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ワンダフルコネクト ~アリスとドラゴンのグレイテストロード~  作者: 稲葉トキオ
第2章 アリス・ハートランドと学校の大会

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第25話 竜虎激突

『ぷはあ~……勝った……』


 ブルーはコートの上にへたりこみ、大きく息をついた。


 そのようすを見た瞬間、アリスの声が飛ぶ。


「気が早いよ、ブルー! まだあと一体、残ってるんだから!」


『――っ! そ、そうだった!』


 ブルーはハッとして、あわてて立ち上がった。


 この予選三回戦から、使用できるワンダーは二体。


 アリスの手持ちはブルーとミルフィーヌ。


 いっぽう、【エレキャット】を失った杉山も、まだ一体残している。


 つまり――バトルは、まだ終わっていない。


(まだ、気を抜いちゃダメだ……!)


 ブルーは自分に言い聞かせ、ぐっと気合を入れ直した。


 正直、体はもうクタクタだ。


 けれど、控えているミルフィーヌは、もっと消耗している。


(ぼくが……がんばらないと)


「さすがアリスだな!」


 杉山はくやしそうにするどころか、ニッと笑って言った。


「パートナーはボロボロだってのに、まさかこっちが先手を取られるとは思わなかったぜ!」


 その口ぶりは、負け惜しみではなく、素直な称賛だった。なかなかにさわやかな男子である。


 ブルーも、ガキ大将のカジラとはえらいちがいだなあと、杉山にちょっと好感を持った。


「それはどうも!」


 アリスは胸を張り、腕を組んで応じる。


「だったら――こっちも、マジのマジでいくしかねえよな!」


 杉山は左手を高くかかげた。


「出てこい! サンダー!」


 次の瞬間。


 ウォッチからほとばしる雷とともに、二体目のワンダーが姿を現した。


『ガオオオオッ!』


 雷鳴のような咆哮。


 【エレキャット】をはるかに上回る電気を全身にまとい、黄色い体毛には紫色の稲妻のようなシマ模様。


 大きく、たくましく、堂々たるトラ型ワンダー――その名も【サンダイガー】。


『うっ……』


 ブルーは、思わず一歩ひるんだ。


(強い……)


 ひと目でわかる。


 まちがいなく、いままで戦ってきたワンダーの中で、いちばんの強敵だ。


 しかも――


「ぜんぜん、無キズだね……」


 りんごが、不安そうにつぶやく。


 その言葉どおり、サンダイガーはキズひとつなく、疲れているようすもまるでない。


 こちらは、バトル前からボロボロのヘロヘロだというのに。


「たしか杉山くんも、シードじゃなかったから、アリスと同じで二試合やったはずだよね?」


 緋羽莉が首をかしげる。


 閃芽がメガネをクイッと直して答えた。


「私はアリスの応援してる合間に、ほかのコートの試合チラ見してたけど、彼、二試合ともオール一撃KOで終わらせてたよ。あれじゃ疲労も温存もあったもんじゃないね」


「そ、そんな……」


 りんごの顔色が、さらに青くなる。


 コートに立つブルーは、肩で息をしていた。


 ただでさえ限界なのに、技を無効化する《バタフライエフェクト》を使ったことで、消耗は決定的だ。


 きっと、もう大技をくりだす体力なんてないだろう。


 それは、サンダイガーと向き合っているブルー自身が、いちばんよくわかっていた。


 視界がぼやけ、足がふらつく。ちょっとでも気を抜いたら、倒れてしまいそうだ。


 きっとぼくは、勝てないだろう。アリスだってきっとそう思ってるはずだ。


 だって背中ごしでも、アリスのあせりが伝わってくるんだもの。


 もうパンチもプリズムも出すチカラもない。だったら、ぼくのやることはひとつ。


「いくぜ! 《イナズマダッシュ》だ!」


『ガオオッ!』


 サンダイガーが駆けだす。


 ジグザグに軌道を変えながら、一気に距離を詰めてくる。


 スピードも迫力も、エレキャットとはケタちがいだ。


「《ガード》!」


 アリスの指示で、ブルーは腕を交差し、必死に踏んばる。


『ぐ……ああっ!?』


 衝撃。


 ブルーの体は軽々と宙を舞い、受け身も取れずにコートへ叩きつけられた。


「ブルー! だいじょうぶ!?」


『だ……だいじょうぶ……』


 震えながら起き上がるブルー。


 どう見ても、ぜんぜんだいじょうぶじゃない。


 けれど、ブルーは強がってそう言った。


 ――強がるのは、慣れてる。


 ドラゴピアでも、お母さん竜を心配させないよう、どんなにいじめられても強がっていた。


 でも、いまの強がりはちがう。これは、希望をつなぐための強がりだ。


 そう、ぼくのやることはひとつ。


 できるだけこのバトルを長引かせて、二番手のミルフィーヌを休ませることだ!


 だから、まだ倒れるわけにはいかない!


「まだ立てるか! 《サンダーボルト》!」


 サンダイガーの体から放たれた電気が、いったん空へ昇り――


 次の瞬間、落雷のようにブルーへと降りそそいだ。


『うわああああ!』


 感電し、悲鳴をあげるブルー。


「ブルー!」


 アリス、緋羽莉、りんごの声が重なる。


 放電が終わると、ブルーはぷすぷすと煙を上げ、ばたりと倒れた。


「ブルー、戦闘不能……」


 総合審判のマミ先生が、判断を下そうとした、そのとき――


「待って、先生!」


 アリスが叫んだ。


「ウォッチが戦闘不能をアナウンスしてない! まだブルーは戦える!」


「で、でもね、アリスちゃん……」


 マミ先生は困ったように眉を下げる。


「これ以上はキケンだと、先生は思うんだよ……」


 教師として、児童とパートナーのワンダーの命を守る責任がある。


「……っ」


 アリスは歯をかみしめた。


 バトルを続行したいのはやまやまだが、審判の言うことは絶対だ。それが英国淑女の条件。


 ブルーを収納しようと、泣く泣くウォッチに手を伸ばした、その瞬間――


『ま……まだ……』


 焦げた体を引きずりながら、ブルーが、ふたたび立ち上がった。


「ブルー……!」


 アリスと、親友三人娘の声が重なる。


 緋羽莉とりんごは、今にも泣きだしそうだ。


「マミ先生、そのチビ……立ったぜ」


 杉山が、少しうれしそうに言った。


「バトル続行で、いいよな?」


「……うーん」


 マミ先生はしばらく迷い、やがてうなずいた。


「でも、次に倒れたら、今度こそ止めるからね~」


「よっしゃ!」


 杉山はこぶしを鳴らす。


「チビ! ブルーっていったな? いいガッツしてるじゃねえか! オレとしてもこのままじゃ終われねえ! もっともっと、バトルを楽しもうぜ!」


 杉山はノリノリで宣言した。


 その言葉に、ブルーの胸が熱くなる。


 二回戦のアリスと緋羽莉の、ミルフィーヌとアカネのバトル。


 いままでブルーが体験してきた、一方的にいじめるでもなくいがみあうわけでもない。


 ぶつかり合い、認め合い、心を通わせる戦い。


 そのすばらしいバトルを、ただウォッチの中で見ていることができなくて、ブルーはとてもはがゆくて、もどかしい思いをしていた。ぼくも、あんなふうなバトルをしてみたいと。


 そしていま、そのときがおとずれようとしていた。


 目の前の少年、杉山は、ブルーのことを気に入り、認めてくれている。


 そんな相手となら、ぼくもミルフィーヌたちのような、すばらしい(ワンダフルな)バトルができる!


 こんなにうれしいことなんて、ない!


『うん! やろう! サンダー! スギヤマくん!』


『ガオッ!』


【サンダイガー】のサンダーも、うれしそうに吠えた。


 ブルーの中には、いままでに感じたことのないチカラがわきあがっていた。


 ものすごく疲れているはずなのに、元気なときより元気になっている気がするのだ。


 もう時間かせぎなんて関係ない! ただただ全力で、このバトルを楽しみたい!


 その想いを感じ取ったように、アリスも顔を上げた。


「そうだね、ブルー」


 キリッと前を向き、はっきりと言う。


「わたしも、全身全霊でこたえるよ!」


 ギャラリーが沸き立つ。


 竜と虎の激突は、ここからさらに大きなうねりとなって、加速していくのだった。

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