この身がどうなろうとも
どれだけ悩んでもいい方法が思いつかない。
窓から飛び降りようと思ったけどここは三階で少し無理がある。
食事を持ってきた兵を気絶させてやろうかとも思った。
でも、兵は3人でやってくるため無理だった。
なんて、考えていると鍵があく、音がする。
まだ食事にははやいけど?
何かしら?
「ルイス様。
今の内にミリアへお行き下さい。」
やって来たのはミリアへ行ったときの従者アクアだった。
〜えっいいの?〜
「ほんとは嫌です。
わざわざ危険な所へ行かすなんて。
でもクラウス王子とご一緒の時のルイス様は今までで一番幸せそうでした。
だから…」
ルイスはアクアの手をそっと握りしめる
ありがとう、そんな気持ちを込めて
「さぁルイス様、急いで下さい。
玄関にアンリをつけてあります。
それにお乗り下さい。」
その言葉に頷きルイスは急いで玄関まで走り出す。
見つかりませんように
ただそれを願い、走る。
玄関の愛馬アンリにまたがり、出発しようとしたその時、
「ルイス、何してるの!
戻りなさい。」
一瞬決意が緩む。でも行かなきゃ。サフランお姉様、ありがとう。
それなのに、ごめんなさい。
サフランの言葉を無視して、ルイスは走り出す。
今はただクラウスの事だけを考えなければ…
兵に見つからないように裏道を走る。
森がしげり、ほそい道。
その道を走っていると、頭に何かがフラッシュバックする。
馬をとめ、その場にとどまる。
何これ?
私が誰かと話している。
誰?
顔がみえない…
それと、同時に頭痛がルイスを襲う。
ズキズキ
うーん、進まなきゃ。
ルイスは頭痛にたえながら再び走り出す。
にしても、彼は誰なんだろう…
しばらく馬を走らせるとミリアにたどり着く。
国境での検査もなく、走り続ける。
ここから、お城までは少し距離がある。
不思議だ、町の中心にいるのに、前みたいな明るさはなくしーんとしている。
村人一人さえ、外に出ていない。
まぁその分馬は走りやすいけど…
辺りをみると、所々物が崩れている。
いったい何があったの?
まさか…
クラウス!
懸命に馬を動かす、お城が近づくに兵が目立つ。
でも、前にみた兵とは鎧がちがう。
兵がいるにも、かかわらずルイスは馬を走り続ける。
時々馬に当たった兵が悲鳴をあげている。
兵に囲まれるようにして、真ん中にいるのは、クラウスと見知らぬ男だった。
二人は魔力を剣にこめ、懸命に戦っている。
強さは五分五分だろう。
知らぬ鎧をつけているのは、その男の兵みたいだ。
兵同士も取り囲むように戦っている。
その時、一人の兵が手を伸ばしクラウスに後ろから斬りつけようとしている。
あぶないっ!
とっさに手を伸ばし力をこめて、目をつむる。
その時、爆発音がして目をあけると、クラウスの敵は壁に叩きつけられて血を流し、まわりはこちらに恐れの視線を向けている。
そして、すぐさま逃げ出す。
あ、まただ。
みんな私をみると、怖がる。
化物あつかいする。
ただ、一人呆然としているクラウス。
大丈夫かな?
と思い一歩すすんだ時、クラウスはさりげに後ずさる。
やっぱり全てを受け止めてくれる人などいないのだそう思った時後ろから声がする。
「お迎えにあがりました。
ルイス様、これでわかったでしょう?
みな私達を普通の人のようには見てくれないのです。」
この声はエリザベスお姉さまに乗り移っていた声だ。
なんて、考えているといきなり身体を殴られ気絶する。
ルイスは男に担がれる。
気絶している中でこんな事がきこえた気がする。
「クラウス王子、不幸を呼ぶと言われる12龍士ルイスをアジファーが回収致します。
これでミリアはきっと幸せになれます。
それでは。」
こう言って男はルイスを連れていった。
クラウスはこの時全く動く事が出来なかった。
ルイスの信じられない魔力に対する恐怖と目の前の男の気迫に圧倒されてしまって…
一気にたくさんの事がおき頭がこんがらがり、クラウスも疲労からその場に倒れていた。
クラウスが目覚めたのはルイスがさらわれてから一週間がたってからだった。
もちろん、目覚めた時すぐにまわりにルイスがいないかを確認した。
けれど、どこを探してもいない。
ミリアにも、ステーシャにも。
その出来事がクラウスを現実の世界に引きずりもどした。
でも今更遅い。
ルイスはいないのだから…