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55 集合

「なんで、私が」

「おうおう、不服そうな顔してんなあ」

「してますよ。不服です」


 料理長から声をかけられて、玲那は顔を膨らませた。朝早くから扉を叩く音がして、飛び起きたのだ。また泥棒がやって来たのかと思ったが、それはオクタヴィアンからの使者で、オクタヴィアンが呼んでいるから、すぐに来いと言われた。

 それで仕方なく、温かい格好をして出てきたわけだが、城に来れば謎の団体が集まっており、どこかへ行く用意をしていた。


 どこって、森である。

 これから、魔物討伐だそうだ。

 それでどうして自分が呼ばれたのか。問いたい。ずっと顔を膨らませていると、料理長が肩をすくめた。


「悪いなあ。俺が頼んだんだ」

 なんだと? じろりと見つめると、料理長は手伝いが欲しかったからなあ。と笑って行ってしまった。なんと余計な真似を。こちとら風邪気味だというのに。

 魔物討伐に玲那が加わってどうなると言うのだろう。


 討伐に加わる人々は多く、かなりの大規模なものだとわかる。

 討伐騎士だけではなく、城の騎士たち、見知らぬ者たちが集まっていた。フェルナンとオレードも当たり前にいた。そして、


「なんであの人もいるのか」

 玲那はぽそりと呟く。

 その姿を見ていれば、にこりと微笑まれて、こちらは苦笑いで返してしまった。見ているのに気づかれていたようだ。


 名前はなんと言ったか。紫色の目をした、銀髪の男。森で会った、あの神官だ。

 こっちの人、名前難しいんだよね。思い出そうとしても思い出せない。

 ろーでん? 漏電? なんだっけ。忘れた。


 とにもかくにも、不遜な神官も一緒に行くようだ。雰囲気が怖いので、近寄らないようにしたい。

 さて、自分はどうすればいいのか。料理長が招くので、そちらに一緒に行くことにした。オクタヴィアンもそこにおり、玲那を見るなり、


「お前はその辺で草でも採ってろ」

 と言ってきた。

「なんか、機嫌悪いんですか?」


 オクタヴィアンが不機嫌に言い放ってくるので、そう問うと、嫌そうな顔をしてきた。ご機嫌斜めだ。横で料理長が、どさくさに紛れてなにかあったら困るから、今日はオクタヴィアン様は騎士たちに挟まれているんだよ。と教えてくれた。なるほど、それで不機嫌だそうだ。


 領民のために食糧事情を鑑みて魔物討伐が決まったため、同行人数が多い。先陣切って討伐を行うつもりだったようだが、注意でもされたのだろう。渋々真ん中にいるため、ご機嫌斜めである。

 まあ、ダメだよね。これで暗殺とかあったら、目にも当てられない。そのためオクタヴィアンの側にはいつもの二人がいる。長い金髪のラベルニアと、赤毛の短髪、名前はルカと呼ばれていた。その二人が周囲を常に確認していた。


「前と同じとこ、行くんですか?」

「いや、違う。もっといい場所だ」


 オクタヴヴィアンがにやりと笑った。寒気のする笑いだ。

 森に行くにはまた魔法陣でテレポートして行くらしい。討伐騎士たちが先に移動している。

 荷物と一緒に並んで、順次移動していた。


「大名行列じゃん」

「なんだって?」

「なんでもないです。すごい行列ですね」

 オクタヴィアンが不機嫌に問いかけてくるので、適当に言っておくと、泊まりがけで行くからな。と言ってきた。


「は?」

「泊まりだ」

「先に言ってくださいよ!」

「なんだよ。聞かなかったのか?」

「聞いてないですよ! オクタヴィアン様が呼んでるって言われて、そのまま来たんですから!」

「結界の張った建物がある。そこで泊まって奥まで行く」


 オクタヴィアンは知ったことかと軽く説明をくれた。この野郎。

 まずは泊まる建物に移動するそうだ。テレポートした場所から、その建物へ向かう。

 テレポートしたところが泊まる建物じゃない謎。


 テレポート先はあまり魔物が出ない場所で、いても強くないらしい。たどり着いてすぐに魔物に出会っても、対応できるような場所に移動するということだ。テレポート先の魔法陣は常設されている。石の台に刻まれているため、壊されては困るのだろう。


 泊まる建物は強い魔物がいる場所で、結界が張られている。そこに直接テレポートすれば良いのでは? と思うのだが、建物はそこまで広くなく、テレポート先が広くないらしい。なので、今日の食事を狩りながらその建物に向かうそうだ。

 建物から先にはさらに強い魔物がおり、その魔物たちを狩るための地点になるとか。行きたくない。

 非戦闘員は、先にその建物にテレポートさせてもらえないだろうか。


「ここで戦えないの、私だけかな」

 みなさん剣を持っている。料理長ですら持っていた。数グループに分かれてテレポートするようで、オレードとフェルナンは先に行ってしまった。そこに不遜な神官もいたが、彼も剣を持っていた。戦いが得意そうに見えないが、なんでもできる人と言っていたので、魔法でちょちょいのちょいと倒せるのかもしれない。

 森の奥へ進むそうだが、頭の中で地図を思い描く。食料が足らない村に配ると言うことだが、領地の村が幾つ点在していたか、思い出せない。それでも少ない数ではなかったはずだ。


「どんだけ獲るんだろ」

 領土の村人たちに与えるだけの物って言ったら、相当じゃない? 魔物の肉は腐りやすいと言っていたが、冬だから保管が可能としても、かなりの量を取らなければならないのではなかろうか。

 数人で魔法陣に入り、移動する。二度目とはいえ、慣れない魔法に落ち着けと料理長に頭を押さえられた。


「俺から離れるなよ。オクタヴィアン様の言う通り、なにか食えそうなものがあるなら拾ってくれ」

「こんな雪の中、あります?」

「草食の魔物もいるから、雪を掘った跡がある。そこに食える物はあるんじゃないか?」

「適当ですねえ」

「前に森に入った時、なにかと採って来たんだろう? なにかあるんじゃないか?」


 適当すぎる。冬で極寒で、豪雪地に、そんな食べられる物が生えているものだろうか。まさか、そんなことのために自分を呼んだのか? そんな気がする。

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