そして少女は大将を導く
皆様も二次創作書きましょう。
「よし、じゃあ今日はこの先の村で泊まるのを目標にして、この周辺で素材集めやモンスター狩りだな」
「うーい、頑張ろう」
ユカさんの号令と共に、皆が各々草むらに屈んで素材集めをする。私も続けて素材集めをする。そして、敵が近づいてきたら戦闘をした。
「大丈夫、大将」
「ああ、それよりマリコの回復を」
「……はい」
そして戦闘をする。
「オノットは頑張ってくれたな。回復してやってくれ」
「……はい」
そして戦闘。
「オニキスの回復をしてやってくれ」
「……はい」
そしてようやく採取。移動をしていないのに、何度も戦闘があってようやくの空白の時間だ。
「……」
でも何だろう、この焦燥感は。何か、とんでもない何かに足を突っ込んでいるような……。
「! 危ない!」
「へ」
「テルルさん避けて!」
そう言った瞬間だった、テルルさんの背後に巨大な鎌が振り下ろされて、それをヒバチさんが守ったのは。
「大丈夫か、テルル」
「は、はい」
「何で、お前がいるんだよ」
私も不思議だった。そのモンスターは普段は巨大な花に擬態していて、普通近づいた場合にしか動き出さないはず。
「何でブルーム・チョッパーが現れるのよ!」
『クキキキキ』
巨大な花蟷螂のモンスターが醜悪な顔を歪ませているように見えた。
「全員密集陣形! マリコとオニキスとユカは前衛! ミロ、テルル、オノットは後衛でいろ!」
言われるまま、私たちはそれぞれ陣形を組みなおす。
そして次に蟷螂の鎌はマリコさんを狙って襲ってくる。
「させるか!」
オニキスさんとマリコさん、二人の力で蟷螂の攻撃をはじき返す。だが、蟷螂も負けずにもう一本の腕で攻撃をする。
「おらあ!」
そこを、ヒバチさんが盾で跳ね返す。
「炎!」
「二段切り《ダブルスラッシュ》」
そこで攻撃が両方弾かれたことで防御手段を失った所を、テルルさんの炎の魔法、そしてユカさんの攻撃が命中してダメージを与えた。はずだが。
「まだ攻撃来るぞ!」
今度は蟷螂の横薙ぎ。それをヒバチさんがもろに受けてしまい地面に倒れる。そして続けてユカさんが袈裟懸けにより足を鎌で攻撃されてしまう。
「ヒバチさん」
「早くユカを回復しろ」
「え?」
「早く!」
納得は出来ずとも、言われるまま私はユカさんを回復する。でも何で。
「オノットに回復を」
なんで。
「オニキスに回復を」
なんで。
「!」
そして、その時が来たように感じた。マリコさんが剣で攻撃を防ぎきれずついにもうだめかと思った瞬間……。
「待って、大将」
ヒバチさんは盾を捨てて走り出し、敵とマリコさんの間に入り込み……。
「中治癒!」
回復魔法の恩恵を受けながら、鎌の攻撃によるダメージを一身に受け止めた。
「何で! どうして大将は」
「良いからまずはモンスターを倒しますよ!」
「ミロ! どうして回復した!」
そこで、ヒバチさんは見た事ないほど激昂していた。
「どうしてここで殺して……」
「今は生きることに集中してください! 私はメディックとしてあなたを絶対に死なせはしません!」
「くそ」
その言葉を最後に、ヒバチさんは指示をしなくなった。だが、間違いなく仲間を守り続けてくれた。そして、何十分かかっただろうか。
「説明してくれますよね」
「……」
モンスターを倒した後、私はヒバチさんを尋問していた。
「ヒバチさん、あなた自殺しようとしていましたね」
「え」
「多分ですが、武器や防具の新調もそんなに効果が無いのを知っていてやったんじゃないですか」
「え!」
「それに、モンスターを引き寄せるのも、あなたの魔法じゃないですか」
「ちょちょ、ちょっと待って」
そこで、ユカさんが話に入って来る。
「どうして、そもそも何の話が自殺に繋がるのさ」
「まずですが、あなたどうして回復魔法を私に使わせようとしなかったんですか。いくらパラディンだからって限度がありますよ」
「……」
「それから、私はこう考えました。多分自殺しようとしているなって」
「体力を、意図的に減らしたって事……ですか……」
テルルさんが顔を蒼くして質問する。それに私は頷いて返した後、話を続ける。
「そして、じゃあどうやって減らすか。パラディンならあるんじゃないですか。モンスターの注意を引き付ける魔法」
「挑発、そんなのもそう言えば覚えていたね」
「多分意図的に採取に見せかけてモンスターに近づいて、そして挑発をしておびき寄せた。違いますか」
「気が付かなかったのは、屈んでいて皆周りを見ていないから」
「リーダーだから最初にモンスターを見つけても、周囲に気を配っていると思い気が付かない効果も狙ったとか」
「そんな……」
「待てよ! どうして今更、大将はそんなことを!」
「そもそも火災の犯人が周囲にいるなら、一緒に死ねる状況が整っているなら死亡しようとしたって、とかですか」
「そこまででよしてくれ。あとはちゃんと話す」
そこで、ヒバチさんは話し出した。
「正直家族が帰ってこないことも、お前達が俺の仇だって事も理解しているつもりだった。でも、メンタルカウンセリングのおかげで少しずつ許せるようになったんだ。でもよ」
そこでヒバチさんは頭を抱えて呻き始めた。
「今の状況になって、もしかしたら俺もお前達も、一緒に死ねるんじゃないかって思っちまったんだよ。だけどよ、俺馬鹿だからさ、メディック入れて簡単には死ねないようにしたんだよ」
「どうしてですか」
「……家族がさ、まだこっちに来るなって言っている気がしてさ」
パン!
「ミロさん⁉」
「そこまで分かっているなら、最初から全部話してくださいよ。私は力も弱いし守られてばかりになります。でもあなたの心はきっと守れます。だから」
「……ありがとう、ミロ。ごめん、皆」
ヒバチさんはようやく感謝と謝罪の言葉を口にした。
「やっと街に着いた」
あんな事件があったが、雨降って地固まるというか、私たちは結束が強まる結果になった。それからは十分な資金を集めるだけの素材を回収できて、街に来ることが出来た。
「この後どうしようか」
「まずは素材を売ろうや」
「それより宿で寝たい」
「どっかカジノとか無いのかな」
「何馬鹿なこと言っているのよ」
「アップデートありましたし、もしかしたら」
「何言っているんですか」
火災の被害者と、その犯人に、全くの無関係者。そんな人たちの集まりのはずだが、何となく形になった私たちは、この世界を生き抜くために力を合わせるのだった。
原案となった元の作品です。著者:ヨシオカ フヨウ様
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