告白
ただ、並んで歩いているだけなのに……美里は嬉しかったのだと言った。
胸が震えるほど嬉しかったと言った。
「綺麗だね。」
「……うん。」
「冬でも寒くなくって、いいね。」
「……うん。」
「拓海と居る時と違うね。美里ちゃん。」
「えっ? そ…うかな?」
「うん。全く違うよ。
拓海と一緒の時はすっごくリラックスしていて笑顔も見られるね。」
「そんなこと……。私、違うから!」
「美里ちゃん……。」
「拓ちゃんのこと、何とも思ってないから……。」
「うん。」
「私………私………。
…………嫌わないで欲しいの。」
「嫌ったりしないよ。」
「ほんとに?」
「うん。ほんとだよ。」
「……あの日……分かったの。
翔太君が彼女を紹介してくれた時……
その時に気が付いたの………私!
………私………私……翔太君が……好きだって……。
でも、分かってるの。
無理だってこと……最初から無理だってこと……。
あの人のこと、凄く大事にしてた……。
……凄く愛して……愛してるって……分かるの……。
若い女の子と付き合って……けど……別れたって聞いた。
それは……もしかしたら……今も………。
今も……好きなのかな? 彼女のこと……。」
「うん。……好きなんだ。彼女のこと……今も…ずっと…。
…だから……ごめんね。美里ちゃんの気持ちに応えられなくて……。」
「ううん。……ありがとう……。
私、翔太君のこと好きになれて幸せだった。
片思いだけど……好きになるって素敵なことだと思いたい……。」
「うん。……そうだね。
美里ちゃん、俺なんかを好きになってくれて…ありがとう。
いつか、誰かを俺なんかよりも、もっと好きになって……
愛して……幸せになってね。」
「止めてよね。」
「?」
「そんな優しい言葉……イケメンなんだから……ほんとに……。
忘れられなくなるじゃない……。」
「ごめん……。」
「許さない…よ。翔太君があの人と幸せになってくれなくっちゃ……
なんのために何人もの女性が泣いたか……無意味になるじゃないの!」
「美里ちゃん…。」
「必ず、あの人と……祈ってるね。」
「ありがとう。」
「じゃあ、もう部屋に戻りたいから……。」
「うん。じゃあ……。」
美里は翔太君を置いたまま……走って……。
そして、私の腕を取って再び走り出した。
後ろから拓海君の声が聞こえて来た。
「お~~い。走るなって! 迷惑だよ。」
その声を聞いた美里は走るのを止めて歩き出した。
俯き加減で泣いていた。
私は美里の肩を抱いて歩いて部屋に戻った。