相手
「断ったのね。良かったぁ~。」
「頑張ったな。」
「大変だったけど、断れてよかったよ。」
皆は口々に「良かった。」と言ってくれた。
「それで、電話の内容は?
何だったの?」
美里に促されるように、私は電話の話をした。
スマホの着信音が鳴って、見ると知らない番号だった。
不審に思いながら、一応出た。
出ながら「これ、ヤバい奴だったら直ぐに切ろう!」と思った。
「もしもし、詩織さんですか?」
「……はい。」⦅聞き覚えがある……な……。⦆
「先日、お見合いさせて頂いた者ですが……。」
「あ! 先日は失礼しました。」
「いえ、断って頂いて実は助かりました。」
「そうなんですか?」
「はい。見合いする気は全くなかったんです。」
「そうなんですか……。」
「実は親にカミングアウト出来なかったんですが……
僕は女性を愛せないんです。」
「あ!」
「今、恋人も居るんです。」
「そうなんですね。」
「それで、今回お断りしてからカミングアウトしようと計画したんです。
僕も騙されてあの場に居ましたから……。」
「同じですね。」
「はい。貴女が来られる前にカミングアウトすると計画したんですよ。」
「まぁ!」
「あの後、カミングアウトしまして……理解して貰えませんでしたが……。
見合いの話は今後ないと………。
親には恋人を紹介するつもりです。
許して貰えなくても、僕の人生ですから……。」
「そうですね。頑張ってください。」
「はい。……それで、お願いなんですけれど……。」
「何ですか?」
「貴女を気に入ったのが居るんです。」
「私を?」
「ええ! 貴女の話をしたら、会いたいと……友達が……。
一度だけ会って頂けませんか?
勿論、断って頂いても当然です!」
「会ってないのに、会いたいって思いますか?」
「変わった奴だと思われるでしょうけれども、僕にとってはいい奴なんです。」
「………そうですか……。」
「済みません。会いたくないですよね。」
「はい!」
「では、僕から話しますので……ご安心ください。」
「お願いします。」
「もう、この番号から電話が架かってくることはありませんので、ご安心くださ
い。」
「はい。」
そう会話した翌日のことだった。
見合い相手の友人が会社に来たのだ。




