疑問
『2054/10/02
あれから一ヶ月。歯車を回したのは果たして正解だったのだろうか?今は何の動きもない。あんな世界の法則を無視したものは動くわけもないと思っていた。だが、動かす時が来てしまった。動かした。そして、それは動いてしまった。連合のしたことも世界の法則を無視したものであるが、我々がしたことはそれを遥かに超えるものだろう。それでも、今になっても何も動きがないということは、やはり失敗なのだろう。そうだ、我々は何もしていない。何も知らない。歯車は、永遠に地下にある。ただの置物なのだ。誰も動かすことのできない、ただのオブジェなのだ…。』
「文字が…、出てきた!」
「まさか本当にこんな事ができるとは思ってもいなかったけどね。」
そんな会話をコハルとしながら、僕はこの内容について考えていた。歯車?法則?失敗?何がなんだか分からない。でも、一つ言えるとすれば。
「これは、僕に関係ありそうだな…。」
「そうかもしれない…。いや、そうだろう。だが、情報が少なすぎて何もわからないな。」
「なんとも言えないな。」
みんな黙り込んでしまった。
「今言えることは、優花くん、君がここにいるのは、この文を書いた人の所為かもしれん。」
「…ですよね。」
「他に手がかりはないんだろ?とりあえずこれについて考えようぜ。」
そのコハルの言葉に、僕と師匠は頷いた。
…結局考えてもわからなかったので、コハルと外に出た。はしごを登りきると、何日ぶりかもわからない星が空に広がっていた。
「きれい…。」
「そうだな。今日は特にきれいだ。」
しばらく地面に寝転がって空を眺める。
「あの星の輝きも、実際は昔の光なんだな。」
「だね。今はどうなっているかはわからない。」
そのまま、続ける言葉も思いつかず、ただ星の光を受ける。
「そろそろ戻るか。冷えてきたし。」
「うん。」
コハルと僕は起き上がり、地下へと潜った。
朝はやってくる。今日も。毎日。
こーん、こーん
壁にかけられた時計が鳴る。朝の6時。
僕は布団からでて、パーカーを羽織った。僕専用の部屋(師匠が用意してくれた。)をでて、リビングに向かう。
「あ、おはよう。」
「おはよう、やっぱりコハル早いね。」
「そりゃね、コックの朝ははやいぞ〜。」
コハルが笑いながらそう言ってきて、思わず僕も笑う。
その後、僕も朝食の準備を手伝う。ちなみに、師匠もすでに起きているはずだが、毎朝体操したり、地下にある畑の整備をしたりしているようだ。昨日の朝に初めてそれを知った。無限に出てくる野菜は畑からであった。まあ、そりゃそうだよね。
朝食を食べ終わり、昨日の夜と同じようにコハルと外に出た。通路は片道10分だから、いつもは行かないけれども。
外は霧で白くなっていた。
「寒い…。」
今は12月。息も白くなっている。
「もう冬か。」
コハルも呟く。
ふとコハルを見ると、ある一点を見つめている。スクランブル交差点の方。距離がかなりあるから、晴れていてもいつもみえない。でも今日は、僕もスクランブル交差点に違和感を感じていた。何と言うか、磁場の異変?
その時、僕らはハッとした。誰かが、こっちに来ている。徐々に、徐々に。コハルは万一に備えて、拠点のハッチを隠す。…え、拠点に逃げないの?僕も逃げる気はないけれども。あと10メートルといったところで、その人も僕らに気づいたようだ。そして、。
「何者だ。」
そいつは、僕らに拳銃を向けた。