真実と壊れた青年
浴室から出てきたルイスは変だ。
無意味にそこらへんをうろうろする。
「ルイス。
ちょっとこっちにこい。」
反抗するかと思っていたが、ルイスはまっすぐにクラウスの横に座る。
クラウスは無言のままルイスの袖をまくる。
しかし、そこに、あざはない。
えっ
なんで?
しばらくよく見つめると微妙にあざがみえる所がある。
その部分を擦るとみるみる内に竜のあざがあらわになる。
これは、ファンデーションか?
毎日、塗っていたのか…
ルイスはばれないと思っていたらしく、珍しく慌てている。
「なぁ。
ルイス
嫌ならかまわない。
話してくれないか?
この…あざについて」
知らないの?
伝説を
だったら誤魔化せるかもしれない。
あざの全てを知ればクラウスは私をきっとてばなすわ。
だって不幸を呼ぶって言われてるんだもの…
〜別に。
どうって訳じゃないの。
ただ、気持ち悪がられるから隠していただけ〜
「そうか…
気づいてやれなくてすまなかったな。
俺は気にしないから。
今日はもう休め」
今日きっと2人の距離は縮まったはずだ。
でも、どこかはいれない心の闇を抱えている。
どうすればいいのだろうか?
ベッドの真ん中に広く隙間があるまま2人は眠りについた。
翌日、クラウスはルイスが寝ている間に仕事に向かった。
でも、どこか集中できない。
ボーッとしているとシルスがやって来る。
「クラウス様。
ご報告します。
アジファー国の奴等のルートがわかりました。」
シルスは1つのファイルをクラウスに渡す。
「おう。
ご苦労。」
クラウスは渡されたファイルをペラペラめくっていく。
そこに、かかれた一人の名前。
「おい!
これはたしかか?」
「はい。
その方のおかげでアジファーはミリアにはいれたのかと。」
「そうか。
奴が。
これは、ややこしくなりそうだな。」
「はい。
ルイス様も危険かと。」
「そうだな。
一度ルイスにはステーシャに戻ってもらうか。
巻き込む訳にはいけないからな。」
でも、そんなにうまくいくだろうか?
この日をきっかけにクラウスは前みたいに仕事の毎日を繰り返した。
ここまでは計画どうりだった。
さりげにケンカをしてステーシャにルイスをかえらす。
でも、そんな簡単にすむ相手じゃなかった。
バンッ
いきなりドアがあく。
「シルス。
もう少し静かにできないのか?」
「たいへんです。
アイラが…」
「アイラー?」
「アイラが出かけてる間にルイス様がいなくなったそうです。」
おっ。
もしかして。
「ステーシャに帰ったか?」
「ちがいます。
荷物も全部あるんです。」
「何?
それを先に言え!」
クラウスはすばやく立ち上がりドアに向かって走り出す。
そして、シルスの様に勢いよくドアをあけて、出ていく。
ルイス!
どこにいるんだ?
くそっ
城の中を全て、見終わりシルスと合流する。
「見つかったか?」
「いえ、どこにも。」
ルイス!
ルイス!
「まだみてない所はどこだ?
普段、人出がないところだ。」
「だったら…
倉庫とかですかね?
昔の武器とかをおいてて危険ですが…」
「それだ。
行くぞ。」
無事でいてくれ。
倉庫につき、中に入ろうとする。
ツッ
「くそ!
結界か…」
「失礼。」
クラウスの横からシルスが前にでる。
「とけるのか?」
「そんなに難しいものじゃないです。
この結界は。
ただ魔力がたくさんいるだけです。」
シルスは人差し指と中指に魔力をこめる。
それを、己の剣にこめる。
そして、一気にふりおろす。
ギィー
入り口が開くにぶい音がする。
「行くぞ!」
シルスは限界そうなので他の兵をつれて、中へはいる。
「こんにちは。
お兄様。
どうかしましたか?
仕事中では?」
ふざけたようか言い方にクラウスは怒りをあらわにする。
「いいかげんにしろ!
セリオン!」
「もうばれちゃってるんだ。
案外はやかったね。」
いつから、こうなってしまったんだ?
クラウスは剣に魔力をこめる。
「剣をしまってくれるかな?」
セリオンがルイスに剣を向ける。
「おい。
お前らはルイスを救助にむかえ。
俺は弟の後始末をしなければ…
行くぞ!」
兵達が一斉に走り出す。
セリオンは急いでルイスに剣をふりおろそうとする。
クラウスはわかっていた様にセリオンにむかって短剣を投げつける。
セリオンは短剣に剣をむける。
その、わずかな時間で充分だ。
一気に兵達はルイスを取り囲む。
ルイスの安全を確認しクラウスはセリオンに剣をむけて走り出す。
セリオンの剣をよけて、自分の剣の持ち手を思いっきり腹にいれる。
「うっ…」
セリオンが倒れた所を一斉に取り囲み捕まえる。
後ろ手にしばり、剣を離させる。
「大丈夫か?
ルイス。
怪我はないか?」
コクッとルイスがうなずくのを確認し勢いよく抱き締める。
ルイスの頬には1つの切り傷がある。
そこからは一筋の血が流れている。
「俺がもっとはやく、見つけていたら。」
〜ちがうわ。
私がセリオン王子について行ったのがいけなかったの。〜
「城に戻って手当てをしよう。
さぁ。」
進もうとすると、前から声がする。
「フフッ
ハハハ
ルイス王女はどっちにしろ、この先平和になんて過ごせないさ。
俺を捕まえても無駄だ。
あのメルシス様がみつけたんだからな。
その、腕にある力を。」
セリオンがつれていかれる前に叫んだ。
「フン。
セリオンの奴何言ってるんだ?
大丈夫だぞ
ルイス、お前は俺が守る。」
彼、やっぱり過去にあってる、いつだろう?
1年前?
何?
私にない記憶。
それには、何かが隠されている。
そう、私が知らない何かが…