぞ!」
再びオーっと掛け声があがる。
馬で突っ込んだため、門衛は全員倒れている。
このまま行けば問題ないな。
でもアジファーはそんなにあまくはなかった。
「そこまでだ。
ここから先は俺達が通さない。」
急にあらわれた一人の12龍士と沢山の兵達。
チッ
厄介だな…
12龍士以外の全員が剣を抜き魔力をこめる。
辺りで飛び交う金属音。
12龍士は拳に魔力をこめ、道を壊し馬から兵達をおろそうとしている。
このままじゃたどり着けない。
どうすればいいんだ?
ルイス…
兵達と戦っていると誰かと背中がぶつかる。
「クラウス様。
そこの馬に乗ってお進み下さい。」
「何言ってんだシルス!
お前らをおいていける訳ないだろ!」
「私達を信用して下さい。
私達は必ず期待に応えてみせます。」
「シルス…
でも…」
兵達と戦いながらもウジウジしているクラウスにシルスが声をあげる。
「いい加減にして下さい。
ウジウジと
ルイス様を助けたいんだったら進んだらいいじゃないですか!
いつもいつもいざというときに、迷って。
いい加減にして下さい。」
なんだこいつむかつく。
でもありがとな。
お前も俺の背中をおしてくれて。
俺は沢山の人に支えられてるんだな。
「シルス!
後で覚えとけよ。」
急いで馬に乗り、綱をいきよいよく引っ張る。
馬が声をあげ、急に走り出す。
馬に乗りながらも一人、二人と斬りつけていく。
あっという間にかえり血を浴びた姿で城につく。
兵はでまわっているのか、ほとんど見当たらない。
そして、自ずと扉がひらく。
「よくぞ、いらっしゃいました。
メルシス様がお待ちです。
どうぞ中へ」
12龍士の男がクラウスを案内する。外の雰囲気とはちがい城の中はひどく落ち着いている。
なんで俺は歓迎されてるんだ?
さっきまで殺されかけたのに。
やがて1つの部屋にたどり着く。
「どうぞ中へ、メルシス様がお待ちです。」
まるでロボットのように動く12龍士の男。
彼には人としての生気がただよっていない。
何もかも言うとうりに従うロボットみたいだ。
中に入るとそこにはメルシスがのんきにお茶を飲んでいる。
相変わらず美しい容姿だ。
ストロベリー色の髪に空色の瞳。
肌は透き通るように白く、白いドレスがよくはえる。
「久しぶりね、クラウス。
会いたかったわ。
よかったらお茶でもどう?」
「ルイスはどこだ?」
メルシスはクラウスの問いを無視し相変わらずどうでもいい内容を告げ続ける。
「さっきお菓子を焼いたの。
ちょっと失敗しちゃってかたずけるの手伝ってくれない?
一人で食べるには多いわ。」
メルシスの態度にクラウスはイライラする。
「ルイスはどこだ?」
メルシスがクスクス笑う。
「イライラにはカルシウムよ。
ミルクでも飲む?」
「いい加減にしろ。
ルイスはどこだ!」
メルシスは面白くなさそうにため息をする。
「相変わらずからかいがいがないわ。
ねぇ、連れてきて。」
メルシスは近くの側近に声をかける。
側近は別室にいきすぐに戻ってくる。
側近が握っている縄はルイスの手に繋がっている。
そのためルイスは手を動かせないみたいだ。
「ルイス!」
心配そうなクラウスの横でメルシスは笑っている。
「ルイスさんは声がでないでしょ。
だから、楽だったわ。」
メルシスの態度にクラウスは怒りをおぼえる。
「いい加減にしろ!
縄をほどけ!」
「別にいいわよ。
でもそれには条件がある。
簡単な事よ。
このまま帰って。」
「なっ!
そんな事できる訳ないだろ」
そんな2人の会話をルイスは悩みながらきいていた。
ずっと気にしていた、さっきメルシスからきいた話を…
ルイスは誘拐されてすぐにメルシスの元へつれてこられた。
そして、知った2人の関係。
そして、まだ知らぬ12龍士の力の事。
そして、ルイスもメルシスから取引を申しこまれていた。
素直に従わなければクラウスを殺すと言われた。
「クラウス、あなたがルイスをおいていけば他の仲間は助かるのよ?」
「あいつらは力で勝つ」
「無理よ。
今また応援をいかしたわ。
だから貴方達が助かるにはこの女をおいていくしかないのよ。」
クラウスは落ち着きながら言葉をかえす。
「俺らはルイスを連れて帰る事を誓ったんだ。
この命にかえても…」
メルシスが怒りをあらわにする。
「何よ!
あんな女なんて、どうでもいいじゃない。
もっと綺麗な女なんて山ほどいるし。
まして、不幸の象徴よ。」
「んなの、どうでもいいんだよ。
ルイスがルイスであれば。」
クラウスの一生懸命な態度がさらにメルシスの怒りを煽る。
「クラウスを処分しなさい!」
「俺が死ねばルイスは助かるのか?」
手をだそうとした兵達を無視してメルシスにクラウスは告げる。
「なんでこんな女にそこまでできるの?」
悲しそうに言うメルシスにクラウスはきっぱりと言い切る。
「俺が愛したたった一人の女だからだよ。」
「ノロケないでよ。
やっちゃいなさい!」
兵達は一斉にクラウスに飛びかかる。
クラウスも剣を取り出す。
けど、一人で敵う訳もなくクラウスはみるみる傷が増えていく。
「とどめだー」
一人の兵が斬りかかろうとした時
「やめて!」
凛とした声が響く。
その瞬間一筋の光がさす。
ルイスの頭の中に過去の出来事が鮮明によみがえる。そしてあっという間に兵が全滅している。
でも兵達には傷1つなく、ただ気絶しているだけだ。
クラウスもメルシスもルイスをみつめている。
そう、ルイスの腕に刻まれし竜のあざと新たに出来た十字架のあざを。