表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワンダフルコネクト ~アリスとドラゴンのグレイテストロード~  作者: 稲葉トキオ
第2章 アリス・ハートランドと学校の大会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/45

第30話 空を制すもの

「《音波砲》!」


『ワオーーーン!』


 ミルフィーヌは大きく胸いっぱいに息を吸いこみ、力のかぎり吠えた。


 空気そのものを震わせるような音の衝撃波が、リング状にひろがっていく。


 上空のウイングは、すぐさま羽ばたいて回避しようとした。


 だが、音波砲は一点を狙う攻撃ではない。


 広い範囲をつつみこむ衝撃が、右の翼をかすめ――


『クエッ……!』


 ウイングは体勢をくずし、空中で大きくバランスを崩した。


 羽ばたきが乱れ、顔が苦しそうにゆがむ。


「負けるな! 《トルネードダイブ》ッ!」


 風間は気合のこもった声とともに、ぐっとこぶしを突きだした。


『クエーッ!』


 ウイングは大声をあげ、そのまま体勢の崩れを利用する。


 ギュルギュルときりもみ回転をはじめ、やがてその姿は小さな竜巻のようになった。


 回転しながら、一直線。


 ミルフィーヌめがけて、猛スピードで突進してくる。


(速い……!)


 アリスは一瞬で判断した。


 この速度では、完全にかわすのはむずかしい。


「《パウシールド》!」


 ミルフィーヌはくわえていた剣を放り捨て、右前足を前に突きだす。


 ぽんっ、と目の前にピンク色の肉球型バリアが展開された。


 次の瞬間――


 ドムッ!


 竜巻の弾丸と化したウイングが、肉球バリアに激突する。


 ふわりとした見た目とは裏腹に、バリアは強烈な衝撃を受け止めた。


 だが――


 ぐぐぐっ、と押しこまれる。


 弾力で受け止めてはいるものの、威力が強すぎる。突き破られるのは時間の問題だ。


「あ、これって……きのうのときと同じだ!」


 緋羽莉が、はっとしたように声をあげた。


 思わず身を乗り出し、目を輝かせる。


 そう、きのうの昼休み、石切の【ガンゴーレム】が放った岩石の弾丸を受け止めた、あのときと同じ状況。


 なら、この先の展開は――


「やべーぞ、風間!」


 杉山が、あせった表情で叫んだ、その瞬間。


「《ワンダフルリフレクト》!」


『ワオーン!』


 肉球バリアが、ぱあっとピンク色に輝いた。


 ばいーんっ!


 強烈な反発力が生まれ、ウイングの体が弾き返される。


 ドゴーンッ!


 高速で突っこんできた反動を倍返しされたウイングは、ステーションの壁にそのままたたきつけられ、めりこんだ。


 ギャラリーから、どよめきとおどろきの声がいっせいにあがる。


 ムリもない。肉球にはじかれてふっとばされるなんて、わけがわからないもの。


 ピピッ――双方のスマートウォッチが、ウイングの戦闘不能を告げる。


「よっし!」


 アリスは思わず、小さくガッツポーズをした。


『ワン!』


 ミルフィーヌも誇らしそうに鳴き、しっぽをぶんっと振る。


「やったあ! アリス! ミルフィーヌっ!」


 緋羽莉は満開の笑顔で、大きく両手をひろげた。


 自分のことのようにうれしそうで、その目は宝石のようにきらきらと輝いている。


 りんごは胸の前で手を合わせ、閃芽は腕組みをしたまま、満足そうにほほえんでいた。


「やられたな、風間。どうだ、アリス、強えーだろ?」


 杉山が、にししっと笑いながら声をかける。


 風間はウォッチを操作し、壁にめりこんだままのウイングを収納した。


 そして、ふっと楽しそうに笑う。


「……そうだな。お前が負けるわけだ。おもしろくなってきたぜ!」


 その目には、くやしさよりも、燃えるような闘志が宿っていた。


 風間はふたたびウォッチに手を触れる。


 二体目のワンダーが、コートの中央に呼び出された。


『キイィーーーッ!』


 ステーションじゅうに響きわたる、カン高い鳴き声。


 現れたのは、雲のように白い体に、空色の雄々しい翼。


 雷を思わせる、鋭く黄色いクチバシを持つハヤブサ――【エアファルコン】。


 〈空の支配者〉の異名を持つ、大型ワンダーだ。


『ワウッ……』


 その鋭い眼光に、ミルフィーヌは思わず一歩ひるんだ。


 エアファルコンの特性のひとつ、〈威圧〉。


 格下のワンダーの攻撃力や動きを鈍らせる効果がある。


 その影響を受けているということは――純粋な戦力差が、そこにあるという証。


 だが、しかし。


『ワオーン!』


 ミルフィーヌは大きく吠え、気合で威圧を振り払った。


「へえ、やるじゃん」


 風間がニヤリと笑う。


 いっぽう、ブルーはおどろいていた。


 いまウォッチの中にいる自分でさえ、エアファルコンの放つ威圧に体がすくんでいるというのに、ミルフィーヌはまったく動じていない。どういうことだろう?


 そういえば、これまでのバトルを思い返してみても、ミルフィーヌが相手をおそれて後ずさりしたことは、一度もなかった。


 大きくて、強くて、見るからにこわそうなワンダーを前にしても、いつだって前を向き、歯をくいしばって立ち向かっていた。


(もしかして……これも、特性のひとつなのかな?)


 ブルーがそう考えた、そのとき。


「〈勇猛果敢〉だよ」


 アリスが、まるで心の中をのぞいたかのように言った。


「精神に影響を与える技や特性が、効きづらくなるミルフィーヌの特性。だから、ああいう威圧もはね返せるんだ」


 ブルーはなるほど、と納得した。


 【ワルウルフ】や【ガンゴーレム】といった、自分よりはるかに大きくて強いワンダーたちに、ミルフィーヌが臆することなく挑んでいけた理由。


 それは、ただ勇気があるからじゃない。彼女自身が持つ、生まれついての強さだったのだ。


「じゃあ行くぜ! ファルコン! 《ストームアタック》だ!」


『キイーッ!』


 風間の号令とともに、エアファルコンは大きく翼をひろげた。


 一度、二度と力強く羽ばたくたびに、空気がうねり、コート全体をつつみこむような激しい風が巻き起こる。


 突風は観戦スペースにまで吹き荒れ、ギャラリーたちは吹き飛ばされまいと必死に体を支えた。


「きゃっ……!」


 とくに脚の長い緋羽莉は、スカートを押さえながらふんばりつつも、視線だけはミルフィーヌから離さない。


 嵐はやがて一本の巨大な渦となり、一直線にミルフィーヌへと襲いかかった。


『ワン!』


 ミルフィーヌは持ち前のすばしっこさで、横へ跳んでかわそうとする。


 だが、嵐は逃がさない。


 まるで見えない手に引き寄せられるかのように風が絡みつき、足取りを奪っていく。


『ワオーーーン!?』


 次の瞬間、ミルフィーヌの体は宙へと持ち上げられ、ぐるぐると回転しながら巻き上げられた。


 上下も左右もわからないまま、洗濯機の中に放りこまれたかのように翻弄され――


 ドサッ!


 重たい音とともに、コートへたたきつけられる。


 嵐によるダメージも重なり、ミルフィーヌの体力は、まさに風前の灯火だった。


「ミルフィーヌ!」


 アリスが思わず叫ぶ。


 緋羽莉もりんごも、胸の前で手をぎゅっとにぎりしめ、かたずをのんで見守っていた。


『ワウ……』


 ミルフィーヌは痛みに顔をゆがめながらも、ふらつく足で立ち上がる。


 小さな体で、それでも最後まで戦おうとするその姿に、ギャラリーのあちこちから思わず声がもれた。


「がんばって……ミルフィーヌ……!」


 緋羽莉はというと、感情があふれすぎて、黄色いひとみをうるませながら両手を胸に当てている。


「ちっこいのに、ガッツあるのな!」


 風間も感心したように口元をゆるめた。


 そして大仰なポーズで右手をバッとつきだし、叫んだ。


「ならこっちも、全力で応えなくっちゃなあ! 《グライドインパクト》!」


 エアファルコンは高く舞い上がり、そこから一気に加速し、突撃する。


 空を切り裂くような速度。


 さっきのウイングの《グライドストライク》や《トルネードダイブ》をはるかに超える破壊力だ。


 これはさすがに、《パウシールド》で防ぐのはムリ。アリスは瞬時に判断した。


 なら、ミルフィーヌに残ったチカラを、この一撃にぜんぶぶつけてやる!


「《ワンダフルストライク》!」


 ミルフィーヌはコートに落ちていた剣をくわえ上げ、刀身いっぱいにピンク色の光をまとわせる。


 そしてせまりくるエアファルコンの、雷のようにするどいクチバシめがけて、全身全霊の一撃を振りぬいた!


 ドガァーーーン!


 耳をつんざく轟音と、地面を揺らす衝撃。


 ギャラリーたちは思わず目や耳をふさぎ、悲鳴にも似た声をあげる。


 ただ、アリスと風間、そして緋羽莉と杉山だけは、微動だにせず、その先を見すえていた。


 ややあって――


 爆煙の中から、エアファルコンがよろめきながら飛び出してくる。


 同時に煙が晴れ、コートの中央に倒れ伏すミルフィーヌの姿があらわになった。


 場が、しーんと静まり返る。


 そして――


 アリスと風間のスマートウォッチが、ミルフィーヌの戦闘不能を告げた。


 これで戦績は一勝一敗。


 勝負の行方は、二番手のブルーにすべて託された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ