寂しい時に降りかかる争いの予感
ステーシャでの生活は平和だった。
でも、平和すぎて、刺激がなかった。
どこにいても、クラウスはいない。
そう考えるだけで胸が苦しくなる。
でも悲しい顔はしてられない。
サフラン姉様やマルク様にご迷惑をかけてしまうから…
なんて、憂鬱になりながらルイスは一人で庭を散歩していた。
今日は幸いにも、天気がいいから気分を少しでもあげるために…
歩いていると、壁に弓がささっている。
誰か弓の練習でも、してたのかしら?
よく見ると、弓には紙がくくりつけてある。
警戒しながらルイスは紙を手にする。
そこにかかれていたのは衝撃の内容だった。
〜竜の持ち主ルイス
クラウス王子はあなたの竜の秘密をしっているの?
その内容を知ればきっと、クラウス王子はあなたを手放す。
せいぜいそれまで幸せをあじわうがいい〜
誰がこんな事を…
この弓はミリアでみた時と同じアジファーのものだった。
ルイスは力任せに弓を壁から引っ張り弓を片手に走り出す。
ルイスが向かった先は国王の元ではなく、マルクの所だ。
マルクはサフランと庭でお茶をしていた。
「あら、ルイス。
貴方もどう?」
そんな軽いサフランと違いマルクはルイスの手の内に視線を向けて難しそうな顔をしている。
「ルイスちゃん。
それどうしたの?」
マルクとサフランに庭での出来事を話す。
しかし、紙の事は話さなかった。
あれは、2人には関係ないもの…
この件についてはマルクに任せルイスとサフランは城にはいった。
弓はそれ以来見つかることはなかった。
でも、ルイスが行く場所全てに紙が落ちていた。
拾いたくはない。
でも、ルイスが拾わなければ見つかってしまう。
だから、いつもこっそりと回収する。
また、今日も紙が落ちている。
でも、今までの中でも一番衝撃の内容だった。
〜竜の持ち主ルイス
あなたの大事なクラウス王子の国ミリアが滅ぶまで後少し。
ミリアの次はステーシャだ〜
王女が言うことばではないがルイスはステーシャの心配ではなくミリアのいや、クラウスの事しか考えていていなかった。
私がクラウス王子を救わなければ…
でも今の私には何もできない。
自分の無力さに腹が立つ。
ルイスは唇を噛み締めながら国王の元へ向かった。
でも、国王はあまり気にしていないようだった。
「このようになるとはわからない。
お前が今騒ぐことではない」
なんて、軽く追い払われた。
でも、国王もルイスにはあぁいった物のほんとは気にしていた。
ステーシャにも、アジファーと繋がりのある者がいるのか?
だったらまたルイスが危険な目にあう。
それだけはさけてやりたいものだな。
そして次の日もルイスの前に紙が落ちていた。
いつもどうり誰もいない事を確認しようとした時、少し向こうに角をまがるスカートが見える。
まさか、犯人!
ルイスは両手でスカートをつまみ上げ走り出す。
角をまがるとそこに、一人の女性がいた。
うそっ
…エリザベスお姉さま
「やっぱり、きいていたとうりだな」
エリザベスの身体からきこえてくる声は彼女に合わぬ野太い声だった。
誰?
不思議な顔をしているルイスに気づいたエリザベスは話出す。
「俺は、メルシス様の部下だ。
まぁこの身体はエリザベスの物だけどな。
何が何かわからないって顔をしているな。
俺が教えてやるよ。
何もかも」
どういう事よ!
乗っ取られてる?
だったと、してもどうやって…
「ハァ―。
しゃべってくれないって不便だな…
メモにでもかけよ!」
〜なんでアジファーは私を狙うの?〜
するとエリザベスは急に笑い出す。
「なんでかって?
そんなのお前の竜の力がほしいからだよ。
竜の力は魔力が多いだけじゃないんだぜ?
まぁいいか。
メルシス様はこの世界を征服したいとおっしゃっている。
だから、我々12龍士は力を貸して差し上げるのだ。
光栄だと思え!」
征服?
私の知らない力?
彼も12龍士?
12龍士だからエリザベスお姉さまに乗っ取れた…
〜だったとしても、あなたは何の為に征服を手伝うの?〜
「お前もわかるだろ。
我々12龍士はどこに行っても差別を受ける。
でもメルシス様は我々を必要としてくださった。
だから、お仕えするのだ。」
〜そんなの力だけでしょ!〜
その一言が地雷だったのか彼は急に怒りだし魔力が高まっていく。
キャッ
あまりの魔力に圧倒されルイスはその場に転ぶ。
「フン。
まぁいい。
今回はこのぐらいにしといてやる。
今度はアジファーで会いましょう。」
彼は風のように消え、エリザベスの身体が倒れる。
揺すってみても、反応がない。
ルイスは近くの兵に声をかけて、エリザベスを運んでもらう。
エリザベスは息をしているがずっと目が覚めずに眠りつづけている。
全てを国王やサフラン、マルクに話すとルイスはいきなり部屋に閉じ込められた。
どこにも、いかないようにと。
みんなが大切に思ってくれているのはわかる。
でも、私はじっとなんて、していられない。
なんとしてでも、逃げ出す手を考えなければ…