見合い
私は話を続けた。
皆、聞いてくれている。嫌がらずに……。
話は兄嫁に及んだ。
家でのんびり過ごしていると義姉が来た。
「お義姉さん!」
「詩織さん、今から行きますので!」
「どこへですか?」
「用意してください。」
「だから、どこに行くんですか?」
「もう、待たれています。」
「何方が?」
「見合い相手です。」
「見合い……断りましたよね。」
「私が決めました。
もう待たせていますから、行って頂きます。」
「………………酷い……。」
問答無用だった。
兄は後ろでオロオロしていた。
「お兄ちゃん!」
「あの人は知りません。」
「えっ? だから、何も教えてないわ。今日、教えたのよ。」
「お兄ちゃん……。」
「詩織! 済まない。」
「本当に済まない!だわ。文字通りね。」
「早く用意して! 出ますから! 外でタクシーも待ってるのよ。」
「タクシー!」
「駐車場が予約できなかったの。さぁ!早くして!」
怒りで身体が震えた。
震えながら着替えた。
通勤用の服にした。
せめてもの抵抗だった。
タクシーで着いて、お見合い相手を前にして私は話した。
「今日は御側路頂きありがとうございます。
私が妹の詩織です。
早速で申し訳ございませんが、私は承諾しておりません。
私不在のまま話が決まっていましたので、申し訳ございません。
この場でお断りをさせて頂きます。」
そう一気に話した。
お相手も、お相手のご家族も目が点になっていた。と思う。
義姉は顔色が青くなっていた。
兄は汗をかいていた。
「申し訳ございません。
妻が決めてしまいました。
妹は何も知らされずに連れて来られたのです。
本当に申し訳ございません。
今回のお話は無かったことにしてくださいますようお願いいたします。」
「お兄ちゃん………。」
私が下げた頭の隣で兄が頭を下げていた。
男性の優しい声色が聞こえた。
「分かりました。
折角のご縁でしたが、そういうことでしたら……
無かったことに致しましょう。」
「ありがとうございます。」
お相手が帰られるまで兄と二人で頭を下げたままだった。
義姉はお相手を見送って戻ってきた時に激怒していた。
「なんてことしてくれるのよ!」
「お前が悪いだろ! 詩織、帰りなさい。」
「うん。」
「詩織さん!」
「帰りなさい。後は夫婦の話だからね。」
「うん。失礼します。お義姉さん。」
私は激怒している義姉と兄を置いて外に出た。
空気が美味しかった。
緊張で息をしっかりしていなかったのかもしれない。
それから数日後のことだった。
見合い相手から電話が架かって来たのだ。




