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ワンダフルコネクト ~アリスとドラゴンのグレイテストロード~  作者: 稲葉トキオ
第3章 アリス・ハートランドと緋色の翼

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第87話 なつかしき地上と王の資質

【キングハナモグラ】の背中にしがみついていたアリスたちは、一気に地上へと飛びだした。


 地下空間にいた時間は、わずか数十分程度だったはずなのに、空に輝く太陽の光がなつかしく感じられる。


 うす暗い地下を経験したからこそ、陽の光が自分たちにとって、なくてはならない存在だということを、あらためて実感したのかもしれない。


「あーっ! きっもちいいー!」


 親分モグラの背中から降りた緋羽莉が、笑顔いっぱいに、ぐーっと伸びをする。


 さっきまでずっと眠っていたこともあって、その姿は目覚めたばかりの朝のようだ。


 両腕を高く掲げると、すらりと伸びた体のラインがぐんと引き伸ばされる。


 オフショルダーの服からのぞく肩や鎖骨に、太陽の光がやわらかく降りそそぎ、つややかな肌がきらりと輝いた。


 ポニーテールもふわりと跳ね、花冠の花びらが光を受けてきらきらと瞬く。


 健康的に色づいた頬はほんのり赤く、黄色いひとみは太陽の光を映していっそうあかるさを増す。


 長い脚はしなやかに伸び、軽く体を揺らすたびに、どこか弾むような生命力があふれていた。


 アリスとブルー、りんごと閃芽も、地上の空気を大きく吸い込んで、ほっと胸をなでおろした。


 やっぱり、地上(ここ)こそが、わたしたちの生きる世界なんだ――そんな思いを、あらためて感じていた。


『それじゃあ、オイラたちは地下に戻るよ。本当に、いろいろと申しわけなかった』


『モグー!』『モグモグー!』


 親分モグラはぺこりと頭を下げ、見送りに来た子分モグラたちも、わいわいと別れを惜しむような声をあげた。


「こっちこそ、ちょっとムキになりすぎちゃった。ごめんなさい」


 アリスも苦笑いして、謝罪を返した。


 いくら緋羽莉のキスが奪われそうになったからといって、不意打ちや問答無用の攻撃は、英国淑女として反省すべき点だと思ったからだ。


 りんごと閃芽は、子分モグラたちに手を振っていた。


 同じように別れのあいさつを交わしていた緋羽莉に、親分モグラが話しかけてくる。


『オイラの花嫁……いや、緋羽莉。キミには、いちばんひどいことをしちまった。おわびとして、これを受け取ってほしい』


 そう言って、どこからか取り出した白い花を、ツメを器用に動かして、緋羽莉の花の冠にそっと添えた。


 それは太陽を思わせる形をしており、あわく、ふしぎな光を放っていた。


 白い花が加わったことで、花冠はいっそう華やかさを増す。


 緋色の髪、ピンクの花々、そして白く輝く花——その取り合わせは、思わず見とれてしまうほどの美しさだった。


「これは……?」


 緋羽莉は、自分の頭を見上げるようにしてたずねた。


 首をかしげるしぐさに合わせて、ゆるやかなウェーブのかかった髪が肩をなぞる。


 大きなひとみがきらりと揺れ、その無邪気な反応に、場の空気がふっとやわらいだ。


『それは“テラソール”の花。地下にしか咲かない、どんな暗闇もあかるく照らしてくれる花だ』


 親分モグラは答えた。


 それを聞いて、陽の光が差さないはずの地下空間があかるかったのは、このテラソールの花のおかげだったのだと、アリスたちは納得した。


『そのテラソールは、とくにひときわきれいに咲いたやつだ。まるで太陽のような……キミが持つにふさわしい』


 そう語る親分モグラの顔は、これまでにないおだやかなものだった。


 緋羽莉は胸がいっぱいになり、うれしそうににっこりとほほえんで言った。


「ありがとうございます! 親分さん! このお花も、きっと大事にしますね!」


 その笑顔は、まるで陽だまりのようにあたたかい。


 やわらかくほどけた口元と、きらきら輝くひとみが合わさり、見ている者の心までぽかぽかと満たしていく。


 モグラたちはいっせいにキュンとなり、顔を赤らめた。


 それはアリスをはじめとした、仲間たち全員も同じだった。


 テラソールの花飾りによって、緋羽莉の魅力がいっそう引き立てられているように感じられた。


 光を宿した花が、彼女のまわりに淡い輝きをまとわせる。


 その中に立つ緋羽莉は、まるで太陽と花に愛された存在のようで、より自然と視線を引き寄せてしまうのだった。


『それと……ブルー、だったか』


 親分モグラは、今度はブルーに声をかける。


『え? あ、うん……』


 意外そうに、ブルーはちょっとたじろいだ。


『あのイヌ娘の剣も効いたが……オマエのパンチは、とくに痛かった』


 親分モグラは、自分のふっくらとしたおなかをさすりながら言った。


『あっ……その……ごめんなさい』


 その言葉に恨みはこもっていなかったが、ブルーは思わず反射的に謝罪してしまった。こういうところは、まだ直りそうにないようだ。


『あのときのオマエからは、王の資質を感じた。キングと呼ばれながらも、地下の親分でしかないオイラとはちがう、ホンモノの王者のな』


『えっ?』


 ブルーは、きょとんとした。


 王様の資質だなんて、急にそんなことを言われても、ピンとくるわけがない。


『今はわからなくてもいいさ。だが、オイラの目にくるいはねえ。緋羽莉を花嫁に選ぼうとまでした、オイラの目にはな。覚えておいてくれ』


『は、はあ……』


 そう言われると、そうなのかなあと、ブルーはほんのちょっぴり、納得したようなしないような、複雑な気持ちになった。


 そこに、そばに立っていたアリスが、こちらを見下ろしながら言った。


「ブルーのママって、次期王様候補にもあがるほどのすごいドラゴンなんでしょ? その血が流れてるブルーにも、同じような素質があるってことじゃない?」


 そう言われて、ブルーはハッとした。ようやく腑に落ちた思いだった。


 いちばん大好きな、おかあさんの血を受け継いでいる。


 そう思うと、親分モグラの言葉にも、大きな説得力が生まれた。


 ブルーは胸の前でぎゅっとこぶしをにぎりしめ、自分の中に眠る資質を、そっと心に刻んだ。


『じゃあな! またいつでも遊びに来いよ! そんときは、穴に向かって大きな声でオイラのことを呼べ!』


「はいっ! ぜったいまた来ます! みんなも、元気でねー!」


『モグー!』『モグモグ!』『モグ~!』


 緋羽莉は元気よく、アリスたちもいっしょに手を振り、ふたたび地下へと戻っていくモグラたちを見送った。


 そして――アリスは導きの枝を取り出し、宣言する。


「さあ、みんな! あらためて、冒険再開よ!」


「おーっ!」


 ……と、元気よく返事をするのは、緋羽莉とブルーだけ。


 りんごは、また山道を登るのかと思うと気が滅入っているようで、閃芽はもともとそういうキャラではないからだ。


 なにはともあれ、裏山異空間(ワールド)の地上に帰還したアリスたちは、山のボスとやらを仲間に加えるべく、登山を再開するのだった……

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