第40話 ブロッサムスクエア
「ワンダフル……!」
アリス、ブルー、緋羽莉は、そろって感激の声をもらした。
目の前に広がるのは、あかるい黄緑色の草原。ゆるやかに起伏する丘の地形。そのあちこちに、満開の桜の木が無数に立ち並んでいる。
心地よい春風が吹き抜け、花びらを空へと舞い上げる。
見上げれば、空は青から淡いピンクへと溶け合うようなグラデーションを描いていた。
すべてが現実離れした幻想的な風景で、三人は、はっきりと実感していた。
――ここは、もう元の世界じゃない。まぎれもないふしぎの国、別世界だ。
『でも、どうして……こんなに広いの?』
ブルーがふしぎそうに首をかしげる。
それもそのはずだ。この異空間は、中に入るまでは、市街地の一角にぽつんとあった、桜の木が何本か生えているだけの、小さな四角い空き地だったはずなのだから。
「ワールドはふしぎな空間なの。外から見るより、ずっと広くなってるのよ」
アリスは、当たり前のことのように言った。
ふしぎ――なんて都合のいい……いや、便利な言葉なんだろう。
ブルーはあきれたような、それでいて感心したような気持ちで、心の中でうなずく。
「いわゆる“空間歪曲”だね。ワンダーのチカラで、空間そのものをひろげてるんだよ」
そう補足したのは緋羽莉だった。
少し困ったような、でも楽しそうな笑顔を浮かべている。
大きな黄色いひとみがきらきらと輝き、話す相手をまっすぐ見つめるその視線には、やさしさと誠実さがにじんでいた。
「りんごちゃんか閃芽ちゃんがいたら、もっとくわしく解説してくれたと思うけど」
そう言ってから、緋羽莉はいったんお弁当のバスケットを地面に置き、両腕を大きくひろげた。
腕をのばす動作ひとつとっても、迷いがなく、しなやかだ。
大きな手のひらがぱっと開き、長い指が春の空気をつかむように動く。
そして胸いっぱいに、すうーっと息を吸いこむ。
肺活量のすごさを物語るように、空気を吸いこむ音がはっきりと聞こえた。
緋色のポニーテールが春風に揺れ、黄色いリボンがひらりと踊る。
マゼンタ色のミニスカートと白いフリルがそよそよと波打ち、ピンクのオフショルダーとたすきがけのポーチも、この景色によく映えていた。
おめかしした服装はかわいらしいのに、立ち姿は堂々としていて、頼もしさすら感じさせる。
そのアンバランスさが、かえって緋羽莉らしかった。
舞い散る桜の花びらに包まれたその姿は、まるで春の妖精のよう――……と呼ぶには、体が大きすぎるか。
「あー! すっごくいい空気! 景色もきれいだし、最高だね!」
声が少し大きいのも、いつものこと。
でも、その元気な声は、この草原によく似合っていた。
桜にも負けない、ぱっと咲いたような笑顔。
健康的な肌は陽ざしを受けてつややかに輝き、見ているだけで元気をもらえる。
アリスは、そんな親友の横顔を見つめながら、
(……緋羽莉ちゃんのほうが、きれいだよ)
なんて、思ってしまった。
背が高くて、たくましくて、それでいてやさしくて。
いっしょにいると、ふしぎと安心できる存在。
次の瞬間、はっとして、顔が熱くなる。
あわてて、ぷいっと視線をそらした。
『ヒバリちゃんも、ここに来るのはじめてなの?』
ブルーが、また疑問を口にする。
緋羽莉は、バトルを禁止されていたわけじゃない。
それなら、ワールドに入った経験があってもおかしくないと思ったのだ。
緋羽莉は後ろ手を組み、ブルーを見下ろしながら、やさしくほほえんだ。
少しかがんで目線を合わせる、そのしぐさが自然で、相手を思いやる気持ちが伝わってくる。
「んーん。きょうがはじめてだよ。アリスの禁止令が解けるまで、冒険はひかえてたからね」
その言葉に、アリスの胸がきゅんと鳴った。
親友だから知っていた。
でも、あらためて言葉にされると、うれしさと、もうしわけなさが一気にこみ上げてくる。
「だからね――わたし、きょうこの瞬間を、ずっと楽しみにしてたんだ!」
緋羽莉は、まっすぐアリスを見て言った。
大きなひとみに、まっすぐな気持ちを宿して。
「アリスとこうしていっしょに、ワンダーワールドへの最初の一歩を踏み出す日をね!」
いつもの、太陽みたいな満面の笑顔。
その笑顔には、迷いも、計算もない。
ただ純粋に、大好きな友だちといっしょにいられることが、うれしくてたまらないのだ。
それだけで、アリスは心がほどけていくのを感じた。
「……そうだね、待たせちゃって、ごめんなさい」
アリスは、やさしくほほえんで言った。
緋羽莉はなにも言わず、もう一度にっこりと笑い返す。
その笑顔は、さっきよりも少しだけ、やわらかかった。
そのやりとりを見ていたブルーは、
(ぼくも、こんなふうにアリスとなかよしになりたいな)
と、自然と顔をほころばせていた。
『……それで、ここはなんていう名前なの?』
ブルーは、さらに質問する。
ドラゴピアのように、このワールドにも名前があるはずだと思ったのだ。
アリスは両腕をひろげ、誇らしげに答えた。
「ここは"ブロッサムスクエア"。桜の広場って意味よ。春のあいだしか入れない、人気の限定スポット!」
たしかに、周囲を見渡すと、自分たち以外にもウィザードとワンダーの姿がちらほら見える。
町中ほどではないが、なかなかのにぎわいだ。
緋羽莉は周囲を見回しながら、楽しそうにきょろきょろしている。
知らない世界、知らない景色に、胸が高鳴っているのが、表情からはっきりと伝わってきた。
「でも、忘れちゃいけないのは、あくまでここはワンダーの領域だってこと。野良のワンダーがたくさんいる。その中には、攻撃的な子だってたくさんいるから、お花見には向かないんだよね」
そう言いながら、アリスは、かわいらしくバスケットを両手で下げている緋羽莉を、ちらりと見た。
そのバスケットも、緋羽莉の大きな手にかかると、少し小さく見える。
けれど、あつかいはとても丁寧で、そっと大切そうに持っているのがわかる。
緋羽莉は視線に気づくと、条件反射のように、にこっと笑う。
皮肉のつもりだったアリスの視線は、まったく通じていない。
さすがの純真無垢っぷりだった。
『モチー!』
ドーン!
『うわー!』
次の瞬間、ブルーがなにかにぶつかられ、小さくふっとばされた。
「……ほらね」
アリスが、いたずらっぽく笑う。
言ったそばから、野生のワンダーの登場だ。
薄いピンク色で、体高は30センチほど。
まるっとした体に、目がふたつついただけの、さくらもち型ワンダー、【サクラモッチー】。
体はおもちのようにやわらかいが、弾力があり、いきおいよく体当たりされると、けっこう痛い。
「かーわいい!」
緋羽莉は目を輝かせるが、ブルーにとっては、それどころではない。
ふるふると首を振り、ぴょんと跳ね起きると、相手をにらみつけた。
いきなり攻撃してきたんだ、敵意ありとみるべきだろう。
『モチー!』
サクラモッチーは、ぷくーっと体をふくらませ、戦闘態勢に入る。
(ぷくーってしたいのは、ぼくのほうだ!)
ブルーは目をつりあげた。
「よし、異空間に入って、さらに野生のワンダーと初バトルだね!」
アリスは気合いを入れ、左肩をぐるりと回す。
「がんばって、ブルー!」
緋羽莉のあかるい声援が飛ぶ。
その声は大きくて、まっすぐで、聞いているだけで力が湧いてくる。
ブルーとサクラモッチーの、バトル開始だ。
『モチー!』
野生のサクラモッチーは、体を大きくふくらませ、もう一度いきおいよく突進してきた。
「よけて!」
アリスのするどい指示が飛ぶ。
たしかに、あの体はみごとな弾力だが、動きの速さはそれほどでもない。
いまのブルーなら、十分対応できるはずだ。
ブルーは横っ飛びで、ひょいとかわす。
――が。
『モチー!』
サクラモッチーは着地すると同時にくるりと向きを変え、ふたたびブルーめがけて跳ねてきた。
その動きは、地面に当たったあと逆回転して戻ってくるボールのようだ、とサッカー好きのアリスは思う。
『うわわっ!』
横っ飛びの直後で、もう安全だと油断していたブルーは、今度は反応が遅れ、体当たりを受けて転ばされてしまった。
『モッチー!』
サクラモッチーは、勝ち誇ったような目で、ぴょんと跳ねる。
倒れたブルーは、一瞬、やられたと思った。
無防備に近い状態だったとはいえ、体のダメージ自体はそれほど大きくない。
だが、「してやられた」という気持ちが、胸にずしりと残った。
(くやしい……!)
ブルーはその感情をかみしめながら、すぐに体を起こした。
『モッ!?』
今度は、サクラモッチーのほうがびっくり仰天だ。
思ったより攻撃が効いていないことに気づき、ぷるぷると体を震わせる。
まるで冷や汗をかいているみたいだった。
アリスと緋羽莉は、落ち着いた表情でそのようすを見守っている。
ふたりのまなざしには、不安よりも、ブルーへの信頼がはっきりと宿っていた。
緋羽莉は胸の前で大きな手をきゅっとにぎり、長いまつげをふるわせながら、まっすぐにブルーを見つめている。
その姿は、応援しているだけなのに、そこにいるだけで場の空気をあたたかく照らしていた。
高い背と引き締まった体つきが目立つのに、ふしぎと威圧感はなく、むしろ包みこむような安心感がある。
「さあ、おかえしよ! 《プリズムボール》!」
ブルーは両手を前に突き出し、チカラをこめる。
次の瞬間、虹色にきらめく光の球が放たれた。
『モーッ!』
プリズムボールは、バーン! と小気味よい音を立てて命中し、まぶしい光を散らす。
サクラモッチーの体は、とろけたチーズのようにふにゃりと崩れ、くるくると目を回して、そのまま気を失った。
「やったあー!」
緋羽莉が、思わず大きく跳ねた。
背の高い体がふわっと宙に浮き、着地と同時に、ぱっと花が咲いたような笑顔を見せる。
自分のことのように、全力でよろこんでいるのが一目でわかった。
跳ねた拍子に、緋色のポニーテールが弧を描いて揺れ、黄色いリボンがきらりと光る。
健康的につやのある肌と、よく鍛えられた脚が生む軽やかな動きは、まるでダンスのワンシーンのようだった。
大きな体なのに、しぐさひとつひとつが素直で無邪気で、見ているだけで元気をもらえる。
相手はそれほど強敵ではなかったため、実際に戦ったアリスとブルー自身の達成感は、そこまで大きくはなかった。
けれど、緋羽莉がこんなふうに全身でよろこんでくれると、つられるように、ふたりの胸にもあたたかいよろこびがひろがっていく。
「ところで、ブルー」
『なあに?』
アリスがふいに声をかけたので、ブルーはきょとんとした。
「なにか、聞きたいことがあるんじゃない?」
あまりにも唐突な質問だった。
急にそう言われても、すぐには思い浮かばない。
けれど、たしかに――なにかが、引っかかっているような気もする。
そんなときだった。
背中に、じんわりとした熱を感じる。
振り向くと、緋羽莉が腰をかがめ、目線を低くして、ブルーを見つめていた。
大きな体なのに、その表情はとてもやさしく、まるで小さな弟を見るようだ。
どんな小さな疑問でも、打ち明けたほうがいいよと、うったえているような気がした。
緋羽莉はアリスに直接助言しないと約束している。
だから、こうして目で伝えようとしているのだろうか。
……いや。
緋羽莉の性格を考えると、そんな器用なことができるとは思えない。
たぶん、ただ単に思ったことが、そのまま顔に出ているだけだ。
ブルーは、そう結論づけた。
『……じゃあ、ホントにちいさな疑問なんだけど』
「うんうん」
アリスと緋羽莉は、ほぼ同時にうなずいた。
『どうして、《プリズムボール》を指示したの?』
ブルーの中では、相手のスキを突く場面では、《スカイナックル》を使うものだと思っていたのだ。
「いい質問ね」
アリスは満足そうにほほえむ。
「ブルー、“特性”についてはおぼえてる?」
『おぼえてるよ。ワンダーが持ってる特殊能力でしょ? 自動で発動するタイプの』
「その通り。【サクラモッチー】は〈モチモチボディ〉って特性を持ってるの」
アリスは、指を一本立てて説明する。
「これは、打撃系のダメージを大幅に軽減する効果があるのよ」
『あ……それで、プリズムを……』
ブルーの顔に、ぱっと理解の色がひろがった。
攻撃の種類によって、有効・不利が変わる。
ただ技を出すだけじゃなく、相手を知ることが大事なのだ。
ブルーは、またひとつ成長した気がした。
アリスは満足そうにほほえみ、緋羽莉も、にこにこしながら、何度も「うんうん」とうなずいている。
まるで自分のことのように、うれしそうだ。
「それじゃ、そろそろこのワールドの探検をはじめようか!」
「おー!」
そして、親友ふたりがこぶしをつきあげると、
『ね、ねえ、あの子はどうするの?』
ブルーが、へなへなになって倒れているサクラモッチーを指さして、たずねた。
アリスは、くすっと笑って答えた。
「ほうっておけば、すぐに回復して、どこかへ行くからだいじょうぶだよ」
緋羽莉も、安心させるようににっこり笑って言った。
「ブルーは、ほんとうにやさしいんだね!」
その笑顔はとてもあかるくて、まっすぐで、見ているだけで胸の奥がほっとあたたかくなる。
長いまつげに縁どられた大きなひとみがやさしく細められ、緋色のポニーテールが、気持ちに合わせるように小さく揺れた。
背が高くて存在感のある体なのに、笑うとふしぎなくらい近くて、親しみやすい――そんな空気をまとっている。
『べ、べつに、そんなこと……ないよ……』
ブルーは急に照れくさくなって、視線をそらした。
でも、たしかに――そこまで気にする必要はないのかもしれない、とも思った。
ただ、襲ってきた相手を、身を守るために返り討ちにしただけだ。
いちいち全部を気にしていたら、きっとキリがない。
それでも、胸の奥がちくりとする。
(やっぱり、あんまりいい気分じゃないな……)
だから、次からは、できるだけ加減できるようにしよう。
ブルーは、そう心に決めた。
「……でも、やっぱり、このままほっぽっとくのはかわいそうだからね! アカネちゃん!」
緋羽莉は、左手のスマートウォッチに軽く触れて、【スカーレットチック】のアカネを呼び出した。
『あらステキ! ここが異空間なのね!』
飛び出すなり、アカネは興味津々といった様子で、キョロキョロと首を左右に回す。
そのひとみは、主人である緋羽莉と同じように、きらきらと輝いていた。
「感激してるところ、もうしわけないけど、あの子を治してあげてくれる?」
『いいわよ。おやすいごようだわ!』
アカネはとくいげに胸を張って答える。
ウォッチの中にいても、外のようすは見聞きできるため、状況はすでに把握しているようだった。
そして緋羽莉は、静かに目を閉じ、祈るように両手を組むと、やさしく唱えた。
「《再生の炎》」
緋色のポニーテールが、そよ風にふわりと舞う。
黄色いリボンがきらりと光り、ピンク色の服のフリルが、光を受けて淡くきらめく。
その姿は、このふしぎなワールドの中でも、ひときわ清らかで、まるで聖女のようだった。
背すじをすっと伸ばしたその姿は、年齢以上に凛としていて、自然と目を引く。
アカネは口を開き、やわらかな光を帯びた炎を、サクラモッチーにそっとあびせる。
すると、体についたキズや歪んでいた弾力が、みるみるうちに元どおりになり、出会ったばかりの、まるまると元気な姿へと戻っていった。
『モチー!』
サクラモッチーは、元気いっぱいに鳴き、笑顔でぴょんと跳ねる。
「はい! これでもとどおり!」
緋羽莉は、満開の笑顔で両手をぱっと広げて言った。
その瞬間、場の空気が一気にあかるくなる。
背の高い体をいっぱいに使ったそのしぐさは、元気そのもので、見ている人まで笑顔にしてしまう力があった。
「うまくいってよかった!」という気持ちが、言葉より先に全身からあふれている。
すごいチカラを使った直後なのに、少しも気取った様子がない。
それどころか、誰かを助けられたことを、心からよろこんでいるのが伝わってきた。
ブルーは、思わずあんぐりと口を開け、ぽかんとしていた。
アカネが、こんなすごいチカラを持っていたなんて――。
さすが、不死鳥のヒナというだけはある。
『で、でも、そんなチカラがあるなら、予選のとき、ぼくたちのことも元気にできたんじゃ?』
考えていたことが、そのまま口からこぼれてしまった。
どんな小さな疑問でも打ちあけろ、さっき、緋羽莉が目でそう教えてくれたばかりだ。
緋羽莉は、ブルーの気持ちをすべて察したように、くすっと笑い、説明しようと口を開きかけたが――
「《再生の炎》は、キズは治せるけど、疲労回復の効果はないの」
アリスが、やさしく、けれどはっきりと先に説明した。
「むしろ体力を消耗するから、あのとき使っていたら、よけいに動けなくなってたわ」
きっと、緋羽莉の名誉を守りたかったんだろう。
『そっか……そう、だよね……』
ブルーはうつむきながら、静かにうなずいた。
緋羽莉の性格を考えれば、理由はすぐにわかるはずだったのに。
一瞬でも疑ってしまった自分が、少しだけ恥ずかしい。
その気持ちを読み取ったのか、緋羽莉はしゃがみこんで、ブルーと目線を合わせ、やさしく笑った。
「気にしなくってもいいよ。わたしのほうこそ、教えてなくてごめんね」
その言葉に、ブルーの心の中で、ぎゅっと固まっていたものが、ふわりとほどけていく。
あたたかくて、やさしい気持ちだった。
アリスが、緋羽莉のことを「いちばんの大親友」だと言う理由が、またひとつわかった気がした。
強くて、やさしくて、まっすぐで。
それでいて、笑うと誰よりも無邪気でかわいらしい。
ただそばにいるだけで、まわりの人を前向きにしてしまう――
そんな特別な輝きを、緋羽莉は自然に放っていた。
『緋羽莉ったら! こんなおチビに、あやまる必要なんてないわよ!』
あいかわらず、ブルーにはきびしいアカネだった。
またさわぎだす前に、緋羽莉はやさしくなだめてから、アカネを自分のウォッチへと戻した。
「ほら、いくよ、ブルー!」
先に歩き出したアリスが、振り返って呼ぶ。
『……ごめんね』
ブルーはサクラモッチーに、最後にそうひとこと声をかけてから、アリスのもとへ走った。
サクラモッチーも、「こちらこそ!」と言いたげに鳴き、ぴょんと跳ねて、逆の方向へ去っていく。
『……』
その様子を、少し離れた桜の木の影から、じっと見つめているものがいた。
それは、走っていくブルーの姿を、いつまでも目で追っていた。




