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ワンダフルコネクト ~アリスとドラゴンのグレイテストロード~  作者: 稲葉トキオ
第3章 アリス・ハートランドと緋色の翼

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第75話 だんご大作戦

「あ、あんなの、もう勝てっこないよ……」


 姫君と慕う緋羽莉を返すまいという思いのあまり、彼女のあふれる生命力の影響でパワーアップし、さらに高い再生能力まで得た三体の木のバケモノ――【トオレント】。


 その姿を前にして、りんごはすっかりあきらめモードになっていた。


 弱音を吐くな、と閃芽はりんごをしかりたかった。


 けれど、たしかに状況は絶望的だ。そう言いたくなるのもムリはない。結局、なにも言わなかった。内心では、むしろ悪いのは緋羽莉のほうだと思っていたが。


 ただひとり、アリスだけはまったくあきらめていない顔で、トオレントたちをにらみながら勝ち筋を探っていた。


 アリスと緋羽莉の付き合いは長い。互いをよく知った仲だ。


 だからこそ、ワンダーバトルにおけるそれぞれの特徴もスタイルも、すべて把握している。もちろん、緋羽莉のパートナーたちが持つ超再生能力への対策もだ。


 そのひとつが、前にブルーにも教えた方法――気絶させてしまえば、再生したって意味がないというもの。


 どんなに耐久力を持ったワンダーだろうと、急所に強烈な一撃を叩き込めば、意識を奪うことはできる。そして、進化したいまのミルフィーヌになら、それができる。


 しかし、そのためには……クリアしなければならない条件が多い。


 だからアリスは――


「ふたりとも、ちょっと耳貸して」


 そう言って、りんごと閃芽に、なにやらひそひそと耳打ちした。


「ええっ⁉」


「また大胆なこと思いつくねえ……」


 りんごはびっくり仰天。閃芽は肩をすくめ、あきれたように笑った。


「ふたりの協力が必要なの。お願いね」


 アリスがそう言ってほほえむと、りんごはとまどいながらうなずき、閃芽はしぶしぶといった様子で息をついた。


「それじゃ、名づけて――“だんご大作戦”、スタートよ!」


 アリスの号令に合わせて、りんごと閃芽のパートナーたちは左右へ散開。


 そしてミルフィーヌは、正面からトオレントへ突撃をしかけた!


『ムダだ! いまの我らには、なにをしようとな!』


 トオレントたちは、突っ込んでくるミルフィーヌめがけ、根を伸ばし、木の葉を飛ばして攻撃してくる。


「振り払えー!」


『やあーっ!』


 アリスの叫びに合わせ、ミルフィーヌは剣を振り回し、根と木の葉を次々と切り払っていく。


 それでも相手は圧倒的な物量。すべてをさばききることはできず、体にはいくつも切り傷が走った。


『やりおる!』


 トオレントたちも思わず感心する。


 たった一体で、自分たち三体すべての攻撃をしのいでいるのだ。並のワンダーなら、とっくに勝負はついているだろう。


 トオレントたちは、ミルフィーヌへの攻撃をさらに激しくした。


 だからこそ――意識が彼女だけに向き、残りの二体への注意をおろそかにしてしまった。


「《ニードルサンダー》!」


「ら、《ラプターシュート》!」


 閃芽とりんごの声が響く。


 トオレント三体の両脇へ回り込んでいたハーリーの電撃と、ザックの強烈な蹴りが、左右のトオレントAとBに同時に直撃した!


『どわわっ⁉』『ぐえーっ!』


 完全に虚を突かれた不意打ち。二体は情けない声をあげ、それぞれ後方へ押し込まれる。


 ハーリーはハリネズミ、ザックはフクロウ。気配を殺して相手に近づくのは、お手のものだ。


『だが、こんなもので!』『オレたちは倒れないもんね!』


 トオレントAとBは、すぐに体勢を立て直した。


 しかし――


「いーや、もう勝負はついたよ」


 アリスは不敵でステキな笑顔を浮かべ、きっぱりと言い切った。


 お花畑の上で、森のワンダーたちにまとわりつかれ捕らわれている緋羽莉も、ぱあっと顔を咲かせる。おめかしした緋色のポニーテールが、ふわりと揺れた。


 白いフリルのついたピンクの服の下では、小学生とは思えないほど豊かな胸元と、健康的に引き締まった体つきが、むぎゅっとワンダーたちに押されて少し窮屈そうだった。


 長い脚をそろえてちょこんと座る姿は、まるで元気なお姫さまが花の上に腰かけているみたいだ。


 ――またアリスが、びっくりするようなことをするんだ!


 そんな期待に満ちたまなざしで、彼女を見つめていた。


 大きな黄色いひとみが、きらきらと輝く。


 つやつやの肌は春の陽ざしを受けてほんのり赤くなり、その表情には隠しきれないうれしさがあふれていた。


「ミルフィーヌ!」


 アリスが呼びかけると、ミルフィーヌは左手から光る肉球を発生させ、右手の剣にぽんと押し当てた。


 すると、水色の刀身が、肉球と同じ、ピンク色のぷにっとした質感の膜に包まれる。


『いきますっ!』


 ミルフィーヌはかけ声とともに、ふたたびトオレントに突撃をしかけた!


『何度やろうとムダだ……』


 迎撃しようとしたトオレントは、ハッと気づく。


 横並びになっていたはずの三体のトオレントが、ハーリーとザックに押し出されたせいで、AとBが後ろへ下がり、三体が縦に並んで密着していることに。


『……まさか!』


 リーダーがアリスの狙いに気づいたころには、もう遅かった。


 ミルフィーヌは右手の剣で突きをくり出す。


 しかし、トオレントまでの距離はまだだいぶ離れていた。


 ……と、思ったその瞬間。


 ぐにょーん!


 アメ細工のような水色の刀身が、ぐんと伸びた。


「なっ……」


『なにィーっ⁉』


 りんごと閃芽、トオレントたちは、いっせいにおどろいた。ウォッチの中のブルーとモモも同様だ。


 ただひとり、緋羽莉だけは、大きな黄色いひとみを宝石のように輝かせている。


 思わず身を乗り出したせいで、ポニーテールがぴょんと跳ねた。


 むぎゅっと押さえつけられている体が、うれしさに負けて小さく跳ねる。その動きに合わせて、健康的な体つきがふわっと揺れ、フリルのついた服が軽やかに波打った。


 そして、伸びた刀身は――


 グサグサグサッ!


 と、三体のトオレントをまとめて串刺しにした。


 そう、まさに……だんごのように。


『んがっ……!』


 トオレントたちは苦悶の表情を浮かべる。だが、ふしぎと痛みは、刺さった瞬間に走っただけだった。


 ……しかし、それもつかの間。


「『《ハニーショック》!』」


 アリスとミルフィーヌの声が重なる。


 次の瞬間――


 ドバアン!


 という大きく重い破裂音とともに、トオレントたちの体内にすさまじい衝撃が駆け巡った!


『ギャアアーーッ!』


 トオレントたちは、断末魔の恐ろしい悲鳴をあげる。


 りんごが思わずびくっとしてしまうほどの声だった。


「なるほど……そういう技か」


 閃芽はメガネをくいっと持ち上げながら、冷静に分析する。


 ミルフィーヌの肉球バリアには、弾力と反発力がある。


 それで包み込むことで、その性質を剣に付与したのだ。


 つまり、肉球の性質を持った剣を敵に突き刺し、内部で反発力を炸裂させることで、体内に直接衝撃波を発生させる――それが、あの技のカラクリなのだろう。


「すっごおい……!」


 お花畑の中の緋羽莉は、もう興奮しきりだ。


 ワンダーたちにまとわりつかれてさえいなければ、きっと全身でよろこびを表現していただろう。


 実際には動けないはずなのに、長い脚がそわそわと揺れ、元気な体は今にも飛び出しそうだ。


 むっちりした太ももに力が入って、ふくらはぎの筋肉がぴんと張る。


 それでも笑顔はとびきりやさしくて、見ているだけで元気をもらえるようなあかるさだった。


 さしものタフ化したトオレントたちも、内部からの衝撃には耐えられない。


 ブロッサムスクエアで、同じような攻撃で倒れた緋羽莉のパートナー、シンディの姿を見て、アリスが学んだことだった。


 トオレントたちは、まるで切り倒された樹木のように、


 ズズーン……


 と重い音を立てて、地面に倒れ込んだ。


「『やっ……たあーっ!』」


 アリスとミルフィーヌは、そろって大ジャンプ。


 淑女のアリスは、ふだん全身でよろこびを表現したりはしない。だが、ミルフィーヌのノリにあてられたのか、それとも緋羽莉に影響されたのかもしれない。


「ナイスファイト」


 閃芽はにっと笑って、りんごにハイタッチを求める。


 りんごはふうっと息を吐いたあと、ふにゃりと苦笑いして、それに応じた。


 その胸の中には、ちゃんと今回は役に立てた、という安心感がひろがっている。


「おつかれさま、ミルフィーヌ!」


『はいっ! アリスちゃんっ!』


 アリスとミルフィーヌも、笑顔でハイタッチ。


 お花畑の中の緋羽莉も、にっこりと満面の笑みを浮かべていた。


 その心の中は、アリスたちへの称賛と感激でいっぱいだ。


 緋色の髪が風に揺れ、黄色いリボンがふわりと踊る。


 その笑顔は太陽みたいにあかるく、健康的な肌もきらきら輝いていた。


 長い脚を折りたたんで座る姿は、元気いっぱいの少女らしさと、どこかお姫さまみたいな華やかさを同時に感じさせる。


 そして胸の奥では――


(やっぱりアリスは、最高だよっ!)


 そんな気持ちが、ぽかぽかとふくらんでいた。


 こうしてアリスたちは、トオレントとのゲームを制し、さらなるレベルアップを果たしたのだった。

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