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ワンダフルコネクト ~アリスとドラゴンのグレイテストロード~  作者: 稲葉トキオ
第1章 アリス・ハートランドと三人の親友

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第15話 天野博士のたのしい実験

『よ、よろしくおねがいします……』


 アリスの腕の中のブルーは、おそるおそる天野博士に返事をした。


 この博士も悪い人じゃなさそうだけど、どうも危険なニオイがするのだ。


「ああ、いいですね! 空色の体なんてめずらしい! まだ子どもなのに、二足歩行がしっかりできていて、スプーンもうまくあつかえるというのもポイント高い! あとこんなにぷにぷになのに、筋力も強度もある! さらに……」


「はいはい、そこまでにしてくださいねー」


 ブルーに対して、メガネをキラめかせよだれをたらしながら顔を近づけ、まくしたてるように絶賛する天野博士を、いっしょにいた助手のオデコが白衣をひっつかんで制止した。


 ブルーは目をまんまるにしたまま、ドキドキしていた。


 ざんねんながら、危険なニオイがするという直感は当たっていたようだ。


「さっきのバトル、見てたんだね」


 閃芽がまたあきれたように言った。実際、さっきの言動には心の底からあきれているだろう。


「ええ、まあ、最後の部分だけですけどね。せっかくいいところだったので、このタイミングでお邪魔するのはどうかなー、と思っちゃって」


 たしかに、バトルの最中にあんなふうに近づかれたら、ブルーはたまらなかっただろう。


「それで、アリスちゃん。きょう一日、ブルーくんをお貸しいただいても……」


「ダメです」


 アリスはきっぱりと即答した。


 ブルーは心からうれしいと思った。あらゆる意味で。


「じゃあせめて、バトルを通じてデータだけは取らせてくださいよう」


 天野博士はすがるようにたのみこんだ。


 その姿を見て全員、その態度はオトナとしてどうなんだ、と思わずにはいられなかった。


「まあ、それが目的で連れてきたようなもんだし、やってあげてよ」


 閃芽は、だだっ子をあやすような口調で言った。


 ふたりは姉妹らしいけれど、これじゃどっちがお姉さんだかわからない。


「わたしはいいよ。ブルーはどう?」


『ぼくも……バトルなら、いいよ』


 ブルーは少しだけためらいがちに答えた。


 この博士にデータを取られるというのはいい気はしないけど、強くなるためにバトルを重ねるのは悪いことじゃない。


「おっほお! ありがとうございます! ささ、オデコちゃん、お相手のほう、よろしくおねがいしますねえ!」


「はいはい……」


 天野博士は興奮しながら、となりの観察室にしゅばっと入っていった。


 閃芽とりんごもそのあとについていって、試験室には、対戦相手のオデコと、間近で観戦を希望した緋羽莉だけが残った。


「それでは、今回はブルーの能力テストということで、使用ワンダー一体のみのバトルとします。オデコちゃん、できるだけブルーのチカラのすべてを引き出すよう、つとめるように!」


 観戦室のマイクから、天野博士がえらそうに宣言した。いや、実際この研究所でいちばんえらい人なんだけど。


「はいはい。ったくあのヒトは、めずらしいワンダーを見ると、すぐこれだ」


 オデコは実にうんざりした顔でためいきをついた。


『ご、ごめんなさい、ぼくのせいで』


 ブルーは自分が原因でオデコをこまらせたのだと思い、あやまった。


 どうもいじめられっ子時代が長いせいか、あやまりぐせがついているようだ。


「んーん、気にしなくっていいのよ。この研究所、ワンダーやワンダーが好きな子どもたちは、いつだって大歓迎だから」


 オデコはブルーが責任を感じないよう、にっこり笑顔でフォローした。


 そのかいあって、ブルーはちょっと気持ちが軽くなった。


 子どもたちは大歓迎、だからオデコも子どもの相手をするのがうまいんだろう。


「だからって、手加減はしないからね。私だってこれでも、むかしはそれなりの腕っこきだったんだから」


 オデコは白衣の袖をまくって、気合を入れた。


「さあ出ておいで! コータロー!」


 オデコは白衣の胸ポケットからスマートフォンを取り出し、目の前にかざしてパートナーを呼び出した。


 現れたのは、銀色に光るボディを持つ、ハムスター型ロボット、【ロボ・ロフスキー】だ。


 サイズはブルーやミルフィーヌよりさらに小さく、2~30センチくらいといったところ。


『おう……』


 ブルーはおどろいたような興奮したような、複雑な気持ちで声をあげた。


 ブルーも、機械(カラクリ)に関する知識は持っている。


 しかし目の前のメカハムスターからは、機械のような"物"ではない、れっきとした生命の息吹を感じるのだ。


 それは、お昼休みにミルフィーヌと戦った石人形、【ガンゴーレム】と同じように。


 自分が言うのもなんだけど、ワンダーってほんとうにふしぎな生きものなんだなと、あらためて思った。


「それじゃ所長さま、開始の合図をおねがいあそばされるでしょうかー?」


 オデコは、皮肉たっぷりの口調で言った。


「はいはーい、それではバトル、スタート!」


 天野博士はノリノリで開始宣言をした。


「ではまず、耐久性から見せてもらおっかな! 《メカラビーム》!」


 ロボ・ロフスキーのコータローは、顔のモニターに表示されている目から、ビームを発射した。


『うわっ!?』


 まさに、目にもとまらぬ速さ。ビームはブルーの胴体を直撃して、その体をひっくり返した。


「ブルー!」


『だいじょうぶ! ちょっとびっくりしただけ!』


 アリスが呼びかけると、ブルーはすぐに立ち上がった。


「ダメージポイントは2……と。ほとんど効いてませんねえ。オデコちゃん、マジメにやってますかー?」


 観察室のマイクから、天野博士のヤジが飛んだ。


「やってますぅー! まだエンジンがかからないだけですぅー!」


 オデコはぶーたれた顔で、窓の向こうの博士に向かって叫んだ。


 子どものケンカか、と子どもたちは思った。


「今度はこっちの番だよ! 《ダッシュアタック》!」


『うん!』


 ブルーはコータローに向かって走り、体当たりをしかける。


「回避行動!」


『チチッ』


 コータロー、それを上回る反応と速さで、体当たりをよけた。


 完全に動きを読まれているようだ。


「走力はかなりのもの……でもまだまだ、動きが単調で予備動作も改善の余地あり……と」


 観察室で、天野博士がぶつぶつつぶやきながら、コンソールに観察結果を打ちこんでいる。


「反撃! 《メカラビーム》!」


 ふたたびコータローの目からビームが発射された。


 ブルーがブレーキをかけ、反転しようとしたところに命中。しりもちをつかされた。さっきよりダメージは大きいようだ。


 オデコの言ったとおり、ロボ・ロフスキーはメカのワンダーなだけに、ほんとうの意味でエンジンがかかりはじめたのだろう。


 けれど、ダメージが大きいのは、それだけが理由じゃなかった。


(さっきより、ずっと痛い……そうか、意識して体にチカラを入れてないと、防御力がはたらかないのか……!)


 ブルーはいまのダメージで、自分の、ワンダーの体のメカニズムに気づいた。


 ワンダーの体には、ふしぎな生命エネルギー……略してエナというものが流れている。


 ワンダーはこのエナを消費・利用することで、いろいろとふしぎなチカラを使えるわけだ。


 エナは、血液のようにワンダーの全身をめぐっており、意識することで肉体の強度を高めてくれる効果もある。


 ブルーがいままで、お母さん竜から受け継いだチカラを発揮できなかったのは、ひとえに自覚のなさのせいで、この意識ができていなかったためだった。


 つまり思いひとつで、ワンダーのチカラは強くも弱くもなるんだと、ブルーはこのとき、はじめて完全に理解できたのだ。


 そして、そのチカラをより高めてくれる存在が、ウィザードなのだということも。


『アリス……ぼく、もっと、やれるような気がしてきた!』


 ブルーはぎゅっとこぶしをにぎりしめて、生まれてはじめて自信に満ちた顔になった。

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