年下君
美里の彼……いいや、婚約者は同じ会社の2歳下。
だから、私は「年下君」と呼んでいる。
彼がずっと前から美里に想いを寄せてきたことは知っていた。
ちゃんと紹介して貰っていなかったが……。
美里と食事をした時に、たまたま(?)同じ店に居たことが何度かあった。
その時に少し話をしただけだった。
そう……あの日が初めて会ったんだった…。
「このお店ね。」
「うん。いい感じでしょ!」
「ほんと、いい感じ!
誰に教えて貰ったの?」
「後輩よ。」
「会社の?」
「うん。予約もしてくれたんだ。」
「予約まで!」
「いい席よね。」
「うん。」
「お食事も、コースがいいって言ってくれて予約してくれたのよ。
割引のチケットも貰ったんだぁ。」
「そこまでさせたら悪いわ。」
「でも、向こうからしてくれたんだよ。」
「それでもさ……先輩らしくないよ。」
「そっかな?」
「そだよ。」
めっちゃ久し振りのコース料理に舌鼓を打っていたら……イケメンが声を掛けて来た。
「美里先輩。」
「あれっ? 今日、ここに来る予定だったの?」
「そうですよ。」
「デートぉ?」
「違います!
……ところで、どうですか? この店。」
「すっごくいいねっ! ありがとう。」
「いいえ、先輩のお役に立てたなら嬉しいです。
……ところで、先輩。こちらは?」
「あぁ、私の友達なのよ。」
「仰ってたように、お友達とご一緒だったんですね。」
「そぉよ!」
「じゃあ、僕はあっちですので、失礼します。」
年下君は頭を下げて「あちら」の席に向かって行った。
⦅私をほぼ……無視だったな。
これは……恋されてるな。
そして、それを自覚していない美里。
何度も見て来た光景だな……。⦆
それが初めて会った年下君だった。
今度はちゃんと紹介して貰おうと思っている。
そして、今日会う拓海君のことが気になっている。
知っているのか、それとも……まだ知らないのか……。




