ありのままの彼女
むかーしむかし、この世界にそれはそれは巨大な竜があらわれ人々を襲っていった。
そんな竜に一人で立ち向かった青年がいた。
その青年は竜をたおせなかった。
しかし竜の力を12人の体に封印した。
そのため、この世界には常に竜の力をもつ12龍士がいる。
そしてその中でも一番力を持つものを人々は神龍と呼んだ。
彼らの腕には龍のあざがある。
神龍の腕には龍のあざと十字架がほられているといわれる。
あくまで伝説であるため12龍士をみたものはいない。
なぜなら彼らはひたすら12龍士であることを隠すからである。
人々からの冷たい視線から逃れるために。
「なんとしてでも捕まえろ。お嬢様〜。どこにおられるのですか?」
私ルイスはこの世界で二番目に大きい国ステーシャの第三王女だ。
今お父様から結婚の話をされて逃亡中だ。
「絶対つかまってたまるもんですか!いくわよ。アンリ!」
アンリは私が一番可愛がっている馬だ。
乗り心地も優しさも完璧だ。
パカッパカッヒヒーン
「何してるの?道のど真ん中にいられたら邪魔なんだけど!」
城から少し進んだ森は道幅がせまい。
「すいません。進めなくて。」
「だから俺がやると言ってるだろ。」
「だめです。クラウス様。」
言い方から主従関係みたいだ。
「何があったの?」
家来っぽい人が話す。
「それが昨夜の雨で上の崖がくずれ岩が道をふさいでしまってるんです」
「だから俺が直すと言ってるだろ!」
「だめです。これから戦いに行くんですから。力を使っては。こんなにたくさんの岩をどけようとしたらそうとうの魔力が必要です。」
これはながそうだ。
こんな茶番につきあっていたらすぐに追い付かれてしまう。
「どいて!」
髪にさしてあるバラをひきぬき魔力をこめる。
この世界で魔法を使うときはこうやって物に魔力をこめるのが基本だ。
するとバラから茎がのびる。
それを勢いよく岩にぶつける。
スパーンスパーン
バラのトゲが岩を粉々にする。
「ふぅー。
これでとおれるでしょ。
じゃあ私は行くから。」
すると偉そうな男がひきとめる。
「まて。
お前すごい魔力だな。
名を何と言う?」
「名乗るほどじゃないわ。」
「まぁいい。
とりあえず礼を言う。
これをとっておけ。」
その行動に家来は驚いている。
「それはっ…だめです。クラウス様っ」
「うるさい。受け取ってずっとつけていろ。」
クラウスの手からネックレスを受け取ったルイスは不思議そうにながめる。
「何でつけなきゃいけないの?」
「俺の物だと言う印だ。お前が何者でも必ず探しだす。」
ルイスはフッと微笑む。
そして、ネックレスを首にかける。
「面白いじゃない。まってるわ。行くわよ。アンリ!」
そう言ってルイスはその場をさっていった。
「あれは母上様の遺品では?」
「かまわない。あれは世界にひとつしかない。あれを持っていればすぐにあの時の女とわかるだろう。」
にしてもあの女。
並大抵の魔力じゃないな。
その時、
ヒヒーンッ
誰かがやってくる。
「こちらにこれくらいで金髪の姫がとうりませんでしたか?」
金髪?
もしかしてあの女の事か?
まぁどちらでもいいが。
「知らねぇけど…」
「そうですか。失礼いたしました。」
にしても姫だと。
確かに美しいが民族衣装をきている奴が?
「やっぱり。お姫様だったんですか?」家来のシルスがつぶやく。
「どういう意味だ?」
「おやクラウス様は見てらっしゃらなかったんですか?
あの首にかかった王族の印のネックレスを」
「たしかに俺があげた指輪のネックレス以外にも首につけていたが…あれがか?」
「はい。そうでございます。我が国ミリアとはちがいますから。」
「そうか…でもだったら探しやすいだろ。」
「えぇ。おそらく。」
クラウスはこの世界で一番大きい国ミリアの第一王子だ。
この日クラウスは必ずみつけだすと心にきめた。
それから一年の月日がすぎた。
「おい。まだみつからないのか。」
クラウスがシルスに問う。
「申し訳ございません。
ステーシャはあまり外に情報をもらさない国ですから。」
「ハァ−。
まぁいい。
今度父上のつかいでステーシャに手紙を持って行く。
その時に直接見に行く。」
「そうですか。
かしこまりました。」
そりゃそうだ。
あんな女他にはいない。
何がなんでも探し出してやる。
そしてクラウスはステーシャに旅立った。