表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

179/195

70−3 拘束

 ローディアは敬遠な信者ではないのだろうか。ヴェーラーに対して否定的な言葉に思える。

 予言ができなければ価値がない。異世界人出現の予言がそれほどのものとは思えないのだが。


 ヴェーラーであれば予言はできなければならない。言い換えれば、玲那が異世界人と疑っていて、それに対してヴェーラーが予言できていないと言っているならば、問いかけはヴェーラーにではなく玲那にということかもしれない。


 疑ってるなあ。でも証拠なんて一生出ないよ。使徒が現れない限り。もしくは、使徒の呪いの出生に関する質問がうやむやにならない限り。

 そもそも、使徒のミスなのに、なぜ予言できるのだろうか。聞いたことがなかった。

 そして玲那は予言されていない。玲那は他の異世界人と違い、別の体を持ってここにいる。

 自分自身でこの世界に現れたという違いのせいだろうか。


「そこまで重要なことなんですか? ヴェーラーが予言できないってことは」

「ヴェーラーは神の使徒です。大魔法使いの名を借りるだけの者であれば、当然にそれが行えなければならない」

 大魔法使いヴェーラーの敬称を得た、現代のヴェーラー。予言の力がなければその名を得るべきではないということか。しかし、それを玲那に言われても。


「ちなみに、ヴェーラーって終身なんですか?」

「そうと決まっているわけではありませんが、ほとんどがそのようになっています。意識のないまま目覚めないなどがなれば、大神官が後を継ぎます。病でヴェーラーを辞された方もいらっしゃいましたが、話ができるならば問題ないので、終身といって良いでしょう」

「ヴェーラーが、次のヴェーラーを選ぶんですか?」

「王族の介入もあります」

 その時点で継承できていなくないか? ヴェーラーの名前を継いだ者が、次のヴェーラーを選ぶならまだしも。


「だったら、そのヴェーラーが絶対に予言できるって保証はないですよね。政治介入しちゃってたら、利権問題で選ばれるのでは?」

「ぷ。ははっ。はっきり言いますね」


 ローディアが笑い出した。笑えること言ったか? 弾けるように笑って、人形くささを消した微笑みを見せる。美女の微笑みに、一瞬恐れおののくかと思った。傾国の美女の微笑みすぎる。美麗な微笑みに恥ずかしくなってきた。

 こんな笑い方もできるのか。いつもこんな風に笑っていればいいのに。それこそ国が傾くかもしれないが。


「あなたは本当に、この国が信じる神を、俯瞰して見ていらっしゃる。あなたの国にもヴェーラーのような神はいるのでしょう?」

「えーと、まあ、そうですね」


 神について聞かないでほしい。使徒のことは置いておいて、宗教観はまったく違うだろう。信仰心はあっても、身近すぎて、孤高の神を敬うとも違う。貧乏神がいる国に、ヴェーラーと同じものを求められても困る。

 神がいるのを信じ神社に行くと言うより、そこにあって当然で、目の前にあるから参ろうと思う、習慣のようなものだ。行くからには参ろうと思う。けれど畏怖も持っていて、祟りなどの目に見えない恐ろしさのようなものに理解がある。失礼をすればバチが当たるという、信仰心がなくとも行ってはいけないこととして習慣づいている。


 仏もまた然り。こちらは身近な人が亡くなったのだから、さらに親近感があって、神とは違う。

 これをこの世界の宗教として捉えるのは難しいのではなかろうか。身近にあるもの全て神に直結している宗教観と、大魔法使いという偉人の能力は同じにはなれない。役に立とうが立たなかろうが、神は神なのだから。


「ヴェーラーは万人を癒すことができるのですから、その力の前では誰が選んだなどと問題ではないのですよ。ですから、信じる神を蔑ろにするような発言は、この国では控えた方が良いでしょう」

 先に言ったのはローディアなのだが。しかし、これは忠告だ。他で言えば不敬で、王族の前で言えば不敬だけでは済まない。


 国の偉人である大魔法使いヴェーラーは、王族の補佐のようなものだったのだから、当然か。目の前で簡単に病気や傷を治してくれるのならば、神だと思っても仕方がないのだし。

 それにしても、意図が見えない。忠告したかったのか? ローディアの神に対する思いを吐露したかっただけか? 後者はないと思うが。


「忌憚のない意見は参考になりますね。大魔法使いであるヴェーラーと現在のヴェーラーでは意味は違いますが、大魔法使いの教えを享受しています。同じではないが、相当であるとされて選ばれます。けれどあなたの言う通り、予言ができるかは話が違います。確実に予言がなされるとは限らない」


 だからあなたは異世界人ですよね? とか聞いてきそうな勢いだ。ローディアの質問はすべてそちらに直結している気がしてきた。それを肯定すれば、今のヴェーラーに能力がないことになるわけだが。言ったら言ったで、不敬すぎるってわけである。

 異世界人だと思って、忠告してきているのか? もう謎すぎて頭がこんがらがってきた。


「ところで、」

 面白がるように笑っていたローディアの声が、急激に冷えたものになった。

 ローディアの片手が青白い光に包まれると、それを振り下ろした瞬間、光が飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ハラハラドキドキです。もうどうなっちゃうんですかー!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ