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天使との出会い

中央大陸 『レグニアス』——

その中央東部に位置する国、『ステラ』

別名——『科学と能力の発展した国』

 

「こんな夜に戦闘任務とか本部のやつはどうなってんだ」


 そう呟いたのは、Tシャツの上に防寒着用のコートを着た青年。

 小さなポニーテールを作った髪に翡翠色の目、背丈は170前後あり、細身だがよく見ると筋肉質な体をしている。


 場所はステラ東部、季節は4月に移ろうとしているにも関わらず、

驚異的な寒波の影響により未だに雪が降り注いでいる。青年は東側支部の応接間のソファーに腰掛け、ため息混じりに口を開く。


「こんな寒い中戦闘任務ってだけでも億劫なのに・・俺が戦闘任務を任されるってことはそう言うレベルだろ、やってらんねぇ〜って感じだよな、ニコラ」


 青年は拳ふたつ分横に座っているニコラという部下に気だるげに声をかける。

 

「まあまあ・・そう言わずに、それにこの任務が終わったらもう直ぐ入学式じゃないですか!!頑張りましょうよロイドさん!」

「俺が生きて帰れたならそうなるなぁ〜けど今回はなんかやばそうな感じがするんだよな〜なんでだろ?」


「もう・・あんまり陰気臭いこと言わないでくださいよ・・ロイドさんの勘はたまに当たるんですから、特にこういう時なんかは・・・」


 青年ロイドが物憂げに言うのも無理はない、

なぜなら今回の本部の対応は明らかに異常だったからである、

本部からの伝令は戦闘任務とだけ伝えられており、詳しい説明は戦闘予定地近くの東側支部で行うと、明らかな焦りを感じる。

このように本部全体が動きを見せることは近年稀に見ない、それをロイドはひしひしと肌で感じ取っていたのである。


「今回の本部の対応の感じからして、他勢力が関わってそうな感じはするよな」

「ですねぇ〜」


 軽い口調を交わしている様だが隠しきれない緊張感、少し重苦しい雰囲気を、

木製のドアの開く音が掻き消した、ドアの向こうから現れた人物は少し痩せ細り、クマのできた目に眼鏡を掛けた男性だった。


「ロイド様、ニコラ様、大変お待たせいたしました。

私、東側支部の副支部長を務めさせて頂いております・・・キリエと申します。支部長は現在不在のため私が支部長代理として任務の説明をさせていただきます」


 支部長代理のキリエは軽く自己紹介を済ませると任務説明の準備をそそくさとし始めた。


「まず、こちらの紙をご覧ください」

 

キリエから渡された紙には今回の任務についてのことが纏まって書かれていた。


——任務内容——

『天使』の可能な限りでの生け取り


——任務危険度——

『レベル7』

だが、天使の戦闘サンプルが少ないため国内の天使の平均値を算出しており

正確には『不明』


——任務報酬——

本部で可能な限りの要求を受け入れる



 ニコラとロイドは少し驚いた顔を見せた後、先程まで2人で考えていた疑問の原因を明かされ、合点のいった表情へと移り変わってゆく。


「あぁ〜天使か・・・国内での天使数どんぐらいだっけ?」

「詳しく調べないと分からないですが、2桁は無かったと思います」

「そりゃ本部も慌ただしくなるわな、自国にSSRのゲットチャンスとか俺でも焦る」

「ですね〜」


 ロイド達の軽口が収まりをみるとキリエ

は、任務に必要な情報を次々を話していった。


「天使の現在位置はピラ草原、正確な座標は・・X軸◯◯、 Y軸××にいます。」

「それと、本部が今回に関しては

能力の使用制限はなく、

本気での戦闘を認めると仰っておりました。任務伝達は以上になります、では私はこれで・・・」


 そういうとキリエは木製のドアを開け———去っていった。


「色々言いたい事はあるがとりあえずこれだけは言っておきたい・・・

焦ってるとはいえ敵の実力を平均値で推定すんな!!せめて中央値でやれ!!」



                ◇◇◇

 


 ロイド達は応接間から抜け、妙に科学チックにできた廊下を歩きながら戦闘準備室に軽口を叩き、向かっているのだった。


「推定レベル7で俺が出て能力制限解除ってことは、本部は是が非でも欲しいんだな・・」

「本来このレベルだとロイドさんが出る幕じゃあないですもんね」

「いやぁ〜今回レベル10クラスを予想してたからなぁ・・・夢を叶えずに死ぬのかと億劫だったんだよ」


「いやいや、ロイドさん、レベル10って大陸崩壊クラスですよ、遥か昔に1度あった事しかないんですから、身構え過ぎですって」

 

「それもそうだな」

「そうですよ」


 ロイドの勘はたまに当たる、

特にこういう時なんかは・・



「ちなみに夢って何ですか?」

「ん?ああ・・いくつかあるがオーロラを見ることと彼女を作ることが当面の目標かな」


「オーロラの方でしたら能力者で作れる人もいるんじゃ?」

「人口物じゃなくって天然物が見たいんだよ、俺は」

「なるほど?オーロラの方は納得できるんですが、ロイドさんが彼女とは意外ですね、気になる人でもいるんですか?」


「いや?全然、これから見つけるんだよ」

「なるほど・・どんな人がいいとかあるんですか?」

「そうだなぁ〜俺が本気を出しても大丈夫な人でノリが合う人がいいなぁ〜」


 ニコラは思った・・この人が本気を出しても大丈夫な人?それは人じゃない

だろ・・と


「・・・とても素敵な日標ダトオモイス」

「お前今、失礼なこと思わなかったか?」

「そんなコトナイデスヨ・・あ!やっと戦闘準備室につきましたよ、応接間から妙に距離があるんだから、参っちゃいますよね」

「話を逸らしたな」


 口笛を吹きながら焦っているニコラを目を細めながら凝視しているロイド達がこの場所へ来た理由は、

別に武器が欲しかったわけではない、

ニコラは戦闘に参加しないし、ロイドは能力の関係上武器を持つ意味があまり無い、ではなぜこの場所へ来たかというとーー


「おっ!あったあった、お~い、あったぞ」

「見つけましたか」

「あ〜この型はダメですね別のにしましょう」

「・・わかった?」

「これがいいですね、これにしましょう」

「何が違うんだ?」

「違うんですよ色々」


 ロイド達が探していたものそれは・・・

長距離戦闘用インカムであった、遠く離れた位置にいるニコラと会話ができる様にロイドは戦闘用の長距離インカムを欲していたのだ。


「前、使ってたやつだとこの雪のなかじゃ使えないからな、長距離で雪の中でも使える

戦闘用のやつが欲しかったのよ・・・

よしっと、装着完了、そんじゃ俺そろそろ行くから、何かあったら報告するわ」

「気をつけてくださいね」

「おう」




 ニコラと別れを済まし5分・・ピラ草原に向かうためロイドは吹雪の中を進む・・・雪の中、『ガッガッ』という無機質な機械音がロイドの耳から鳴り響く。 


「あ〜あ〜聴こえますかロイドさん」

「おう、聴こえるぞ、なんかあったか?」


「雪の中でも聴こえるかのテストと本部から新しい伝達が来たため報告をと思ったのですが・・・

何かロイドさん吹雪の中なのにノイズが少ないですね?」


「ん?ああ能力発動して飛んでるからな今」

「ああ、なるほど」 

「で・・報告って何よ?」

「あっはい、本部から『天使との契約は本人の意思に任せる』ということらしいのでお伝えしようかと」


「ああ、わかった・・それより、今ちょっと迷子だからやばいかも」


 ロイドは少し焦りながら周りをキョロキョロしていた。その様子を知ったニコラは少しため息をつきながら、自前のパソコンを開く。

 

「方向音痴なのは知っていたので発信機付きのインカムにしといてよかったですよ」

「あの時のインカムってそういう・・まあ何はともあれ助かった、案内頼む」

「はい、ロイドさん目的地に結構近いですね。東側に向かって・・・」 


 ニコラはロイドを目的地に案内をしようとした瞬間、ロイドがその声を遮った。 


「やっぱいいわ、案内」

「いいんですか?」

「ああ・・・見つけた」

 

 先程まで空を飛び天使を探すために雪景色に目を凝らしていたのも束の間、

何か——違和感を覚える境界線を超えた瞬間

景色が雲の点在する星空の夜へと変容を見せていた。


 ロイドは結界系の能力者かと、天使の能力の考察をしていたのも束の間、

この景色の中心におり、岩にも見える突起物の上に座り、足をぷらぷらさせている金髪の天使と思わしき人物と眼の焦点があった。首を斜め上に傾け、上空にいるロイドに向かって溢れんばかりの笑みを向ける。


それを見たロイドの行動は実に速かった。


「おいニコラ本部に伝えろ・・

世界史の教科書に加筆修正する所が出来たってな」

「それって・・・」


「ああ・・・レベル10  全く、俺の勘は百点満点だよ馬鹿野郎」

 

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