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ワンダフルコネクト ~アリスとドラゴンのグレイテストロード~  作者: 稲葉トキオ
第3章 アリス・ハートランドと緋色の翼

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第84話 激震の地下バトル

『よくもやったな! いてーじゃねえか! このハリネズミめ!』


 ハーリーの電気を帯びたトゲに触れて、右手にダメージを受けたキングハナモグラは怒り心頭。


 下手投げの要領で、左手でザッと地面の土をかきだし、そのままのいきおいで土のかたまりを投げつけてきた。


 狙いはもちろん、あおむけになって倒れているハーリーだ。


「ブルー! 守って!」


 アリスの指示。


『うん!』


 ブルーはハーリーをかばうように飛びだし、腕を交差させた《ガード》の構えで土を受け止めた。


 ドゴッ!


 強い力で固められて放られた土のかたまりは、かなりの威力だ。


 だがブルーは、腕に衝撃を受けただけで踏みとどまった。どうやらダメージは軽いようだ。


「《スカイナックル》!」


 ガードした次の瞬間、すぐさま反撃の体勢に入る。


 これまでのバトルを見て、やって、ブルーが学んできたことだ。


 右こぶしに空色のオーラをまとわせながら、ブルーは一直線にキングへ突っこんでいく。


『甘いや、青トカゲ!』


 キングハナモグラは、ブルーをたたきつぶそうとヒビの入った右のツメを振り上げた。


「《ニードルサンダー》!」


 その瞬間――


 ハーリーが放った電撃のヤリが轟き、またキングの体をしびれさせた。


 バリバリバリ!


『っがっ……! マジうぜぇ……!』


 キングがいらだちの声をあげた、その直後。


 ブルーはすでに、ふところの中へ飛びこんでいた。


(ヒバリちゃんは、わたさない!)


 そんな想いがこもった空色の鉄拳が、どてっ腹へ――


 ミルフィーヌが何度も突きを叩きこんだ、あの同じ場所へと突き刺さる!


 ドゴオッ!


『ぐへえっ……!』


 キングはヘドを吐きながら吹き飛び、宙を舞った。


 うしろで応援していた子分のハナモグラたちは、あわてふためき、クモの子を散らすようにその場から逃げ出す。


 ズズーン!


 大きな音と振動とともに、キングは地面へ墜落した。


 もし子分たちが逃げていなければ、下敷きになっていたにちがいない。


 その巨体はさらに後方へ弾み、奥のお花畑の中へ転がりこんだ。


「すう……すう……」


 お花畑の中の眠り姫、緋羽莉は、こんな状況でものんきに寝息を立てている。


 花びらのベッドの上で、まるで何も知らないかのように、すやすやと眠ったままだ。


 すらりと長い脚が花のあいだからのぞき、しっかり鍛えられた太ももが、やわらかな花びらを押し広げている。


 こぶしを振り抜いたブルーも、その光景に思わず目を丸くしていた。


『オ……オイラの花嫁……』


 あおむけに倒れた状態の、キングの視界いっぱいに映っているのは、花びらに囲まれて眠る緋羽莉の姿だった。


 ゆるく波打つ髪、すらりとした体、そして花の香りに混ざった体温の気配。


 近くにいるだけで、思わず引き寄せられてしまうようなふしぎな存在感がある。


 それが、このモグラの親分の胸に、激しい執着を燃え上がらせていた。


 すると――


 その胸の奥から、なにか熱いものがこみあげてきた。


 それは次第に、体の外へとあふれ出す。


 メラメラと、緋色のオーラが全身からゆらめきはじめたのだ。


「ゲッ、あれは……」


 閃芽は露骨にイヤそうな顔をする。


 りんごも顔をしかめて、思わず一歩たじろいだ。


 これは、木のバケモノ【トオレント】と戦ったときと同じ現象。


 ――緋羽莉をわたさない。


 その強烈な思いが、彼女のあふれんばかりの生命力と共鳴し、ワンダーをパワーアップさせてしまうのだ。


 キングハナモグラは、腹筋だけの力でぴょーんと跳ね起きた。


 ズズーン、と重い音を立てて着地し、ふたたびブルーたちの前に立ちはだかる。


『うおーーーーーっ!!!』


 大きなおたけびが地下空間に響きわたった。


 その振動は、この空洞が崩れてしまいかねないほどだ。


 アリスたちウィザードも、ブルーたちパートナーも、思わずひるんで動きが止まってしまう。


『おっしゃーーーっ!』


 キングはシュポーッ! と荒い鼻息を噴きながら、また左のツメで土をかきだした。


 その動きは、さっきよりもあきらかに速い。


 かきだされる土の量も多く、いきおいも増している。


 ドゴン!


『ギュッ!?』


 気がつくと、放られた土のかたまりがハーリーに直撃していた。


 その体は大きく吹き飛ばされ、背中の黄色い針が砕け散るほどの威力だ。


「ハーリー!」


 閃芽は、一拍遅れて声をあげた。


 ハーリーの小さな体が地面を転がり、動かなくなる。


 戦闘不能になったのを確認すると、閃芽はすぐにスマートウォッチの中へ戻してやった。


『うおりゃーーーっ!』


 キングは間髪入れず、今度は右のツメをブルーめがけて振り下ろそうとする。


 ハーリーによってヒビを入れられていたはずのそのツメは、きれいに元通りになっていた。これも、緋羽莉の生命力による再生能力のなせる業だ。


 ブルーは、おたけびにひるんだせいで回避が間に合わない。とっさに足をふんばり、ガードの構え!


 ガキィーン!


『ぐっ!』


 なんとか受け止めることはできたものの、骨まで響くその衝撃は、すさまじいのひとこと。


 ブルーの体は後ろに大きく押し退けられ、ツメを受けた腕からは、どろりと血が流れた。


(こんなの、何発も受けられないよ!)


 ブルーは心の中で叫び、あせりの表情を浮かべる。


『どらあああっ!』


 そう思うやいなや、キングは追い打ちをかけようと駆け出し、さらに左のツメをブルーに振り下ろす!


『どわあっ!?』


 ビュッ!


 ブルーはおどろいたものの、今度はなんとかバックステップでかわすことができた。


 しかし、さらに右のツメが襲いかかる。


『ひゃあっ!?』


 ブルーは横っ飛びでこれも回避。


 その後もキングの連続ツメ攻撃は止まず、ブルーは必死に回避を続ける。だが、それが長続きしないことは、だれの目から見ても明らかだった。


「リース、たのんだよ! りんご! ブルーを援護して!」


 閃芽が【ヒマワリス】のリースを呼び出し、りんごに指示を飛ばした。


 硬直していたりんごはハッと我に返り、おそるおそるパートナーのザックに命じる。


「ウ……《ウイングダーツ》!」


『御意!』


 フクロウのザックはキッと目を細め、木の葉のような緑の翼を振るい、数発の羽を発射した。


 しかし――


 ぽよぽよぽよん!


 羽のダーツは、キングのどてっ腹の脂肪に、あっけなくはじかれてしまう。


「あっ……!」


 りんごは、失敗してしまった、という顔になった。


 キングハナモグラは〈メタボディ〉という特性を持っている。


 そのぶ厚い脂肪のせいで、打撃によるダメージを大幅に軽減してしまうのだ。


 ブルーは特性を無効化する特性を持ち、ミルフィーヌは衝撃波でダメージを与えていた。


 そのため、いままで〈メタボディ〉が発動する場面がなく、りんごも気づけなかったのだ。


 ――いや。知識としては、その特性を知ってはいた。


 だが、恐怖で頭が真っ白になっていたのだ。


 ザックの援護はまったく効果がなく、キングのブルーへの攻撃も止まない。


 また足を引っぱってしまったという自責が、りんごの心をさらにこわばらせる。


「《リーフカッター》!」


 そこに響いたのは、閃芽の声。


 リースが両手ににぎる大輪のひまわりの花から、複数の葉っぱの刃が放たれ、キングに襲いかかった!


 サクサク! キンキン!


『いってっ……!』


 葉っぱの刃はキングの顔に命中し、毛皮をわずかにそり、花形のサングラスを打った。


 顔面はさすがに特性がはたらかない。それでも効き目はうすいが、ひるませるにはじゅうぶんだった。


 ブルーはそのスキにキングから距離を取り、息をととのえる。


 地下の空洞に、荒い呼吸の音が響いた。


「これは……ちょっとまずいかも……」


 アリスは目の前にそびえるキングハナモグラの巨体を見上げ、つぶやいた。


 その口は弱気を吐いても、頭の中はどう攻略するか――思考回路をフルスロットルで回している。


「アリスぅ……」


 そんななか、お花畑で気持ちよさそうに眠っている緋羽莉が、大きな寝言をもらした。


 彼女は夢の中でも、アリスのことを考えているらしい。


 花のクッションに頬をうずめるように体を寄せ、幸せそうに身を丸める。


 くせ毛ぎみのポニーテールが肩へ流れ、黄色いリボンがふわりと揺れた。


 大きな体をのびのびと横たえたその姿は、花園の中でもひときわ目立つ存在だ。


 夢の中でも大好きな友だちの名前を呼ぶその声は、どこか甘えるようで――思わず守ってあげたくなるような響きだった。


 それを聞いた瞬間――


 アリスの頭に、ピーンとひらめきが走った。


「ブルー! やるよ! わたしたちも!」


『え? なにを??』


 ブルーはちんぷんかんぷんとばかりに、アリスのほうを振り向く。


 りんごと閃芽も、同じように目を丸くした。


 だが――アリスの顔は、自信に満ちていた。


 まるで、勝利を確信しているかのように――

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