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神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜  作者: 星井ゆの花(星里有乃)
正編 第2章 パンドラの箱〜聖女の痕跡を辿って〜

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 レティアへ。

 本来ならば、オレの魂を悪魔像に詰めたキミとはもう二度とやり取りをしたくなかったが、どうやら困っているようなので、一筆書くことにした。


 この手紙は優秀な精霊鳩ポックル君の一番弟子である新米フクロウ精霊フックル君に配達を頼んだ。もしフックル君が、食べ物をおねだりする仕草をしたら何かあげて欲しい。彼はまだ、この仕事に慣れてないはずだ。難しい任務のチップくらい弾んでやってもいいだろう。


 分かりきっていたことだが、悪魔と契約したキミはもうすぐ悪魔に魂を抜かれて死ぬ。エルドさんは自業自得だと仰ったそうだが、オレとしてはキミに最後のチャンスをあげたいと思う。


 次の会食は、アメリアとアッシュ王子が欠席するため、アスガイア神殿の元運営者で現在はペルキセウス王立騎士団で錬金術の顧問を務めるラルド氏が出席する。気づいたかも知れないけど、ラルドさんはエルドさんのお兄さんだよ。


 さて、その時に、親交の証としてキミに魔法の小箱が贈られるそうだ。おそらく、アメリアがアッシュ王子に嫁いだから、ペルキセウス国としては異母妹のキミにも気を遣わざるを得ないのだろう。

 この魔法の小箱はパンドラの箱の簡易版で、穢れや悪霊を吸収する力が備わっている。

 そのチカラを用いて、悪魔像の魂を吸収して、オレの身体を取り返して欲しい。そうすれば、キミも悪魔像の魔の手から逃れられるかも知れない。まぁつまり、これはオレからの交換条件だ。


 アメリアに対する謝罪は、しても仕切れない程だろう。が、彼女は今アッシュ王子と相思相愛らしいから、二人の仲を阻まないことがオレ達に出来る償いとなると思う。


 もし、万が一身体を取り戻せた暁には、きっちりとキミと婚約破棄して、お互い次のステージに進もうじゃないか。この手紙は読み終わったら、火で燃やして証拠を残さないでくれ。

 健闘を祈る。


 トーラスより。




「最後のチャンスね。っていうか、あのフクロウ、本当に精霊だったんだ。精霊鳩の弟子のフックル君ね……一応綺麗な羽根をくれたし持っておこうかな? フクロウは幸せの象徴だって、東方倭国では人気らしいし。あーあ、魔法の小箱かぁ……こんな時アメリアお姉様だったら、どう対処したのかしら?」


 レティアは手紙を指示通りに火で燃やし、証拠を残さないようにした。だから今日の出来事は通りすがりのフクロウに、餌をあげただけの思い出ということになるはずだ。

 迫り来る人生のタイムリミットを、レティアは後悔の想いでいっぱいになりながら、延命を計れるルートを実行してみることにした。



 * * *



 会食の二日前、貿易都市国家ペルキセウスでは精霊ラルドが予定通りアメリアとアッシュの代わりに、アスガイアへと出立することになった。


 未来予測でもラルドのみが会食に出席するルートが、犠牲者が少なく最も安全な方法である。しかし、アメリアとアッシュが二人とも欠席になったのは、予言とは別の理由からだった。



『アメリアが懐妊した可能性がある』



 医者の診断によると、確実ではないもののアメリアのお腹に赤ちゃんが出来ているとのこと。初夜をきちんと迎えられずにアッシュ王子は倒れたと聞いていたため、ラルドは驚きを隠せなかったが。

 初夜の晩に体調不良になった為、中途半端な形で終わり、子種を授けられなかったのでは……と考えていたアッシュ自身も驚いていた様子。



「あー……なんていうか、オレ、初夜ってよく分からなかったし。アメリアをすごく痛がらせただけで、オレだけが良くて途中で終わっちゃったと思い込んでいたんだけど……。お医者様に状況を説明したら、もしかしたら出来てるかも……って。まぁ一刻も早くアメリアに子種を授けたかったから、避妊なんかしてないわけで。うん……。そういう感じです」


「ごめんなさい、そういうことらしいの。私も知識不足で行為に挑んだけど初めてで痛いだけだったし、私もアッシュ君も失敗した……と思い込んでいたのよ。てっきり赤ちゃんは授からない形で、初めての夜を終えてしまったと思っていたから。今は幸せだからいいけど。きっと見兼ねた神様が、私達夫婦に子供を授けて下さったのね」


 言い訳ばかり繰り返す二人に胃がキリキリするラルドだが、意外と大人の対応をしたのは精霊鳩のポックル君だった。


「クルックー。そんなわけでラルド様、予言にない展開が来てこれも神が救いの手を差し伸べて下さったのでしょう。お腹の赤ちゃんのことは、まだ確定ではないので内密に。確定になれば、そのうちワタクシの古い知り合いの天使様が、アメリア様の元へ受胎告知にやってくるかも知れないですし」

「ただでさえフェイクニュースの多い世の中だ。ポックル君がそういうなら、天使様の受胎告知を待った方がいいのだろう。じゃあ、僕は魔法の小箱をレティアさんに届けてくるよ」


「えぇ。レティアのこともよろしくお願いします。ラルドさん」

「ラルド様、お気をつけて……!」



(アメリア、お腹に赤ちゃんが出来たのか。そうか。結局、不器用な初夜でもアッシュ王子はアメリアをきっちり抱いていたのか。そうだよな……)


 ラルドは何処かでアメリアに対し、聖母マリアのように懐妊するまではずっと清らかでいてくれる……と思いたい部分があった。快復後も未だ病弱の傾向があるアッシュ王子はそのうち、何らかの理由でいなくなるだろうと。

 実際は他の男に脇目も振らず、夫に対して操を立てるアメリアは立派なのだが。


 どちらにせよ、話しぶりからして今は夫婦生活が順調にいってる雰囲気だった。恋仲からきちんとした形で二人が夫婦になっていくのを、間近で見ることでラルドの中で再び穢れが蠢いている。


(あぁ……また黒い穢れが。どうすればいい、そのうち魔法の箱では収められないほどになってしまう。早く、ケリをつけないと)


 かつてアメリアと共に乗船した船に今度は一人で乗って、ラルドは遠ざかるペルキセウス国を虚無の瞳で見つめていた。


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* 2025年10月25日、外編全17話投稿済。第二部準備中です。 小説家になろう 勝手にランキング  i1061601
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