車
車は高速を走っていた。
もう泣いてばかりで何を話しているか分からない状態だった。
拓海君は聞いてくれていた。
「ティッシュ、そこにあるから使いなよ。」
「……ありがとう。」
「拓海君…。」
「うん?」
「ありがとう。」
「もう何回言うんだよ。」
「そう……なのね。何回も言ってたのね。」
「そうだよ。」
「あのね……。」
「うん。」
「人は誰でも最期が待ってるのね。」
「……そうだな。」
「だから、私……これから出逢う人……
一期一会の言葉通りにしようと思う…。」
「そうだな…。」
「父と母が……きっと…そうだったんじゃないかと思うの。
大切な出逢いだったんだと……。」
「きっと、そうだ!」
「拓海君にも……これから…多くの人との出逢いが待ってると思う。
その中に居ると思うから、ね。
拓海君を愛して……拓海君が愛する人…。」
「……そうだな。」
「……翔太君と奥様……美里と年下君…がそうであったように……。」
「…うん。」
「いつかは分かんないけどね。」
「確かに。…………ありがとな。」
「何で? ありがとうは私の言葉だよ。」
「こんな時にまで俺のこと気に掛けてくれて…ありがとな。」
「……そんなこと……
ちょっと母のことだけから逃れてる……。」
「もう少しだからな。会えるからな。」
「……うん。」
「必ず会えるからな。」
「……うん。」
病院に着く寸前に拓海君は言った。
「ありがとう。俺、一人でなくて助かった。」
「私もだよ。」
「行って来い。大丈夫だからな。」
「ありがとう。」
到着して私は「ありがとう。」の言葉だけ残して拓海君の車から下りた。
母が待つ病室へ走った。




