回想
僕はただの中学生だった。大人数と一緒に授業を受けるという、教育で当たり前のスタイルは、大人数が苦手な自分にとっては苦で、いつも旧校舎に残された保健室にいているか、家で一日を過ごすか、だった。両親は僕がクラスに馴染めてないのでは、ととても心配していたが、クラスメイトと仲が悪かったわけでもなく、それどころかみんな、こんな僕でもいつでも手伝い、助けてくれた。彼らにとってはちょっとした事かもしれないが、僕にとって本当に頼りだった。
でも、その日常は一瞬で崩れた。
政府が、防衛を超えた武器の使用を承認した。そのことに国際社会は反発、どうやら裏で日本を崩さなければならない、となったようだ。
突然街に響き渡ったJアラート。
生徒のざわめきは、新校舎から旧校舎まで聞こえた。
そして、あたりは光に飲み込まれた。
状況はすぐには理解できなかった。だが、現実はすぐに戻ってくる。
空襲。新校舎に爆弾が落とされた。街にも。あたりをすべて焼き尽くす。
幸か不幸か、旧校舎への被害は爆風のみ。偶然だった。でも、自分には不幸だった。炎に飲まれ、焼かれ、助けを求める声。
恐怖を感じた。
燃え上がる炎がすべてを飲み込む。
悲鳴も出なかった。
あまりに突然すぎた。
すぐに旧校舎にも火がまわり始めた。
すべてが燃えていく。
自分にできたのは、空に叫ぶだけだった。
そして僕は、気を失った。
「何と言うか、なかなかに理解し難いな…。」
コハルがそう呟いた。そりゃそうだ。自分も、今でも理解できずにいる。
でも、彼に話して良かった。ある程度、心の整理ができた。ただ、単純なことだ。
クラスメイトも、街の人も、家族も
みんなしんだ。
それに納得した瞬間、涙がまた溢れ出た。ああ、泣いてばかりだな。泣いていても何も変わらないのはわかっている。わかっているが、感情の制御ができずにいる。
コハルが、僕を優しく撫でてくれる。僕は、泣き続けた。気持ちが落ち着くまで。
「…。」
眩しい。気づけばどうやらあの後寝てしまったようだ。毛布がかけられている。
「起きたか。」
コハルが後ろから声をかけてきた。
「うん。」
コハルを見ると、目にくまができていた。あの後も、寝ないで見守っていてくれたようだ。…優しい。
「魚、釣ってきたから食べよう。」
見ると焼き魚があった。まだ日が昇ってすぐなのに、慣れているんだろう。流石だなぁ。
二人で向かい合って座ったけど、なんとなく気まずく、何も喋らなかった。
食べ終わり、野宿の後片付けを終わらせ、また歩き始めた。まだ道のりは長い。