始
燃える。燃える。何もかも。現実を知ることすらままならない。
悲鳴。
また1人、また1人。
逃げ惑う。そして倒れる。
また1人、また1人。
助けを求める声。響き渡る。
また1人、また1人。
揺れる。視界と熱気。狂気。
自分はなぜ…。
生きている。
……………………………………………………………
「………!………!……………………ろ!」
誰かの声。響き渡る。はっきり言ってうるさい。
「…起きろ!」
聞き覚えのないその声で僕は目を覚ました。
目の前に、見慣れない顔。
精悍な顔だなぁ…、誰だろ…。
「起きたのならなんか言ってくれよ!!」
その少年が叫ぶ。
「うるさいので、静かにしてもらえますか?」
「…………。」
しばしの沈黙。
周りを見渡すと、荒廃した都市。
崩れたビル、苔と雑草の生え渡った道路。
いや、待って。
自分はさっきまで焼けてゆく学校にいたはずじゃ…?
しかも、この目の前の少年は?
「ここは?」
「おかしなことを聞いてくるんだな。ここは旧第四東海自治区。こんな無法地帯で寝てるなんてすごい度胸だな。」
「だ、第四東海自治区…?どこ?」
「君は何を言ってるんだ。じゃあきみはいままでどこにいたんだ?」
「…別府」
「………。どこだそこ?」
…え?別府がわからない…?
「大分の…。」
「大分…。九州地区か?」
九州…地区?駄目だ、全く持ってわからない。
東海もわかるけど、旧?第四?自治区?
どうなってるんだろう?
二人して、この訳の分からない状況に黙り込んだ。
ふと、自己紹介がお互いまだだったことに気づいた。
「えっと…、山ノ瀬 優花です。…よろしく?」
「アオ・コハルだ。君の名前、珍しいな。まあ、よろしく。」
…………珍しい?よけい訳が分からなくなってしまった…。
「師匠ならわかるか?行きたくないが、行くか。」
ししょー…。一体何がどうなってるのか、分からない…。
「いくぞ。しばらく歩くことにはなるが、大丈夫か?」
「うん。ここに居ていても何も解決しないし、僕一人じゃどうしようもないから。」
そして、僕らは歩き始めた。
が、その後コハルの"しばらく"を思い知ることとなる。