後の二人
露天風呂を出て、部屋でゆっくり過ごしていると無性にしたくなった。
……それは……ピンポン!
「ねぇ、ピンポンしようよ。」
「ピンポン?」
「そう! 温泉旅館と言えばぁ………ピンポン!」
「やろう!」
二人で部屋を出て、部屋の鍵を閉めて……すると、目の前に……。
「なんで、あんたがいるのよ!」
「なんでって……おじさんに貰ったから……。」
「もぉ―――っ! お父さん!」
「おひさ~、拓海君。」
「おう、おひさ。やっぱり詩織ちゃんだったんだ。」
「やっぱりって何よ!」
「おじさんから、2枚美里に渡して、もう2枚を俺に…って聞いてたから……。」
「お父さん! 私には何も言わなかったのに!」
「そりゃあ、直ぐ傍に居る俺の方が言いやすかったんだ。
お前、たまには実家に帰って来いよな。おじさんとおばさん、心配してるぞ。」
「分かってるわよ! あんたに言われたくないわ!」
「また始まったね。いつもの……犬も食わないやつ……。」
「犬も食わないやつ!じゃないから!」
「犬も食わないやつ!じゃないから!」
「おお―――っ! 流石、息が合ってる。」
「合ってません!」
「合ってない!」
「プッ……そこも……合ってる……。
……お久し振り……。」
「お久し振り。元気だった? 詩織ちゃん。」
「ありがとう。元気よ。翔太君は?」
「ありがとう。元気だったよ。」
「詩織、早く行こ!」
「うん。……じゃあね、拓海君、翔太君。」
「うん。」
美里と二人で歩き出すと……後ろから拓海君と翔太君が付いて来た。
気が付いていないのか?…美里は「腹立つぅ~!」と言ってからは無言でフロントに向かっていた。
「教えてください。ピンポンは出来ますか?」
「卓球台はこの先にございます。
真っ直ぐにお進み頂きますと見えて参ります。」
「ありがとうございました。」
振り返ると拓海君と翔太君が直ぐ傍に居て、拓海君が美里に言った。
「なぁんだ。卓球するのか?」
「悪い?」
「否、面白い! なぁ、勝負しないか?」
「勝負?」
「うん。ダブルスで!」
「やってやろうじゃないの!
負けないわよ! ねぇ、詩織。」
「絶対、勝つ! 翔太、やろうぜ!」
「美里、不利よ。」
「なんで?」
「実力差がありすぎるわ。
私はピンポン! あちらは卓球! 勝てないわ。」
「そうだなぁ~、頼んだら……ハンデありにしてやるよ。」
「頼んだらぁ~!」
「なぁ…拓海、組む相手変えよう。」
「変える?」
「うん。俺と美里ちゃん、お前と詩織ちゃん……そうすればいいんじゃね。」
「そうして貰えると嬉しいな~。」
「詩織ちゃんがそう言うなら……。」
「美里ちゃんは? いいかな?」
「いいわ。それで……。」
「じゃあ、卓球大会開催だぁ~!」
「ピンポン! ね。」
「ピンポン! ね。」と呟いた言葉を多分……誰も聞いてなかった。