おかしな大将
皆さんも二次創作書きましょう
「買い物だけれど、じゃあ僕たちは回復薬や補助道具を買いに行くから」
「おう、じゃあ後でな」
運営からそう言って、マリコ、ヒバチ、テルル、オニキスさんと私、ユカさん、オノットさんが分かれて街にくり出す。各々必要な物を纏めてくるためだ。
「さて、これから次の街に行く訳だが、正直僕たちはかなり沢山のお店を回る必要があるかもしれない」
「そうなんですか」
「採取、採掘、伐採をするにしても、鍵開けや冒険するにしても補助道具は何が何処で必要になるか分からない。だから出来るだけ多めに買い揃える必要があるって話で意見が一致したのよ。私やオノットみたいな戦闘よりも他のことが重要な私達にはね」
なるほどと私は思った。
「それに、カーソル・ウィンドウが出なくなったからもしかしたらアイテムを収納するバッグが今までと違って必要だという可能性さえ考慮に入れる必要があるしね」
「よ、よく考えているんですね」
「あくまで可能性だけれどね。実は不必要だったとしても、その時はその時だ」
そう言って、道具屋に雑貨屋、他にも魔法道具屋などを見て回って多数のアイテムを買い込んでいく。
「ところで、ミロは大将のことをどう思う?」
オノットさんに突然そう話しかけられる。
「大将……ヒバチさんのことですか」
「ああ」
「ヒバチさんは、そうですね。いつでも笑っているけれど、とてもよく考えている。そんな人な気がしました」
「なるほど、僕とは全然違う印象だ」
「……え?」
「大将はね、家族を失ったんだ。あのマンション火災で」
「マンション火災?」
「俺達は全員同じマンション住まいの元同級生なんだ。小学校時代のね」
「はい」
そこで、今度はユカさんが話始める。
「でもね、大将は火災をきっかけに家族を全員失っていてね、一時期本当に廃人みたいだったの。そこでメンタルケアとして、このゲームを始めたの。元々メンタルケアとして利用していたから、ゲームのアカウント作るのは難しくなかったとは言っていたわ」
「家族をって、それにメンタルケア……」
遠い物だと思っていた。私は確かに元々そう言う用途だとは聞いていたが、だからってこんな近くにそれを使っている人がいたなんて。
「私たちはね、悔しいけれどあなたに期待しているのよ。私たちはどんなに取り繕ってゲームの中の友達として大将に償っても『火事を起こした放火犯』って言うのは変わりないの」
「あなた達!」
その突然のカミングアウトに、私は瞬間的に怒った。何故だろう、会ってまだ一日しか経っていない相手だと言うのに。
「ちょっとした火の不始末さ。花火をやっては駄目だって言われたエリアでやっただけ。それがマンション火災になって、賠償金も今だって払っている。正直、浄化だなんだ言われた時『当然だ』とさえ思ったよ、僕たちは犯罪者だから。でも『大将は違う』んだ。だからミロさん」
「「 大将を助けてほしい 」」
「よし、じゃあ武器を配るぞ」
そう言って、ヒバチさんは武器や防具を配り始める。
「よし、それじゃあミロさんの武器と防具な。回復魔法の効果を強めるように杖と、防御用の盾だ」
「え、ありがとうございます」
「ああ」
初めての武器だ、私だって自分で手に入れた事なんかないのに。そう思って装備して……あれ?
「あの、能力が」
「しー」
そこで、オニキスさんが口を塞いでくる。
「俺達だって半分分かっていたんだよ。こんな街で武器を新調したところで能力が飛躍的に上がる事なんかない。でも、しなけりゃ大将のメンタルがどうなるか分からないだろう」
「え」
「今はオノットさん達から話は聞きました。だから伝えますが、大将はメンタルが今大変落ち着いているんです。だから下手にメンタルが崩れるかもしれない言動や行動は控えてほしいんです」
「で、でもだからってこれは」
私が言う事じゃないが、もしかしたらお金の無駄だったんじゃ。
「よし、じゃあ早速出発だ」
「よーし、いくよー」
マリコさんが笑顔でそう言って、皆も続々続いて部屋を出て行く。
私はこの時、仲よさそうに見えていたチームの歪さに眩暈がした。
原案となった元の作品です。著者:ヨシオカ フヨウ様
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