翔太
拓海君と会う場所に向かう途中、美里のことを拓海君に話すべきかどうかと思いを巡らせていた。
待ち合わせの場所に着いても思いを巡らせていたら、「お待たせ!」と声がした。
目を上げると、拓海君と翔太君……そして…誰?
「あっ! 話してなかったっけ?」
「聞いてませんけど。翔太君が来ること……
それに……そちらの方についても……何も聞いていませんけれども!」
「ごめん。悪かった。」
「詩織ちゃん、俺も悪かったんだ。
急に俺から頼んだんだ。俺達も同席したいって…。」
「すみません。」
「あの……取り敢えず、どっかに入りません?
ここで話すんですか?」
「あ! 入る店、決めてるんだけど……
いいかな? そこで……。」
「いいです。」
「……あの…さ、詩織ちゃん、敬語止めて貰えるかなぁ~。」
「どうしてですか?」
「……怖いから……怒ってるんだよね。」
「えへへ……ちょっと怒ってました。」
「…ごめん。」
「それだけじゃなくって……そちらの方の前で馴れ馴れしくっていいのかなぁ~
と。」
「あ……配慮したんだ。」
「もちのろんです!」
「もう、いつもの詩織ちゃんでいいのに……。」
「拓海君に言われてもね。」
「取り敢えず、入ろうか? 店に!」
「はい。」
店に着き、予約してくれていた席に着いてから、ゆっくり紹介してくれた。
翔太君の隣の美人さんは、翔太君が別れた後も忘れられなかった人だった。
「そうなの! 良かったね。戻れて!」
「ありがとう。」
「それで? もう一度お付き合い出来ました!だけなのかなぁ~?」
「あぁ……。」
⦅まぁ……見つめ合ったりしちゃって……ラブラブじゃん。⦆
「結婚することになったんだ。」
「おめでとう! 良かったね。翔太君!
おめでとうございます。」
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
「…ということで、詩織ちゃんに会いたかったんだよ。」
「拓海君、私たち二人お邪魔でしょ。」
「そう言えば!」
「邪魔じゃないよ。」
「いいえ、お邪魔に違いないので……拓海君、出ましょう!」
「おうよ。
その前に、俺、トイレに行って来るわ。」
「おい!……たく、直ぐに出ないと!なのに……。」
「詩織ちゃん、そんなに気にしてくれなくても……。」
「あ……翔太君、拓海君が知らなかったら言わないでほしんだけどね。」
「うん。…何かな?」
「美里もお付き合いしだしたんだ。」
「そっか……良かった。」
「それでね、プロポーズして貰ったんだって……。」
「それで?」
「受けたって言ってた。」
「そっか……幸せなんだな。」
「うん。幸せになったよ。
お二人もお幸せに!」
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
「あの、後学のために教えて頂きたいんですけれども…。」
「何?」
「彼女に!」
「あ!」
「何でしょうか?」
「何故、別れ話をされたんですか?」
「私、仕事が好きで、今までのキャリアを捨てたくなかったんです。
海外へ行く話が出ていて、私は彼よりも仕事を選んだんです。
そして最近、帰国したんです。
帰国して彼から申し込まれて……夢みたいでした。
仕事も彼も好きなので……。」
「俺は仕事に打ち込む彼女が好きなんだ。
だから、彼女を支えたいと思ってる。」
「いいですね。
いい夫婦になりますね。」
「ありがとう!」
「ありがとうございます。」
「お待たぁ~。………詩織ちゃん、聞かないの?」
「何を?」
「大か」
「聞きません! 止めぇ~!」
「そう?」
「早く帰りましょう! 後は若いお二人でっ!」
「見合いかっ!
……じゃあ、次は結婚式でお会いしたいです。」
「はい。私も……。」
「じゃあ……詩織ちゃんを送ってくれるよな。」
「もちのろん。」
「さようなら。」
「さようなら。」
この瞬間まで拓海君に美里のことを話すかどうか決めかねていた。




