ワルノリ劇場
ある放課後のこと。
「今から劇をしよう!」
ゆうりの突拍子もない提案がとんできた。
でも、それにのれるのが私たちのいいところだと心得ている。
生憎唯一のツッコミ担当優未はさっさと帰宅したので不在だ。
だから、誰も私たちを止められない!
「何がやりたいの?」
李子がわくわくしながら質問する。
「桃太郎!」
「いいねー!」
そこから皆で役割を決めた。
「おや、大きな桃だね」
おばあさんを演じるのはゆうりだ。
「よし切ろう!」
おじいさんを演じるのもゆうりだ。
「桃太郎爆誕!」
桃太郎が叫ぶ。桃太郎役は李子だ。
「Happy Birthday!」
やたら発音のいい声がとんでくる。実は帰国子女の生花だ。
「鬼退治に行ってきます」
「じゃあ、このきびだんごをもってお行き」
ゆうりが全員からかき集めた消しゴムをビニール袋に入れて差し出す。
「行ってきます!」
「おい! きびだんごをよこせ!」
猿を演じるのは空だ。
「おう!」
李子が消しゴムを1個差し出す。
「よっしゃ!仲間になってやる!」
見事なまでにアホっぽい。意外と演技力あるな。
「あらあら、なんの騒ぎですこと?」
なんか変なの来たぞ。
「おー雉!」
空(猿)が言う。
「きびだんごをくれたら私も仲間になりましょうかしら」
雉役はちなみに瑞生だ。さすが! 思いきりがいい。
「きびだんごならいくらでもやるよ!」
李子がまた消しゴムを差し出した。
「ありがとう」
よし、次は私の番だ。
「やあ、仲間になるよ」
私が演じるのは犬だ。
「仲間になってくれるのか?ありがたい!」
消しゴムを受け取って仲間になった。
鬼ヶ島に着いた。
「おや、なにか来たようだね」
こまちゃんが鬼役だ。
「俺は桃太郎!」
ようやくクライマックスかと思っていたら廊下を歩く足音が聞こえた。
「何してるの?」
少し引いたような爽がいた。
「あー。いいとこだったのに」
皆声を揃えてそう言った。
そして腹いせに今度お前も付き合えよという結末になった。
そんな突拍子もない常日頃だった。
実際にそんなことやったことあります。爽のモデルの男には後で鬼に拐われたお姫様役させました。