兄妹
兄が家を出て暫くしてから急に話し合う必要があることに気付いた。
急ぎ電話を架けた。
(詩織……なんだ?)
「お兄ちゃん、先のことなんだけどね。」
(うん。)
「将来、お父さん、お母さんを介護しないといけなくなった時……
私一人にしないでよね。
お義姉さんにして欲しいっていうことじゃないの。
お兄ちゃんが子どもなんだから、ね。
私と二人で助け合いながらして欲しいの。
私一人に押し付けないで欲しいの。
それだけは、今からはっきりしておきたいと思うの。」
(分かった。
うちのは……絶対にしない……言い切れるから。
でも、その時になったら今度はお前ひとりにしないから……。)
「絶対よ! 今の言葉、忘れないで!」
(忘れないよ。)
「頼みます。」
(頼みます……か……もう……仕方ない、な。)
「お兄ちゃん、気を付けて帰ってね。」
(うん。)
「お義姉さんによろしく!」
(うん。詩織……。)
「うん? なぁに?」
(いや……何でもない。元気で居ろよ。)
「うん。じゃあね。」
これから先、いつか来る日。
会社では介護のために退職した人が居る。
介護している人も居る。
いつか来る日のために、兄には一緒に介護して欲しいと思った。




