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あなたを幸せにすると誓います  作者: 川木
第三章 約束

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第五十話 大好きな人とする結婚式2

 式場を出たら、そのまま馬車にのって街を一周する。乗る時間が長い分、温かいドレスでよかった。最初のと違って肩も出ていないので、冷たい風も平気だろう。最初から想定していたかのようなチョイス。偉いぞ私。

 私はリリィの体が冷えてしまわないよう気を配りながらも、街の主要道路を通って色んな人にリリィを見せつけ自慢してまわった。お店をしている人も、ただの通行人も、みな私たちを見て笑顔になってくれた。

 なんというか、みんな心にゆとりがあって、いい人ばかりだ。領地の特徴なのか、それとも、魔王が倒された今がこうなのか。なんにしても、平和とは本当に素晴らしいものだ。


 そうして皆から声援をもらい、結婚の喜びを噛みしめながら式場にもどる。そこではすぐ前の大通りにもテーブルを広げて立食会場のようにしていた。事前に私たちがこの時間のこの道を馬車通行禁止にするとは聞いてはいたけど、こうして実際に道路が会場になっているのを見るととんでもないインパクトだ。田舎の広場じゃないんだから、こんなことをしている結婚式なんて前代未聞じゃあるまいか。

 まあ、そもそもしたいから二回目の結婚式をして、平民問わず招待して領民も自由参加だよなんてのが前代未聞だろうし、使用人も楽しんで運営してくれているんだからよしとしよう。


「えー、ごほん。改めまして、本日は私たちの結婚式にお集まりくださりありがとうございます。ご挨拶させてください」


 私は誘導されるまま、式場出入口前に止められた馬車の中で立ち上がり、知らない人も集まってきているっぽい大勢の民も含めて、参加者に向かって改めて挨拶をする。


「それでは長々と話してもなんですので、乾杯に移らせていただきます。みなさんどうぞ、ご自由に飲んで食べて楽しんでください。では、乾杯」


 事前に聞いていたのもあるけど、こういうのは慣れている。勇者として各地を回っていると魔物退治をしたり歓迎なんかで宴を開いてくれることはよくある。最初は戸惑ったけれど、こんなの誰がしてもいいし、別に話も聞いてない。形だけのもので、美味しく食べて飲めれば忘れる話なので、適当にそれらしいことを言っておけばいいのだ。

 なので合図してグラスを持ってきてもらい、そう言って乾杯の音頭をとって締めとした。途端にわっと歓声があがり、あたりが賑やかになる。


「ふぅ。リリィ、降りようか。ずっと座ってて疲れたでしょ」

「ありがとう」


 先に降りてリリィの方に回り、エスコートして降りてもらう。そして着替えの予定だけど、あんまりすぐに動くのも疲れるだろうから、飲み物一杯分くらいはゆっくり飲もうかな。さっきの乾杯は喉が渇いてたから一気に飲んだし。


「エレン! いい格好してるじゃない! 偉い人みたいよ!」


 と思っていると、エミリーがみんなを引き連れてやってきた。みんなほどほどにいいオシャレしてくれていて、ジェーンも聖職者らしい恰好からもう着替えていてよく馴染んでいた。


「ありがとう。でも偉い人みたいって言われても複雑なんだけど。おじさんみたいってこと?」

「褒めてんのになによ。リリアン姫も、よく似合っているわ。さっきのもすごかったけど、そのドレスも素敵ね」

「うんうん。二人とも様になっていてよくお似合いです」

「ご招待いただき恐悦至極です」

「リリアン様、エレン、改めておめでとうございます」


 エミリーに続いて、騎士三人がリリィもいるからか敬語でそうお祝いしてくれた。チャールズってこういう場面では普通の文字数話すんだな。ちょっと面白い。


「エレン、リリアン様、よかったねぇ~。立会人をさせてくれてありがとね。いい記念になったよ」

「いやいや、こっちこそありがとね」

「聖女として名高いジェーン様に立ち会えていただけて光栄でした」

「そんな大したものじゃないけどね。旅の最初の頃を思い出して、なんだかちょっと、じんとしちゃったよ」

「うんうん。そうだね。エミリーもエレンも立派になって、一安心だよ」

「ちょっと、しれっと私をいれないでよ。私は最初から立派だったでしょうが」

「エミリー、立派な人間は自分で立派とは言わないと……いや、エミリーは出会った時から素晴らしい女性だった。夫である俺が言うんだから間違いない」


 仲間が全員集まると、というかエミリーがいると騒がしくなってしまう。だけどそれも悪くない。こういうイベントごとではみんなが集まるのはやっぱりいいね。

 そうして一杯飲み干すまで話してから、きりがいいのでもう一回着替えるからと離れた。どんだけ好き放題してんのよ。とエミリーに呆れたように言われたのだけは解せない。突然招待客に握手会させたエミリーに言われたくない。


 そして最後のドレス。食事もするしここからが一番長く身に着けるのでゆったりとしたデザインで、ウエストで切り返している。宝石もアクセサリー以外なしで軽くて過ごしやすくなっている。

 ここまでの二着のドレスに比べたらかなりシンプルなものになるけれど、でも、あえてこのシンプルなドレスがめちゃくちゃ似合っているよね。あとちょっと青味がかっていて、下に行くと濃くなるグラデーションのあるドレスにした。伝統的なのは白一択だけど、最近平民の結婚式だとカラードレスも流行ってますよ~って仕立屋に教えてもらったから選んだけど、いいね。


「これ完全に私の趣味にしちゃったけど、すごく似合ってるよ」

「そうなのね。シンプルで普段使いできそうなくらいで、私も嫌いではないわ。あまり華美なものばかりでも疲れるものね。それに、あなたの髪の色に似ているのも気に入ったわ」

「あ、伝わっちゃう感じ? ちょっと恥ずかしいな。リリィって何色でも似合うから、悩んでたら相手の色を付けるのが多いですよって言われて……」


 私の髪は紺色だ。遠目には黒にも見えるくらい濃いので、そこまですると結婚式らしくないので薄い青にしたけど、わかられると案外恥ずかしい。


「ふふ。恥じらわなくてもいいわよ。あなたのものだという証明の様で嬉しいもの」

「う、うーん。まあ、ウエディングドレスってそういうものだしね」


 リリィはそう言ってくれるけど、その物言いは逆に恥ずかしい。でももう開き直るしかない。結婚式って要は盛大なノロケみたいなものだし、まあ、いいよね!


 というわけで張り切って最後のリリィのドレスをお披露目だ。私も一応着替えているし、色をリリィに合わせて白にしているけどそれはおまけだ。


 シンプルなドレスだけに本人の美しさと、アクセサリーのワンポイント感が際立っていて、すごくいい。シンプルにただただ美しい。

 そんなリリィは再び衆目をあつめた。そうして皆に見せびらかし、たまに食事をとりながら順次来てくれる人と挨拶をしていく。

 リリィの招待客もきてくれて、みんなリリィの結婚を心から祝福してくれてるのが伝わってきて、本当に結婚式をしてよかったなぁと実感した。


 それからみんなの食事も落ち着いた頃、リリィの招待客の中で1人すごく泣いてた人がゆっくり挨拶にきてくれた。上品そうな老婦人だ。


「おひぃさま、この度は私めをこのような席にご招待くださり、誠にありがとうございます。よい、冥途の土産が出来ました」


 そう言って深々と頭を下げた。細身なので針金が曲がっているかのような印象を受ける礼儀正しさだ。


 前回の結婚式に呼べない相手と言うことで、リリィの招待客は平民かなと思っていたけどみんなちょっと雰囲気が違う。というかよく考えたらリリィに仕える人間なんだからその辺の庶民ではないのだ。

 と言ってもリリィの招待客は育ちの良さがうかがえるけど表面的には周りになじめるように軽く振舞っている人ばかりだった。その中でこの人は振る舞いを変えようとはしていない。わかりやすく貴人の使用人と言う態度だ。



「ばぁや、またそんな、縁起でもないことを。顔をあげてちょうだい。夫を紹介するわ」

「はっ。承知いたしました」


 リリィの言葉にばぁやさんは顔をあげた。目元はまだ赤くうるんでいて、泣いていた形跡が色濃い。


「えっと、初めまして、ばぁやさん」


 と声をかけてから思い出したけど、正式にはこういう時、紹介される私は待つのが正しかった。立派な旦那さんで安心ね、と思ってもらいたかったのにさっそくミスしてしまった。


「お初にお目にかかります。私めはセリ・ジェミニと申します。どうぞ、ばぁやとでもお好きにお呼びください」


 と一瞬焦る私に、ばぁやはそう言って綺麗に礼をとった。勝手にばぁやって呼んだのもフォローされてしまった。さすがばぁや。貫禄が違う。


「ばぁやは、以前に言っていた母の乳母なの。クラーク国にも共をして、生まれた時から私の婚姻まで、私の侍女をしていた忠臣よ。よく仕えてくれていたわ」

「もったいないお言葉にございます。ご立派になられて、亡きマーガレット姫も、きっとお喜びくださっているでしょう」


 リリィがそう軽く紹介してくれると、ばぁやはまた、うぅと泣き出してしまった。リリィがそっと背中を撫でているので、私もそっと肩を撫でながら胸ポケットからハンカチを出して涙をぬぐってあげる。


「まあまあ、ばぁやさん、落ち着いて。引退して時間があるなら、よかったらしばらく滞在するといいですよ。手配した宿にいくらでもいてください。後日、落ち着いた場でリリィとお話する機会をつくりますから」


 招待状を出した人はほぼ領外からの招待客なので、ゆっくりできるよう宿をひとつ貸し切って泊まってもらっている。そのまま泊まってもらうのが一番負担が少ないだろう。

 もちろん家に招待してもいいんだろうけど、この様子だと逆に恐縮して気を遣わせちゃうだろうし。


 そう言って、慌てなくていいからねとなだめていると、ばぁやはハンカチを握る私の手をしっかと握った。細い手なのにびっくりするほどしっかりした手つきで、少し驚いてしまう。

 そしてさらにこぼれる涙もぬぐわず、私の目を真っすぐに見た。


「みっともない姿を見せ、申し訳ございません。エレン様のような方になら、安心しておひぃ様をお任せできます。私めなどが口を挟める立場でないことは重々承知ですが、どうか、おひぃさまをよろしくお願いいたします」

「はい、もちろんです。必ずリリィと共に幸せになることをお約束します」


 私はその意外と鋭い眼光に向かって、しっかりと力を込めて見つめ返して答えた。それを見てばぁやは満足そうに微笑んだ。

 

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