第二十四話「海賊との死闘、ルナの予知」
海賊たちが、怒涛のように襲いかかってくる。
「うおおおお!」
最初の一人が、サーベルを振り下ろす。
俺は、剣で受け止める。
ガキン!
衝撃が、腕に伝わる。
「くっ……重い!」
「へへ、いい剣持ってんじゃねえか!」
海賊が、連続攻撃。
左、右、上。
必死で、防ぐ。
グスタフの訓練が、役に立っている。
「【イースト・バインド】!」
魔法で、海賊の足元を固定する。
「なっ!? 動けねえ!」
「今だ!」
剣を振るう。
海賊が、倒れる。
「やった……」
だが、次々と新手が来る。
「ケン、後ろ!」
ダミアンの声。
振り返ると――
別の海賊が、背後から襲いかかってきた。
避けられない――
「ケン、右に転がって!」
ルナの声。
反射的に、右に転がる。
海賊の刃が、空を切る。
「くそ、動きやがった!」
「【イースト・ウェポン】!」
自分の剣に、粘着性の膜を張る。
そして、海賊の武器に触れる。
ガキン!
武器が、絡み取られた。
「何だ、これは!?」
「今だ!」
剣を振るう。
海賊を、打ち倒す。
「ナイスだ、ケン!」
ガレスが、豪快に笑いながら戦っている。
彼は、一人で三人の海賊を相手にしている。
「このくらい、朝飯前だ!」
ガレスの斧が、唸る。
海賊たちが、次々と倒れていく。
「さすがだ……」
ロイドも、圧倒的だ。
剣の腕は、騎士団副団長の名に恥じない。
「遅い!」
海賊の攻撃を、軽々とかわす。
そして、反撃。
一撃で、海賊を沈める。
「こんなもんか!?」
クラリスは、魔法で支援している。
「【アイスランス】!」
氷の槍が、海賊たちを襲う。
「ぎゃあ!」
「【ライトニング】!」
雷が、複数の海賊を撃つ。
「やるじゃねえか、魔法使い!」
海賊のリーダーが、クラリスに向かう。
「だが、魔法使いは接近戦に弱いだろ!」
「させるか!」
ダミアンが、リーダーを阻む。
「相手は、俺だ」
「へえ、偉そうな口を利くじゃねえか」
リーダーが、大剣を構える。
「だが、この海で二十年生きてきた俺を、舐めるなよ!」
リーダーの大剣が、ダミアンに迫る。
速い!
ダミアンが、魔法で防ぐ。
「【アースウォール】!」
土の壁が、大剣を受け止める。
だが――
ガシャン!
壁が、砕けた。
「な、何!?」
「魔法なんざ、通用しねえ!」
リーダーの大剣には、魔法を無効化する力があるようだ。
「ダミアンさん、危ない!」
俺は、ダミアンの援護に向かう。
だが――
「ケン、待って!」
ルナが、俺の腕を掴む。
「行っちゃダメ!」
「でも、ダミアンさんが――」
「大丈夫。ダミアンさんは、自分で何とかする」
ルナの目が、光る。
「それより、ケン。三秒後、右から海賊が三人来る」
「三人!?」
「うん。準備して」
ルナの言葉通り――
三秒後。
右から、三人の海賊が襲いかかってきた。
「おらぁ!」
「死ねぇ!」
だが、俺は準備していた。
「【イースト・ストーム】!」
発酵の嵐が、三人を包む。
「うわっ! 何だこれ!」
「目が、目が!」
視界を奪われた海賊たち。
そこへ、ガレスが突撃する。
「いただき!」
三人まとめて、倒す。
「ナイスアシストだ、ケン!」
「ルナのおかげです!」
ルナが、また叫ぶ。
「ケン、上から! マストに海賊が!」
見上げると――
マストの上に、海賊が弓を構えていた。
狙いは――俺だ。
「くそ!」
矢が、放たれる。
避けられない――
その瞬間。
「【ウィンドバリア】!」
ダミアンの魔法。
風の壁が、矢を弾く。
「ケン君、油断するな!」
「すみません!」
「ロイド、マストの狙撃手を!」
「了解!」
ロイドが、短剣を投げる。
完璧な精度。
短剣が、狙撃手に命中する。
「ぎゃあ!」
海賊が、海に落ちる。
「よし、こっちは片付いた!」
ロイドが、俺たちに合流する。
「だが、まだリーダーが残ってる」
見ると、海賊のリーダーとダミアンが、激しく戦っている。
「くそ、こいつ、強いな!」
リーダーの大剣が、ダミアンを追い詰める。
「もう、魔法は使えねえぞ!」
「ならば、剣で!」
ダミアンが、腰の剣を抜く。
だが――
ダミアンは魔法使いだ。
剣の腕は、そこまでではない。
「あははは! 貴族様が剣を振るうなんてよ!」
リーダーの大剣が、ダミアンの剣を弾き飛ばす。
「しまった!」
「終わりだ!」
リーダーが、止めを刺そうとする――
「させない!」
俺は、全速力で駆ける。
「【イースト・エクスプロージョン】!」
リーダーの足元で、発酵液を爆発させる。
ドカン!
「ぐわっ!」
リーダーが、バランスを崩す。
「今だ、みんな!」
ロイド、ガレス、そして俺。
三人で、同時に攻撃する。
「うおおおお!」
三つの剣が、リーダーを襲う。
リーダーは、必死で防ぐ。
だが――
「ルナ、今!」
ルナが、手を掲げる。
「【フラッシュ】!」
眩い光。
リーダーの目が、眩む。
「ぐっ! 目が!」
「決めろ、ロイド!」
「任せろ!」
ロイドの剣が、リーダーの大剣を弾く。
そして――
ガレスの斧が、リーダーの武器を叩き落とす。
最後に、俺の剣が――
リーダーの首筋に、当てられる。
「……負けた」
リーダーが、膝をつく。
「参った。殺せ」
「殺さない」
俺は、剣を下ろした。
「ただし、条件がある」
「条件……?」
「情報が欲しい。この海域のこと、そして――」
俺は、リーダーを睨む。
「黄昏の会のことを」
「!」
リーダーの顔が、変わる。
「黄昏の会を、知ってるのか……?」
「知ってる。お前たちも、関係があるんだろう」
「……ああ」
リーダーが、観念したように頷く。
「俺たちは、奴らに雇われてる」
「雇われて?」
「ああ。西の大陸へ向かう船を、襲撃しろとな」
「やはり……」
ダミアンが、険しい顔をする。
「黄昏の会は、西の大陸への渡航を妨害している」
「そうだ。奴らは、黄昏の神殿を独占したいらしい」
リーダーが、立ち上がる。
「だが、俺は知らなかった。お前たちが、こんなに強いとは」
「他の海賊も、黄昏の会に雇われてるのか?」
「ああ。この海域には、五つの海賊団がいる。全部、黄昏の会の手下だ」
「五つ……」
「覚悟しとけ。お前たちは、まだ四回襲われる」
リーダーが、不敵に笑う。
「次は、もっと強い奴らが来るぞ」
「……わかった」
俺は、リーダーを見た。
「お前たちを、見逃す。だが、二度と襲うな」
「いいのか?」
「ああ。俺たちは、無駄な殺しはしない」
「……へっ」
リーダーが、笑う。
「変わった奴らだな。だが、気に入った」
「船員たちを連れて、去れ」
「ああ」
リーダーが、倒れた海賊たちを起こす。
「おい、行くぞ。負けだ」
「頭……」
「文句言うな。命があるだけ、ありがたいと思え」
海賊たちは、自分たちの船に戻っていく。
「最後に、一つ教えてやる」
リーダーが、振り返る。
「西の大陸には、黄昏の会の大きな拠点がある」
「拠点……」
「ああ。『黒鉄の要塞』ってやつだ」
リーダーの目が、真剣だ。
「気をつけろ。お前たちが向かう先は、地獄だ」
そう言って、海賊船は去っていった。
戦闘が終わり、甲板を片付ける。
「怪我人は?」
「船員が二名、軽傷。それ以外は無傷です」
「よし」
ダミアンが、頷く。
「みんな、よく戦った」
「ダミアンさん、大丈夫ですか?」
「ああ。君のおかげで助かった」
ダミアンが、俺の肩を叩く。
「ありがとう」
「いえ」
「それと――」
ダミアンが、ルナを見る。
「ルナ、君の予知能力、素晴らしかった」
「えへへ」
ルナが、照れる。
「役に立てて、嬉しいです」
「君がいなかったら、もっと被害が出ていた」
ロイドも、ルナを褒める。
「良い仕事だったぞ」
「ありがとうございます!」
ルナが、嬉しそうに笑う。
その夜。
俺は、一人で甲板にいた。
海賊の言葉が、頭から離れない。
「黒鉄の要塞……」
黄昏の会の拠点。
どれだけ危険な場所なのか。
「ケン」
ルナが、隣に来た。
「また、考え事?」
「ああ」
「大丈夫。あなたなら、乗り越えられる」
ルナが、微笑む。
「予知で見たの。あなたは、最後まで諦めない」
「……ありがとう」
「でもね」
ルナの表情が、曇る。
「一つだけ、見えなかったことがある」
「見えなかった?」
「うん。黄昏の神殿の中」
ルナの声が、震える。
「あそこだけ、真っ暗で何も見えない」
「それは……」
「きっと、強力な魔法で守られてるの」
ルナが、俺の手を握る。
「だから、怖い」
「大丈夫。みんながいる」
俺は、ルナの手を握り返した。
「一人じゃない」
「……うん」
ルナが、少し安心したように笑う。
「あなた、優しいのね」
「そうかな」
「うん。だから、みんながあなたを慕うの」
ルナが、空を見上げる。
「あなたには、人を惹きつける力がある」
「そんな大げさな……」
「大げさじゃない」
ルナが、真剣な顔で言う。
「あなたは、英雄になる。そういう未来が見える」
「英雄なんて、柄じゃない」
「でも、なるの」
ルナが、微笑む。
「そして、大切な人たちのもとに帰る」
「……そうなるといいな」
二人で、しばらく星を見る。
穏やかな時間。
嵐の前の、静けさ――
翌朝。
船は、順調に進んでいた。
「このペースなら、あと一ヶ月半で西の大陸だ」
トーマスが、海図を確認する。
「ただし、海賊に襲われなければ、だが」
「また来ますかね」
「来るだろう。リーダーが言ってた。あと四回、だったか」
「準備しておきます」
その時、見張りが叫んだ。
「陸地だ! 前方に島が見える!」
「島?」
全員、前方を見る。
確かに、小さな島が見える。
「あれは……」
トーマスが、海図を確認する。
「『蛇の島』だ」
「蛇の島?」
「ああ。毒蛇が大量に生息する、危険な島だ」
トーマスの表情が、険しい。
「寄港は避けた方がいい」
「でも――」
ミレーユが、望遠鏡で島を見る。
「あそこに、遺跡らしきものが見えます」
「遺跡?」
「ええ。古代文明のものかもしれません」
「……」
ダミアンが、考え込む。
「どうする? 寄港するか?」
「危険です」
ロイドが、反対する。
「毒蛇だらけの島に、わざわざ行く必要はない」
「だが、遺跡には貴重な情報があるかもしれない」
ダミアンが、地図を見る。
「黄昏の神殿の手がかりが、あるかもしれない」
「……」
沈黙。
その時、ルナが口を開いた。
「行った方がいい」
「ルナ?」
「予知で見たの。あの島に、大切なものがある」
ルナの目が、真剣だ。
「危険だけど、行く価値がある」
「……わかった」
ダミアンが、決断する。
「寄港しよう。蛇の島へ」
数時間後。
船は、蛇の島の沖に停泊した。
「ボートで、上陸します」
ダミアン、ロイド、ガレス、クラリス、ミレーユ、ルナ、そして俺。
七人で、島へ向かう。
島に着くと――
草むらから、無数の蛇が這い出してきた。
「ひっ!」
ルナが、悲鳴を上げる。
「大丈夫。俺が守る」
「う、うん……」
「クラリス、頼む」
「わかったわ。【フレイムサークル】!」
炎の輪が、俺たちを囲む。
蛇たちは、炎を嫌って近づかない。
「これで、しばらくは大丈夫」
「ありがとう」
「さあ、遺跡へ急ごう」
島の奥へ進む。
草木を掻き分け、蛇を避けながら。
やがて――
古い石造りの建物が見えてきた。
「あれが、遺跡か……」
「ええ。古代文明のものです」
ミレーユが、興奮した様子で言う。
「入りましょう」
遺跡の入口。
大きな石の扉。
古代文字が、刻まれている。
「何て書いてあるんですか?」
「えっと……」
ミレーユが、文字を読む。
「『汝、知恵を求める者よ。三つの試練を超えよ』」
「三つの試練……」
「ええ。どうやら、この先には試練が待っているようです」
「危険ですね……」
「ああ。だが、引き返すわけにはいかない」
ダミアンが、扉を押す。
重い音を立てて、扉が開く。
中は――
暗い。
「松明を」
松明に火を灯し、中に入る。
石造りの廊下。
壁には、古代文字と壁画。
「これは……」
ミレーユが、壁画を見る。
「生命魔法の歴史だ」
「生命魔法……」
「ええ。第一段階から、第三段階まで。すべて描かれています」
壁画には、人々が魔法を使う様子が描かれている。
作物を育て、病気を治し――
そして、生命を創造する。
「第三段階……創造魔法」
その絵は、美しくもあり、恐ろしくもあった。
人々が、光から新しい生命を生み出している。
だが、その先には――
崩壊する世界が描かれていた。
「やはり、創造魔法は危険なんだ……」
「ええ。使い方を間違えれば、世界を滅ぼす」
ミレーユが、真剣な顔で言う。
「だから、封印された」
「でも、黄昏の会は、それを解き放とうとしている……」
「ああ。だから、阻止しなければならない」
さらに奥へ進む。
すると――
広い部屋に出た。
中央に、石碑が立っている。
「これは……」
石碑には、古代文字で何かが刻まれている。
「ミレーユさん、読めますか?」
「少し待って……」
ミレーユが、石碑を調べる。
そして――
「これは……黄昏の神殿への地図だ!」
「本当ですか!?」
「ええ! 場所が、記されています!」
ミレーユが、興奮する。
「西の大陸の中央部。『死の砂漠』の奥に、黄昏の神殿がある!」
「やった……!」
ダミアンが、拳を握る。
「これで、目的地がわかった」
だが、その時――
部屋が、揺れ始めた。
「何だ!?」
「罠だ! 逃げろ!」
天井から、岩が落ちてくる。
「急げ!」
全員、出口へ走る。
だが――
ルナが、転んだ。
「きゃっ!」
「ルナ!」
俺は、ルナを抱え上げる。
そして、全力で走る。
岩が、次々と落ちてくる。
「間に合え……!」
ギリギリで、出口から飛び出す。
ドガガガガ!
遺跡が、崩れ落ちる。
「はあ、はあ……」
「み、みんな無事か!?」
「ああ、何とか……」
全員、無事だった。
「地図の情報は?」
「大丈夫。記憶した」
ミレーユが、頷く。
「これで、黄昏の神殿へ行ける」
「よし」
ダミアンが、立ち上がる。
「船に戻ろう。そして、西の大陸へ」




