開戦
天使———遥か昔神と言われる存在達がいた、神は祝福と禍をもたらし、対立の末、滅びたとされている。天使とはその時の祝福の一つである。
「ふ〜ん、ふ〜ん、まだかなぁ〜」
少女がいた。絶妙な高さの岩に乗り、足をぷらつかせて鼻歌混じりに何かを待っている少女が、
「おッきたぁ!!」
少女は急に嬉しそうな顔になり、何かを探すように辺りをキョロキョロと見渡している、だがいくら探せど探している者は見つからず
「あれ?何処だろ?確かに僕の結界を突破してきたはずなんだけどな」
ふと・・少女が空を凝視すると空を飛んでいる人間がいた。その人間の周りは
何故か歪んでおり・・その異質な雰囲気の人間に少女はニッコリと笑うのだった。
◆
「ちっなんでわかんだよ、こっちは必死に隠れてたってのに」
ロイドは結界の中に入った瞬間に、念の為にと身を隠すための技を発動していたのだが、数秒で見破られ身を隠すのは意味があまりない行為だとわからされた。
「ロイドさん大丈夫ですか、レベル10って・・・」
「大丈夫じゃねぇが大丈夫だ、とりあえず俺が報告するからそれまでここに誰も近寄らせるなよ」
「わかりました。ご武運を」
「祈るな、必ず帰ってくる」
「・・・はい!!」
ロイドはとりあえず相手との対話のために高度を下げ、少女から6m程離れた地面に降りた、真正面から少女を見たが天使と言われ手も納得するほどの美貌を持っており、金色の髪に肩にいくかいかないか程度の髪の長さ、眼は白銀、身長は145cm程度だろうか、左薬指には指輪を嵌めており、頭にはよく分からない装飾をつけていた、だが、一番目を疑ったのは頭の装飾でもその美貌でもなく・・・頭の10cm程上に浮いている光輪だった。
色々聞きたいことがあるが、全てを引っ込めて質問をしようとしたのも束の間
・・少女の方が先に口を開け喋り始めた。
「来るのが遅いよ、僕ずっと待ってたんだからね」
来るのが遅い?まるでロイドが来るのかがわかっている様なその喋り方に、疑問を覚えたロイドは聞き返す
「来るのが遅い?まるで俺が来るのがわかってたみたいな言い方だな」
「うん!!知ってたよ、君が来るのは僕がお願いしたからね、」
にこやかな笑顔で意味の分からないことを返答する天使
「どう言うことだ」
「僕がね・・そろそろ契約したいんだ、だから最強って言われてる君が契約者になって欲しくて。君知ってる?契約した天使は契約者と運命共同体って」
「いや、知らなかったが、何が言いたい?」
「つまり僕は・・そろそろ生きるのを終わらせようかなって」
ロイドは眉間に皺を寄せ、分からないと言う風に疑問を吐く。
「?ますます分からん、死にたいなら自殺でも何でもすればいいだろ」
「そうなんだけど・・・僕はこれでも寂しがり屋でね、独りぼっちで死ぬのは怖いから嫌なんだ、だから契約者と一緒に終わりたいんだ」
1人で死ぬのは嫌と言うことの少しの共感
そしてまた溢れ出る少しの疑問
「何で俺なんだ、契約者だけならその辺の人間でもいいだろ」
「それは僕もそう思うんだけどさ、昔の同期が契約者は強い奴を選べって僕に言ってきてね・・だから本部に一番強いやつを呼べって言ったんだ、そしたら君がきたってこと・・・けど君が僕の全てを捧げるに値する人間かわこれから見定めさせてもらうよ」
ロイドは概ね理解した。つまりこの天使は自分が全てを捧げるだけの強さを持った人を探しているってことだ、
「つまり、俺は戦うって選択肢しか残ってないってことね、もし俺が思ったより弱くて、捧げるに値しない奴だったらどうする?」
そう言うと少女は少し悲しそうな顔をしながら——
「その時は・・仕方ないから値する人間が出るまで頑張るよ」
悲しそうに抽象的なことを言う少女に・・・
ロイドもまた抽象的な言葉を吐くのだった
「そうか・・・まあ、お前のお眼鏡に合うように頑張るよ、俺も」
そのロイドの言葉に天使は今までで一番綺麗な笑顔を見せ笑うのだった。
「そんじゃ・・始めるか」
「そうだね」
そういうと2人は真剣な顔つきになり・・同時に空中を浮き
天使の光輪は一際輝き、ロイドの周りには謎の歪みが発生し景色が歪む。
2人とも本気とばかりに、能力を発動する。
ロイドはまず、挨拶がわりにと光を集めたビームの様な物を発射し、天使の方もまた光輝く光線の様なものを発射し、ぶつけ合う。それは数えるのも億劫になるほどの、圧倒的質量だった。
その光線同士の押し合いを15秒程繰り返すが時間が進むにつれ、明らかに天使の光線の方がロイドのビームよりも威力が高く・・・圧倒していく。
「夜だからな・・星の光からしか集められないから威力があんまないな」
ロイドのビーム、ロイドは自然光と言うその技は、
自然の光を屈折させ収束し放出する技・・・
つまり太陽という光の恩恵のない夜の時間では、自然光の威力・光の収集速度が著しく低下する。
幸運なのは天使が張ってくれた結界のおかげで、吹雪が光の屈折を邪魔しないため、技の放つスピードまではそこまで低下していないところだろうか。
ロイドの放った自然光を少し凌駕し、天使の光線がロイドの方向へと向かう。だがその光線がロイドに到達することはなく、その周りの歪みに光がそらされた。
「防御系の技?防いだっていうより、歪めたり逸らしたりって感じかな・・
ロイドの能力を解析し対抗策を考える。
「じゃあこれかな」
ロイドの能力の対抗策を考えついた素振りを見せたが、変化はなく同じように、光線の撃ち合いが続いた・・・だが5秒後その均衡もすぐに崩れた。
天使の光線が自然光を上回り、またロイドの正面方向へと向かう。
ロイドは先ほどと同じように防御の技で乗り切ろうとした瞬間・・・
ロイドの背後からなぜか天使の光線が出現しロイドは防御を前方にだけ発動、
背後の光線を咄嗟に避けようとしたが光線はロイドの頬を掠めた。
ロイドは冷や汗をかきながら、まだ血の滲まない頬をチラ見し、苦笑いで質問する・・
「もしかして・・・俺の弱点に気づいた?」
「3つの技、同時に発動はできないんでしょ」
頬から血が滲み出し、それを指で拭き取りながら
「ピーンポーン」
さっき避けれなかったのはそれに加えて防御が一面展開だからだな
今ロイドが発動している技は
・自然光
・空中浮遊
そして攻撃を受けそうな時に発動する防御技
歪域わいき
ロイドは一度に2つの技までしか発動することがでない。
自然光は撃ち合いで常時発動、
空中浮遊も月光の光をできるだけ近くから屈折し
自然光の威力・発動スピード上昇のため常時発動・・
そのため歪域わいきを発動する瞬間ロイドは一瞬だけ空中浮遊を解く、多分その時の一瞬の下降で見破られたんだろう。
自然光の威力的に、撃ち合いじゃロイドの分が悪い、
歪域わいきが一面展開式(正確には違うが)だと気づかれたから今まで通りの撃ち合いは敵わない、ジリジリと詰め寄る敗北___
ロイドが先ほど親指で拭った血を見ると、血が指紋にそって滲む。
まるで紋様の様に。
最強となり、初めての鉄分を失う感覚
「ちょっとテンション上がってきた」




