恋のキューピッドさまは観覧車に住むことにしました
なろうラジオ大賞6投稿作品です。
吊り橋効果…よりも、観覧車には恋のキューピッドさまがいたらいいなぁって…。
本日も営業終了とっ!
山奥にひっそりと営業している遊園地。
オレ様は3ヶ月前から観覧車に住んでいる。
人間様は知らぬようだが、観覧車には恋のキューピッドさまがカップル成立を担うシステムになっている。
吊り橋効果とか言っているようだが恋のキューピッドさまのおかげなのだ。
普段は空の上からお助けしているがカップル成立の出来が悪いと現地派遣。
カップル100組で天上に戻れるようになってはいるが、天上に戻ってくるのはごく一部。
カップル成立の出来は恋のキューピッドさまの腕前だけが問題ではない。
客入りが少ない観覧車が問題ということもとしばしば…
オレ様は天上から舞い降りた恋のキューピッドさま、いわば救世主なわけ。
あと2組でめでたくカップル100組達成を迎える。
「恋さん、おつかれさまー。」
オレ様が新人バイトとして潜入して1ヶ月後、園内に“占いの館”を作り、占い師として来た白鳥さん。
こちらに向かって手をふり駆け寄ってきた。
白鳥さんはオレ様の人間設定からだと母親くらいの年齢だ。
「おつかれさまです、白鳥さん」
「突然なんだけど…
人間に天使ってバレるとどうなるか知ってる?」
オレ様は息を飲む。
「聞いた話によると、お空に帰れなくなるんだってね。
最近恋のキューピッドさまがいるってSNSで話題でしょ、ここ。
…仕事の邪魔にもなるっていうか…ねー?」
白鳥さんの言っていることが図星でオレ様は返す言葉に迷って、ねーと軽く首を傾げてみせた。
まだオレ様が恋のキューピッドさまだってことはバレていないのか。
背中の羽がまだ動く。
次の日、胸がソワソワしたまま
開園前の観覧車の試運転を始める。
山奥の観覧車から臨める景色は
澄み渡る空と緑と湖。
今日は天気もいいし、
み、湖!?
どうして気づかなかったんだろう、あの湖は確か。
湖の辺りに小さい神社があって縁切り神様として有名だ。
スワンボートがあって…
え、
…白鳥さんって縁切り神様と関係がある!?
スマートウォッチに目をやる。
2組で100組になるメーターが
あと10組まで戻っていた。
“仕事の邪魔”とはオレ様自身のことか。
あれは宣戦布告か!?
「おはよう恋さん」
そう言われて振り返ると
白鳥さんがご機嫌な様子で満面の笑みでいた。
「白鳥さん、おはようございます。
今日もがんばりましょう!
仕事の邪魔はもうしませんから。」
オレ様はとびきりの笑顔で返した。
切られない縁を結んでやればいいだけだろ?
オレ様を誰だと思ってんだ。
お読みいただきありがとうございました!
白鳥さんへの宣戦布告。
人間にバレずにカップル成立100組なるのか恋くん!
ちなみに恋くんの人間設定は20代前半くらいです。