拓海と翔太
その日は遅くまで部屋で泣いている美里を見守った。
時々、抱きしめたり……涙を拭いたり……。
その姿を見て、私は私の恋を思い出していた。
隣の部屋では翔太君から美里のことを聞いた拓海君が……翔太君に告げたそうだ。
「そっかぁ~。終わったんだな。あいつ……。」
「俺も終わらせようかなぁ~。」
「彼女のこと?」
「うん。」
「当たって砕けるのか?」
「やってみるよ。もう一度……。」
「忘れられないから!」
「忘れられないから?」
「プッ……なんでハモるのかなぁ~!」
「俺は美里ちゃんじゃないよ。」
「美里……かぁ……。」
「お前はどうするの?」
「…俺?」
「うん。お前……。」
「俺は………俺は何もしないよ。」
「当たって砕けないのかよ。」
「悪かったな。当たって砕けるのはごめんだ。」
「なんでだよ?」
「もう、砕けてるからだ! 俺の場合は当たる前に、もうず~~っと前に…
砕け散ってるからな! 当たる必要は無いんだ。」
「美里ちゃんは勇気があるよなぁ~。お前と違って!」
「悪かったな!」
「なぁ……あんなに好きなのに見守ってるだけでいいのか?」
「それしかないんだ。俺は……。
いつか……あいつが誰かを好きになって……結婚したら……
その時に終わるんだろうな……。」
「その日まで見守るだけ?」
「おうよ! 俺はあいつにとって兄貴なんだからさ……。
………今頃……大泣きなんだろうな……美里……。」
「ごめん。」
「お前は悪くないって……。
そういう意味で言ったんじゃないし……。」
「分かってる。」
「あいつな……泣き虫なんだ。」
「そうなんだ……。」
「小さい頃から……な……。
今頃、詩織ちゃんに甘えて泣いてるんだろうな……。
詩織ちゃんが直ぐ傍に居る今日で良かったよ。
ありがとな。翔太……。」
「お前にありがとうって言われるのは変だな……。」
「でも、ありがとうだ。
あいつが好きになった奴がお前で良かったよ。」
「見守りやすかったし?」
「あはは……。そうだな……。」
拓海君は有言実行だった。
ただの幼馴染として、この後も過ごしたのだった。