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ワンダフルコネクト ~アリスとドラゴンのグレイテストロード~  作者: 稲葉トキオ
第2章 アリス・ハートランドと学校の大会

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第32話 空色の勝者

「《フェザーバルカン》!」


「《ガード》!」


 アリスは、風間の口の動きを一瞬で読み取り、次にくる技を見抜いて指示を出した。


 バトルが激しさを増すにつれ、アリスの集中力も冴えわたっていく。


 ――ここからが本領発揮。そんな気迫が、その横顔から伝わってきた。


 【エアファルコン】が大きな翼を打ち鳴らす。次の瞬間、無数の羽が弾丸のように放たれた。


 威力もスピードも、先ほどミルフィーヌと戦った【ウイング】の攻撃とは比べものにならない。


 その証拠に、ブルーの体をかすめて地面に突き刺さった羽が、ドガン、ドガンと鈍い爆音を響かせる。


 コートの表面がえぐれ、衝撃の強さをはっきりと物語っていた。


 ブルーは足を踏んばり、両腕を交差させて、真正面からその嵐を受け止める。


 羽の弾丸は一発一発が硬く、重い。衝撃が、骨の奥までズンと響いてくる。


 けど、なんとか耐えられる。


 そう思った、次の瞬間だった。


「《ラプタークロー!》」


『キイーッ!』


 空中から、ファルコンが一気に距離を詰めてくる。


 鋭いツメを生やした両脚を突き出し、一直線に突撃してきた。


 羽の弾幕は、あくまでけん制。本命は、最初からこちらだったのだ。


 猛禽の名にふさわしい(ハヤブサは猛禽類じゃないけど)握力で相手を捕らえ、そのまま切り裂く――まさに必殺の一撃。


 ガキン! ガキン!


『ぐ……ううっ!』


 金属同士がぶつかり合うような音が、コートに響き渡る。


 ブルーは幼いとはいえ、ドラゴンだ。


 その皮膚はもともと硬く、さらにエナを集中させている今は、鎧のような強度を誇っている。


 ファルコンの鋭いツメでも、皮膚を切り裂くことはできない。


 だが、その衝撃は確実に体の芯へと伝わり、腕や全身にじわじわとダメージを蓄積させていく。


 このまま押し切られれば、耐えきれずに負けてしまうだろう。


 ――なのに。


 アリスは、まだ指示を出さない。ただ、静かにブルーを見つめていた。


「どうした? さすがのアリスも、万策尽きたか?」


 風間の背後で、杉山が挑発するように言った。


「そんなわけないでしょ」


 即座に、閃芽が言い返す。


「あれは……“ああいうとき”の顔だよね?」


 りんごも、余裕のある笑みを浮かべる。


 そして、ひときわあかるい声が重なった。


「うん! あれは……チャンスを待ってるときの顔だよっ!」


 緋羽莉は、満開の笑顔だった。


 ただの応援じゃない。ブルーとアリスを、心から信じきっている表情だ。


 そのときだった。


 ツメを受け止めるブルーの体が、ふわりとあわいオレンジ色の光につつまれた。


「来たーっ!」


 ここで、緋羽莉が大ジャンプ。


 ピンチにおちいったとき、ブルーのチカラが高まる特性――〈ブレイブウィング〉が、発動したのだ。


 ブルーの中で、恐怖が勇気へと変わっていく。


 アリスも不敵でステキな笑みを浮かべる。待ってましたと言わんばかりに。


「《スカイナックル》!」


『だあーっ!』


 アリスの声に呼応し、ブルーは交差していた腕を一気に開いた。


 その勢いで、ツメを振り払う。


 反動で、ファルコンの体が後方へ弾かれた。


 ほんの一瞬――だが、確かなスキが生まれる。


 ブルーは、空色に輝く右こぶしを、迷いなく振り抜いた!


 ドゴオッ!


『グエーッ!?』


 腹部に直撃した一撃に、ファルコンは大きく後ずさる。


 大ダメージではあるが、致命傷にはならない。


 さきほどミルフィーヌと戦ったウイングと同じように、攻撃の直前にわずかに後退し、衝撃を逃がしていたのだ。


「《ラプターシュート》だ!」


 ファルコンも、すぐさま反撃に転じる。


 鋭い蹴りが、パンチ直後のブルーを襲った。


 ――だが。


 ブルーは、体をひねり、回転しながらそれをかわす。


「クソッ!」


 風間は思わず悪態をつく。


「いい判断だね」


 閃芽は腕を組み、感心したようにニヤリと笑った。


 ブルーだって、幼いけれどドラゴンだ。頭はいい。


 これまでのバトル経験から、大技の直後はスキが生まれることを理解している。


 だからこそ、最初から一撃必殺を狙わず、次の行動に移れる余力を残していたのだ。


 ブルーは、くるくるとコート上を回りながら、ファルコンとの距離を取る。


「《プリズムボール》!」


 そして、両手から放たれた虹色の光球が、一直線に飛び――


 ファルコンの顔面へと、正確に命中した。


『キイィ……!』


 これは、かなり効いている。


 光球が目に直撃したことで、ファルコンは一時的に視力を奪われたようだ。


 空中でわずかによろめくのが、はっきりと見て取れる。


「もう一発!」


『たあーっ!』


 ブルーは、間を置かずに二発目の光球を放った。


 今度はファルコンの右の翼に命中。


 大きくバランスを崩したが、さすがは格上のワンダー、ぎりぎりで踏みとどまる。


「飛べっ! ファルコン! オレがオマエの目になる!」


『キイィッ!』


 その言葉に応えるように、ファルコンは迷いなく翼を広げ、再び上空へと舞い上がった。


 高度を取られてしまえば、ブルーの手は届かない。


 《プリズムボール》を撃たれても、距離があれば十分に回避できる。


「《フェザーショット》!」


 ファルコンは羽ばたき、上空から無数の羽の弾丸を雨のように降らせた。


 今度は一点集中ではなく、広範囲にばらまく散弾だ。これなら、目が見えていなくても関係ない。


 ヘタな鉄砲、数撃ちゃ当たるというわけだ。


「よけて!」


『う、うん!』


 アリスの指示は、あえてざっくりだった。


 細かく先読みするより、いまはブルー自身の判断力を信じたほうがいい。


 ブルーはその期待にみごとに応え、降り注ぐ羽の雨を次々とかわしていく。


 〈ブレイブウィング〉の効果で、動きは驚くほど軽やかだ。


 空中を跳ねるたび、空色の残像がふわりと残る。


『キィーッ!』


 やがて、上空からファルコンのカン高い鳴き声が響いた。


 視力が回復したと、主人に知らせているのだ。


「よし決めろ! 《トルネードダイブ》ッ!」


『キイィーッ!』


 ファルコンはきりもみ回転を始め、【ウイング】が見せたのと同じく、竜巻そのものと化した。


 上空から一直線に、ブルーめがけて落下してくるその姿は、まるで竜巻の隕石だ。


 轟音と激しい風圧が、ステーション全体を揺るがす。


 ギャラリーは思わず身をすくめる。その中で緋羽莉は、とっさに行動した。


「あぶない……!」


 体の大きい彼女は、左右の腕でりんごと閃芽を抱き寄せ、自分の胸にかばうように引き寄せる。


 その背中は、嵐の前に立ちはだかる盾のようだった。


『うっ……』


 せまりくる竜巻の隕石に、ブルーはおののく。


 さきほどの嵐とは違う。


 これは、はっきりとした敵意を持った風だ。


 身をゆだねてやり過ごせる相手ではない。


 それでも――ブルーは、勇気を振りしぼり、一歩前へ踏み出した。


 うしろにいるアリスの、自信に満ちたまなざしを感じているから。


 いま、ここしかない!


 そう判断したアリスは、腹の底から叫んだ。


「《バタフライエフェクト》!」


 ブルーは両手を前にかざし、竜巻の隕石を正面から受け止めるかまえを取る。


 それを見た瞬間、杉山がハッと目を見開いた。


「あの技は! やべえ、風間!」


 次の瞬間。


 ブルーの手のひらから、やわらかなピンク色の光があふれ出し、突っこんできたファルコンに触れた。


 竜巻はブワッと音を立て、光の粒子へと分解される。


 霧のように拡散し、完全に消え去った。


 同時に、突撃していたファルコンの体からスピードが奪われ、ブルーの目の前で、まるで時間が止まったかのように静止する。


『クエ!? クエ!?』


 ファルコンはなにが起こったんだと言わんばかりに、首をキョロキョロと動かす。


 きょういちばん、スキだらけだ。


「狙いはクチバシ! 《スカイナックル!》」


 アリスは、勝利を確信した笑顔で指示を出した。


『たあーっ!』


 ブルーは右手をぎゅっと握りしめ、エナを集中させる。


 空色のオーラが、こぶしを包みこんだ。


 狙うのは、アリスの言うとおり――


 ミルフィーヌの最後の一撃でヒビが入った、あの黄色いクチバシ。


 ドガーン!


『グエ……!』


 ファルコンは、短い悲鳴をあげる。


 誇り高きクチバシは無残に砕け散り、衝撃が一気に脳を駆け抜けた。


 空色の巨体が、ドサリとコートに倒れ伏す。


 直後、ウォッチが無機質な声で告げた。


『ワンダー二体の戦闘不能を確認。勝者、アリス・ハートランド』


 勝者の名が読み上げられた瞬間――

 ステーションじゅうを揺るがすほどの、どっとした歓声が巻き起こった。


 緋羽莉も、もちろん満面の笑みだ。


「やったあっ!」


 よろこびをおさえきれず、左右の腕の中にいたりんごと閃芽を、ぎゅうっと胸に抱き寄せる。


 その表情は、まるで自分のことのようにうれしそうで、誇らしげだった。

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