終わりははじまり
セリオンは取り調べの結果幽閉ということになった。
普通なら他国の姫を捕まえたなど、こんな程度で許される事ではない。
では、なぜこんな事になったのか?
それには1つの訳がある。
「なぁルイス。
セリオンを取り調べたのは、いいが何も話さないんだ。
というより、人格ががらっと前に戻ったみたいな感じなんだ。
まるで、本当に何も知らないみたいに…」
それは…
まさか…
〜洗脳されてたとか?〜
「洗脳?
もしそうだとしても、いつから、誰が?」
〜メルシスっていう人じゃないの?〜
「メルシスかぁ…」
クラウスがただつぶやいただけなのに何かモヤモヤする。
知り合いなのかしら?
〜あの、メルシスって誰?〜
真剣な眼差しをクラウスに向けるルイスをみて、クラウスは笑いだす。
「なんだ?
嫉妬かあ?
メルシスは、アジファーの第1王女だ。
ようするにアジファーの王だ。」
〜女の子でしょ?〜
「あぁ。
お前の2こ上ぐらいだ。
でも、前国王は死に今は彼女が王だ。
アジファーは、女の子でも王権をつげる。
そのため、争いをさけるため、一人っ子が多いんだ。
だから普通なら両親の愛を多く受けて育つはずだ。
でも、彼女は両親を幼い頃に亡くし愛する事を知らずに育った。
そのため、国民にも冷たく、まわりに男をいっぱいおくくせに誰ひとり愛さない。
彼女が王になってからアジファーは変わったんだ。
ただ強さだけを求める国になった。」
そんな可哀想な人なんだ。
自分の命を失ってでも守りたい存在。
愛しい存在。
そんな人が彼女には一人もいないのね。
愛しい存在を思い浮かべクラウスを見上げる。
するとクラウスも見つめていたのか、目が合う。
その目はどこか悲しそうにみえる。
「なぁルイス。
しばらくステーシャに帰ってくれないか?」
えっ
いきなり何?
〜どうして?
確かに、私が悪かったわ。
セリオン王子についていってしまったし。
でも、だからってそんなに嫌わなくてもいいでしょ?〜
クラウスはずっとルイスを見つめている。
「嫌う?
何言ってるんだ?
俺がお前を嫌うわけないだろ。
第2王女がいるのに無理をしてまでつれて帰ってきた大事な姫だ。
嫌うわけないだろ。
もちろんずっといっしょにいたいさ。」
クラウスはルイスの手をひき、いきなり抱き締める。
愛しい。
そう思って抱き締めてくれている事はよくわかる。
でも、だったらなぜそんな顔をするの?
そんな悲しい顔。
〜じゃあどうして?
どうしてここにいたらダメなの?〜
「今のミリアは危険だ。
これからますます争いがおこる。
そんな場所にルイス、君をおいておけない。
だから、一度戻ってくれ。」
クラウス王子…
私の事を思って言ってくれてるのよね。
だったら私には頷く事しかできない。
「ごめんな。
ルイス。」
〜いいえ、私の事を心配してくれてありがとう〜
そのメモをみて、やっとクラウスは笑顔になる。
「なぁルイス。
コンタクトはずしてもいい?」
コクッとルイスが頷くとクラウスはルイスの目に手をのばし丁寧にとっていく。
でも、ルイスは頷いたものの意味があまりわからなかった。
コンタクトをとったルイスの瞳をずっとみつめるクラウス。
「俺はルイスのアメジストの瞳が好きだ。
だから、はずしたんだ。
しばらく、みれないからさ…」
どうしてそんな事を言うの?
〜大丈夫よ。
きっとすぐに戻れるわ。〜
ルイスの一言にクラウスは悲しそうに笑った。そして、目を近づけお互いの睫毛をくっつけまばたきする。よくわからない顔をするルイスにクラウスは自分の唇に指をあてながら告げる。
「今のはバタフライキスっていうんだ。ほんとのキスは戻ってきてからな」
なんて、ふざけていた。そう、事の重大さをルイスはわかっていなかっただ。
まだ、何も終わっていないこと。
セリオンの反乱ははじまりだったこと。
これからおこるさらなる戦いの…
それをわかりルイスを手放したクラウス。
そう、それで助かればいいが…
アジファーの王はそんな簡単な者ではなかった。
それを、後になって嫌というほで知らされるクラウスとルイスであった。