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55−3 集合

「骨とか皮は使わないんですか?」

「皮は使えるだろうが、今は持っていける量が限られているからな。骨は、……なにに使うんだ?」

「出汁とか」


 なんなら、肥料とかにできないだろうか。粉砕して畑に撒きたい。狂牛病みたいなものとかあるかもしれない。なんとも言えない。病気は怖い。食べなければ問題ないだろうか。未知の病原菌とかありそうだ。なにせ個体は魔物。


「だし? だしってなんだ? 骨をどうするって?」

「骨からうまい出汁が取れるじゃないですか。病気とかなければですけど」

「……」

「……」


 料理長が口を閉じて黙ると、後ろにいた男性に骨も持ってこいと命令した。普段は使わないが、玲那の言葉で骨を持って帰る気になったらしい。

 病気とかないよね? 不安だ。


「骨をどう使うんだ?」

「煮るだけですよ。いらない骨とか、いらない野菜とか、色々。とりあえず煮込む。何時間も」

「それじゃ、これから行く場所では無理だな。持って帰ってやってみるか。うまいものが作れるのか?」

「どうでしょ。魔物の骨がどんな味になるかは」

「試そう! その時は付き合え!」


 うまいものができるならば手伝いたい。その気持ちはうきうきになるが、先ほどの魔物で負傷した者がいたようで、急に危険さを思い出す。

 治療士が同行しているようで、治療をしてもらっていた。行きだけでこれとは、安全はないに等しい。しかも雪の中、歩くには体力がいる。その後も何度か背後から急襲に遭った。魔物からすれば前方も後方もないので、餌がいるかテリトリーに入り込んだ何かがいるか程度で襲ってくるようだ。

 自分は間違いなく場違いだ。戦ってもいない玲那も歩き続けて疲労が溜まった頃、やっと建物に到着した。


「わー」

「なんだよ、その感情のこもっていない、わーは」

 すでにたどり着いていたオクタヴィアンが、疲れもなさそうな顔をして突っ込んできた。暗殺に気をつけて戦わないように後方にいる話はなかったようだ。魔物の体液でも浴びたのか、服が赤黒く濁った色で染まっている。匂いもするので若干下がる。


「とても歴史のありそうな建物ですね」

「魔物の巣窟にある建物だぞ。ぼろいに決まってんだろ」

「はあ」


 ボロいと言うか、廃墟では?

 とは言わず、その建物を見上げる。

 石で作られた建物は城と同じ。砦のように壁に囲まれている。だが、一部の壁に穴が空いていたり、壁や屋根が崩れていたり、壊れて倒れた柱などが転がっている。どこの柱が壊れているのかもわからない。建物から離れたところに転がっているからだ。


「昔、魔物に中に入られて、完全にぶっ壊れたからな。その名残りだ」

 結界張ってあるって話はどうなった?

「今は中に入られたりするんですか?」

「さあ、どうだろうな」


 オクタヴィアンがニヤリと笑う。こちらを脅かす気満々の悪い顔だ。人が悪い。そういったことはないと思っておこう。頭の上のリリに触れて、しっかり座っていることを確認する。もしもの時はリリが動いてくれるだろう。最悪、玲那のビットバが飛んでしまう。それだけは避けたい。こんなに人がいるところで、ビットバは放ちたくない。


 建物の中は思ったよりしっかりしていた。壊れていても中には魔物はいないそうだ。壊された時は結界が緩んでいたとか。緩むことがあるのが恐ろしい。

 石組みの建物の中はやけに冷えた。雪がないだけマシかと思ったが、底冷えする。窓のない一階は暗く、地下にいるような気分になった。あちこちに松明のような光が置かれている。魔法のライトだ。まじまじ見ていると、食事を作るからと言われて料理長の後をついた。


「なんか拾ってただろ」

「見てましたか」


 時々枝とか折っているのを見られていた。みなが魔物と戦っている時、隠れて怯えつつ、木の根元を掘っていたりもした。余裕があるわけではないが、気になったら欲しくなるのが心情。冬の食べ物としてチェックしておいたので、食べられるとわかっているものもあった。念の為、本でもう一度確認したいところだ。


「食べられるのか?」

「わかんないです。調べてみないと」

「どうやって調べるんだ?」

「りょ、料理長に確認してもらった方がいいかと。変なもの食べて全滅させるわけにはいかないですからね!」


 さあ、確認してくれ。と前に出す。料理長はなにも疑うことなくチェックしてくれた。

 あっぶな。本持って来てないし、家帰らないと調べられないんだよね。あの本は見せられない。家でも隠してある。いつ認可局長来るかわからないし。


「これは食えるんじゃないか? こっちはわからんな」

 食べられそうなものは、百合根のような根っこと、枝から取った木の実だけか。木の実と言ってもまだ採るには早かったらしく、苦味が強いとのこと。食べ方を考えなければならない。百合根のような根っこは、スープに入れて食べる。カブのような水気のある根菜だ。


 料理長は他の男性に運んでもらった魔物肉を広げる。手持ちのクーラーボックスのような箱も運ばれてきた。そこから出てきたのは卵だ。すべて卵である。他の箱には小麦やスパイスなど。人数分の食事とあって、かなりの箱が運ばれてきていた。

 その中には酢などの液体の瓶も入っている。きっちり詰め込まれていたが、気になるところがあった。

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