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ワンダフルコネクト ~アリスとドラゴンのグレイテストロード~  作者: 稲葉トキオ
第2章 アリス・ハートランドと学校の大会

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第34話 ライバル宣言

「おい剣城(つるぎ)緋羽莉(ひばり)が本気じゃねえってのは、どういうことだ?」


 杉山が、いぶかしむように眉をひそめてたずねた。


「言ったままの意味よ」


 玲那は、相変わらずクールな表情のまま、淡々と答える。


「緋羽莉は、見たところ……本気を出せば、この場にいるだれよりも強い。くやしいけど、いまの私よりもね」


 その一言に、まわりの空気がすっと冷えた。


 だれも、すぐには言葉を返せない。


 当の本人である緋羽莉は、きょとんと目を丸くしたあと、照れたように頭をかきながら苦笑いした。


「だれよりも強いって……それは、さすがに大げさだよお」


 謙遜しているようでいて、自分が弱いとは、ひとことも言っていない。


 その自然体な態度が、かえって彼女の底知れなさを感じさせた。


 立っているだけで、空気がやわらぐ。


 それでいて、背筋はすっと伸び、体の芯には揺るがない強さが宿っている。


 緋羽莉は、チカラを誇示することなく、無意識のうちに「強者の余裕」をまとっていた。


 だからこそ、玲那の言葉は冗談ではなく、本心だと誰もが感じ取ってしまった。


「へえ……」


 閃芽は腕を組み、にやりと笑う。


「どういうことなのか、私もちょっと興味あるなあ」


 となりでは、りんごがだまったまま、じっと緋羽莉を見つめている。


 疑っているというより、考え込んでいる表情だ。


 アリスたち、なかよし四人組のつきあいは長い。


 けれど――


 アリスと緋羽莉は幼稚園の年少からの仲。


 りんごと閃芽は、小学校に上がってからの仲。


 そのあいだには、どうしても埋められない距離がある。


 緋羽莉の“本当の強さ”について、そして、彼女が本気を出せなくなってしまった理由について――


 すべてを知っているのは、アリスただひとりだった。


 だからこそ、アリスは、これ以上なにも言い返せず、ただくちびるをかみしめる。


「私の夢は、世界最強のウィザードになることなの」


 玲那は、はっきりとした声で、まっすぐ、迷いなく、小学生男子みたいな夢を堂々と宣言した。


 いや実際、彼女も小学生なのだが。


「そのためにはね、おたがいを高め合えるライバルの存在が、どうしても必要なの」


 そう言って、玲那は緋羽莉を見つめる。


「緋羽莉も、そのひとりよ」


「え?」


 緋羽莉は、自分を指さして、きょとんと首をかしげた。


「わたしが……? ライバル? 友だちじゃなくて?」


「いや、友だちになりたかったのは本当。私より背が高いし、顔もスタイルもいいし、性格も好みだし、前から、ずっと気になってたの」


「え、そう? ありがとう」


 まるで告白でもするかのような言い方に、緋羽莉は少し照れたように笑った。


 コイツもしかして、アリスに風当たりが強いの、ただのやきもちか?


 閃芽をはじめ、その場にいた全員が、同じことを思う。


「そういうわけだから。用はすんだし、私は帰る。またね、緋羽莉」


「え? うん、またね、玲那ちゃん」


 言いたいことだけ言って、くるりと背を向ける玲那。


「ちょっと待った!」


 それを呼び止めたのは、風間と杉山だった。


「お前言ったな。オレたちのバトルが見るにたえない、低レベルだって!」


「言ったけど」


 あっさり返され、クラスのツートップ二人は、カチンときた。


 ここまで言われて、だまっていられるような彼らじゃない。


「だったら、オレたちとここでバトルしろ! ほんとうに低レベルかどうか、見せてやるよ!」


 ふたりは、真正面から食ってかかった。


「イヤよ」


 玲那は、振り返りもせずに言い放つ。


「時間のムダだもの」


「ぐ……!」


 風間と杉山は、くやしそうに奥歯をかみしめた。


 なぜか、それ以上言い返すことができない。


 玲那の背中から、強い拒絶と、刃物のようにするどい威圧感が放たれていたからだ。


 りんごもブルーも、思わず身をすくめる。


 そんななか、閃芽が、ぐいっと緋羽莉の腰をヒジでつついた。


「助けてあげなよ」と言わんばかりに。


 緋羽莉は、その意図にすぐ気づくと、いつものあかるい笑顔で一歩前に出た。


「ねえ、そんなこと言わないで、わたしも玲那ちゃんのバトル、見てみたいな!」


 その瞬間――


 立ち去ろうとしていた玲那の足が、ぴたりと止まった。


 くるりと振り向き、ほほをほんのり赤く染めて、言う。


「緋羽莉が言うなら、しょうがないな」


 コイツちょろいな。


 閃芽は、思わずニヤリと悪い笑みを浮かべた。


「それで、どっちが相手するの? なんなら、二人がかりでもかまわないけど」


 玲那は、さきほどまでのやわらぎを消し、冷たい表情に戻って言った。


 まるで、クラスのツートップなど最初から眼中にない、と言わんばかりの態度だ。


 その空気を破るように、杉山が一歩前に出る。


「二人がかりなんて、そんなセコいことできるか! ここはオレがいかせてもらうぜ!」


 風間は自分がやりたいという思いをぐっとこらえて、相棒に見せ場をゆずった。


 なにしろ自分は、ついさっきアリスとの激闘を終えたばかり。戦力が万全とは言えない。


 そんな状態でバトルしたところで、勝っても負けても後味が悪いだけだ。


『そういやオマエも、トラ使いだったもんな! 格のちがいを見せてやるにゃ、おあつらえむきだぜ!』


 玲那のパートナー、トラの子【アンバーカブ】のコハクが、杉山を見上げてニヤリと笑う。


「決まりね。じゃあ受付にコート使用申請してきてよ。そっちが挑戦してきたんだから」


 玲那がめんどくさそうに言うと、風間がしぶしぶといったようすでステーションの受付へと駆けだした。


『アリス、どうなっちゃうんだろう……』


 ブルーが、不安そうに小さくつぶやく。


「さあね……」


 アリスはコートを見つめたまま答えた。


「でもこの一戦、とくに見のがしちゃいけないよ」


 数分後。


 空きが出たコートで、玲那と杉山のバトルが始まるのだった。



 ☆ ☆ ☆



 バトルステーション右端、6番コート。


 その両端で、玲那と杉山が向かい合う。


 その外周には、アリスたちと風間が、かたずをのんで見守っていた。


 ちなみに注目のアリスのバトルが終わったことで、ギャラリーはまばらに戻っている。


「6番って……最低の数字じゃない」


 玲那は風間をちらりと見て、あきれたように言う。


「せめて1番コートとか、とれなかったの?」


「しょうがねえだろ! いちばん早く取れたのがここしかなかったんだから!」


 風間はムキになって言い返す。


「お前が時間のムダとかいうから、すぐバトルできるようにしてやったんだろ!」


 玲那は軽く肩をすくめ、


「……まあ、いいわ。じゃあ手っ取り早く、使用ワンダーは一体だけ。負けても本気出してませんでした、なんて言いわけはしないでよね」


 そして、するどい視線を杉山に向ける。


「それはこっちのセリフだ!」


 挑発され、杉山のほうも思わずムキになる。


「だいじょうぶかな、あんな調子で……」


 りんごが、心配そうにコートを見つめる。


「まあ彼らは、心がホットなほど、頭がクールになる、ツワモノの素質を持ってるから、むしろ調子いいでしょ」


 閃芽は意味深にメガネを光らせて言った。


「……それで勝てるかどうかは、ともかくね」


「ねえねえ、玲那ちゃん、どんなバトルするのかなあ!」


 緋羽莉は、そんな空気などおかまいなしに、目を輝かせている。


 緊張感に包まれたコートの外で、彼女が楽しそうにしているだけで、周囲の空気がほんの少しだけ明るくなる。


 戦っていなくても、中心にいなくても、緋羽莉はいつだって、その場の温度を変えてしまう存在だった。


「わくわくするね、アリス!」


「うん……」


 アリスは小さくうなずいた。


 さっきは、ずいぶんひどいことを言われた。


 それでも――


「たしかに、興味はあるよ」


 アリスの本音だった。


 足もとでは、ブルーもまた、真剣な表情でコートを見つめている。


「いっておいで、コハク」


『まかせとけ!』


 玲那の合図で、【アンバーカブ】のコハクがセンターサークルへと駆けだした。


「やるぞサンダー、オレとオマエのチカラ、あいつらに見せてやろうぜ!」


『ガオオッ!』


 杉山はウォッチを操作し、雷の猛虎【サンダイガー】サンダーを呼び出す。


 センターサークルで、二体のトラがにらみ合い、バチバチと火花を散らした。


 コハクは、自分よりはるかに体の大きいサンダーを前にしても、まったくひるむ様子がない。


 少し気の小さいブルーは、思わず感心してしまう。


「猛虎対決……はたして勝つのはどっちかな」


 閃芽がそうつぶやいた、その瞬間。――バトルが、幕を開けた。

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