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第二十六章〜二人の生きる世界〜

「一体何が、『魔法力』を【魔法】に変換してるんだろう?…『呪文』?『魔法石(ルーン)』…?それとも『魔法力』には元々、特定の【魔法】に変わる特性があるとか?」                                                                      小百合は興奮気味に目を輝かせながらも、【魔法】に対する考察を熱弁する。その様子に呆れ果て、私は彼女の熱に浮かされる様に問い掛けた。                                                                                              「ーそれって、そんなに重要かな〜?」                                                                                  「重要なんてものじゃないよっ!仕組みが解明できれば、元の世界に戻っても【魔法】が使えるかもしれないんだから!!」                                                                                                              ー元の世界に”戻る”?                                                          私の脳裏に全く予期しなかったその言葉が引っ掛かった。                                                                     「…そうなれば、新たな技術革新の立役者として、色んな分野で特許を取得して…私達、一生安泰だよっ!」                                 「ーそうだとしても、私は元の世界に戻るつもりないんだ……」                                                             私がそう口にしてすぐ、小百合は訝しげに首を傾げてこちらを凝視する。                                       「…どうしてッ!?正直、ここに居ても良いことないよ?最終的には、魔王?とか言うの倒さないといけなくなる訳だし!」                                                                                                               「私はそんなの無理だと思う……それに王様の脚も治ったんだからっ、もう私達が戦う必要はないんじゃない?」                  小百合は私の両腕を摑むと、必死の形相で『間違い』だと訴えかけた。                                「ー王様はもう歳だし、きっと長くは戦えない。私達が今帰ったら、新しく勇者を召喚すると思う…」                              「……だとしても、私達には関係ないよっ…」                                                                             小百合は暗い表情で顔を伏せると徐ろに吐き捨てる。                                                                       「それは分からないよ?…小百合が召喚された以上、次に召喚されるのは私のお母さんかもしれないんだからさ……」                                    私が小さく呟くと、小百合はハッとした表情で顔を上げた。                                                                「…そんなー」                                                                                                        「そうじゃなくても、次に召喚される人は”私達のせい”で喚ばれる事になる。その辛さは小百合にも分かるよね…?」                                     (…もし、次に召喚された人にも友達がいるとしたらー)                                                                 「………うんっ」                                                                                                       小百合は青ざめた顔で、自身の両腕に両手を添えると小さく頷いた。私は近くに歩み寄ると、彼女の肩へと手を伸ばし(なだ)めるようにポンポンと二回叩いた。                                                                                                   「ー大丈夫!…小百合にはもう、不安な思いはさせないから!」                                                            (そうじゃないよっ…。私が心配なのはカレンちゃんの事だよ……)                                                        「それにね、理由はもう一つあるんだ。私はこの異世界に来て初めて、自分として生きられるようになったんだ…」                                         「ーそれはどういう意味っ…?」                                                      小百合は当然の告白に対して、眉を(ひそ)めると不安そうな顔で仰ぎ見る。                                                  「異世界の人にとって…髪や瞳の色は違っていて当たり前で、眼鏡を掛けていたり髪を染めているくらいの感覚でしかないー」                                                                                                             「…この世界はただ色んな人達がいて、それが当たり前の場所なんだよ!」                                                     「……あっ!」                                                                                                          小百合は何かを思い出したように声を発する。                                                                           (ーだから、皆んなとおんなじでいられる…)                                                                         「それは私の理想通りの場所で、ここが今の居場所だと思ってる。小百合は…元の世界に戻りたい?」                           小百合は目線を外し下を向くと、静かにポツリと呟いた。                                                                  「…私は、カレンちゃんと一緒に居られるならっ、何処だって構わないよ…」                                           「ーそれはどうして…?小百合は自分の行きたい場所に行っても良いんだよ?誰にも小百合を止める権利なんてない!」                                                                                                                 「それこそ小百合の言う通り、ここに居たって良いことないんだからさ?」                                                   小百合は食い気味に首を横に振った。                                                                             「ーそれは違うよ!私はもう自分の行きたかった所に来てるっ!」                                                         「……カレンちゃんが居なくなって、私は気付いたんだよっ…私の居場所は元の世界の何処にもなくって、教室でカレンちゃんと話した時間の中にしか存在してなかったんだって…」                                                             「カレンちゃんがこの世界でしか、カレンちゃんとして生きられないなら、私はカレンちゃんと一緒にいる時だけ私として生きられるんだよっー!」                                                                                          涙目で語った小百合の言葉を聞いても、私にはそこに込められている意味までは摑めなかったー                                             ただ、私は馬鹿だった。自分自身が『何も知らない』と思い込んでいたことが……                                               (ーわかってた筈なのに、人は親しい誰かと一緒なら…何処にいたって本当の自分でいられるんだって……)                                                       「そうだね…私っ、間違ってたみたい。…少なくとも、小百合と話してる間は…私は私でいられた」                             「ーでもね、それでも私はこの世界で生きていきたい。自分として生きられるからじゃなくて、自分らしく生きられるから…」                                                                                                              私はそう告げると頭を下げて右手を前に出した。                                                                          「…だから、小百合……私と一緒にこの世界で生きてくれる、かなぁ〜?」                                                  (あれっ?何か…話の流れで愛の告白みたいになっちゃってない!?)                                                     「ー本当に……?」                                                                                                  (…えっ?)                                                                                                          「本当にっ、私と一緒に生きてってくれるの?」                                                                          私が目線を上げると小百合は口に両手を当てて感激していた。その反応は私と彼女の間に明らかな認識の隔たりがある事を物語っている。                                                                                                   「まぁ〜そうだけど……?」                                                                                       私の発言と同時に素早く、小百合は差し出された右手を両手で包み込むように優しく握り締めた。                                               「ー絶対っ!!だからね!これから宜しく、カレンちゃん!!」                                                             「うんっ……宜しくね、小百合…」                                                                                       (友達…として、だよね!?)                                                                                           「ーそうと決まれば、カレンちゃんには幾つか注意して欲しいことがあるんだ!」                                                  「…一つ目は、絶対に無茶しない事!カレンちゃんは私を不安にさせないって言ったよね?私が一番不安なのは、カレンちゃんが無茶する事なんだからねっ!!」                                                                              「エッ!?う、うん……」                                                                                              (小百合が鬼嫁みたくなっちゃった…)                                                    「ー二つ目は、この世界の人達は私達に何かを隠してるって事…」                                                          小百合は周囲に響かないように顔を寄せ、小声でひっそりと囁いた。                                      「それって、どういう事?」                                                                                              「ここからは私の憶測なんだけどっ……『魔法力』を【魔法】に変換する仕組みは、『呪文』にも『魔法石(ルーン)』にも存在してないんじゃないかな?」                                                                                    「えっ、何で…?」                                                                                                   「ー『呪文』には、【魔法】の種類、用途、対象以外の要素が全く含まれてないし、『魔法石(ルーン)』の方も鉱脈があるって話だったけど…ただの鉱石にそんな力があるはずないよっ!」                                                           「…だってこの世界は現実世界なんだから…それによく思い出してみて、大臣の説明では『魔法石(ルーン)』は唯一『魔法力』を込める事ができる鉱石だって言ってたよね?」                                                              「うん。そうじゃん?」                                                                                                「ーそれってつまり、『魔法石(ルーン)』には『魔法力』を【魔法】に変えられる力はないって意味にも取れるよね?」                                                                                                                  「あっ!確かに……でも、聞かれなかったから説明しなかっただけの可能性もあるんじゃない?」                 私がそう告げた途端、小百合は眉を顰めそのまま何かを理解したように『うんうん』と二度頷くと、満を持して口を開いた。                                                                                                                「……カレンちゃんはやっぱり優しいね。…でもっ、説明しないって事は知られたくないことがあるって考えるのが普通なんだ!」                                                                                                         (もうここは日本でもなければ、元の世界の何処でもないんだから…)                                                       「う〜ん、私は考え過ぎだって思うけど…」                                                                             「ーそれ以外にも、もう一つだけ可笑しい事があるよ!」                                                                        ーまだあったんだ……                                                                                                   「王様は何で、勇者を引退してすぐに代わりの勇者を召喚しなかったんだろう?」                                                (……どゆこと?)                                                                                                           「王様の右眼の古傷は何年も昔の物に見えたけど、あの傷が出来たのは左脚を無くした時と同じ日の筈。…だとすると、王様が引退した日もかなり昔ってことになるよねっ?」                                                                「ーそれは、王様になって忙しくなったから…とかじゃない?」                                                               「…そんな理由で後回しに出来るならっ、『ルーン騎士団』も居るんだし、態々勇者を召喚しないと思う…」                                      「ーそれでも召喚したってことは、そうする必要があったって事だよっ!…なのに、何年も先送りにしてた事になる……」                                                                                                                      「今の時点で、可笑しな事が三つも重なってる。王様達が何かを隠してるのは間違いないっ…」                                            ー小百合は気付いてないみたいだけど、召喚相手を選べない筈の『勇者召喚』で小百合が召喚されたことも、『可笑しな事』という意味では充分に可笑しい出来事……                                                                                        「カレンちゃんと私は、これからこの世界で生きていくんだから…この世界の事情も詳しく知っておくべきなんだよっ!」                                                                                                                       「…それじゃあ〜、直接聞いてみる?」                                                                                           徐ろに腕を組み、小百合は『勇者の間』をぐるりと一周するとベットにゆっくりと腰掛けた。                                                「……う〜ん、隠す理由が分かってない内は気付かれないようにしたいかなっ…」                                                  「直接じゃなくても、近い内容から聞いていけば何か分かるかもしれないし……」                                                    「うん、分かった!」                                                                                                         私が勇み足で了解すると、小百合は慌てて言葉を付け加えた。                                                                                                             「ーでもっ、相手にするなら…王様は避けた方がいいと思う…」                                                                「えっ!?」                                                                                                               「王様は仮にも、この世界で一番の大国を治めてる人だからね…。カレンちゃんは実際にこの国を見て、どう思った?」                                                                                                                      ー突然振られた荒唐無稽な問い掛けに、私は動揺しつつも頭の中を必死にこねくり回した。                                                  「どうって……凄く広くて、普通に良い国だと思ったけど?」                                                                   「…そうなんだよっ!『ルーン王国』はとっても広くて、そこに住んでる沢山の国民は普通に暮らしてた。それは王様が国をしっかり統治できてるっていう証なんだ!」                                                                               「つまり、王様はそれだけ賢い人って事になるっ!探りを入れたら、それだけで気付かれても可笑しくない…」                                         その発言を訊いた私の内面には、とても複雑な感情が渦巻いていた。                                                             「え〜……っと…、多分それはないんじゃないかなー?」                                                                        (…だって、”あの王様”だよ?)                                                                                              「……どうなるかは、実際やってみるまで分からないものだよっ、少なくとも危険を減らす努力はするべきだと思う…」                                                                                                                     小百合は感情を失った人形のような冷ややかな目でそう告げた。                                                                   「うんっ、そうだよね?!取り敢えずは『魔法石(ルーン)』の方から王様以外の誰かに聞いて回るってことでいいかな?」                                                                                                                     小百合は少しの間、右手を口元に当てて考える素振りを見せた。                                                                    「ーそうだねっ。『勇者召喚』についてはどうしても遠回しに聞きづらい内容だからしょうがないね…」                                              (……普通に『魔法石(ルーン)』の方から先に聞くっていう意味だったけど、一応聞いといて正解じゃん…)                                                                                                            

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