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以降、これより先は未来予測である。
ルートは分岐点があり、一つではないため注意。
精霊界と人間界の時差も考慮していただきたい。
【未来予測】
精霊歴2023年06月30日。
大祓の日。
穢れを祓う方法を探すと良い日。
その昔、偉い神様に一晩の宿を提供した東方倭国の村人がいた。彼らの一族は滅亡の日にも神様が守ってくれると約束したらしい。
どの国も災いを受ける宿命に生まれた一族とそうでない一族がいるが、その不幸から逃れる方法も用意されている。
精霊歴2023年07月07日。
七夕。
アッシュ王子が現世に復帰。
精霊歴2023年07月18日。
朔・新月。
アッシュ王子を国民に紹介。
妻のアメリアと次期国王夫妻として、活動開始。
精霊歴2023年08月02日。
望・満月。
ここより分岐点開始。
精霊魔法都市国家アスガイアにて、トーラス王太子と聖女レティアによる食事会。異母姉アメリアとその配偶者アッシュ王子も、貿易都市国家ペルキセウスの代表として呼ばれるが……。
【ラルドのみ出席】
錬金術師ラルドが代表として参加。
作成した魔法の小箱を聖女レティアにプレゼントし、平和的な道へ。だが、聖女レティアはその後心労がたたり、入院してしまう。
【アッシュとアメリア出席】
食事会の途中、聖女レティアが倒れる。聖女レティア死去。暗殺の疑いでアメリアが投獄。夫アッシュ王子と共に処刑されることに。
【アメリアとラルド出席】
アッシュの体調不良により、ペルキセウス次期国王夫妻は揃っては食事会に出席出来ず。アメリアとお目付役としてラルドが出席する。ラルド作成の魔法の小箱を聖女レティアに精霊便で贈る。トーラス王太子が偽物で、悪魔像の霊魂であることが国民にバレる。食事会の出席者は、全員死去。
精霊歴2023年08月16日。
朔・新月。
獅子座の新月、年に一度の宇宙の扉が最も大きく開かれる日で、占星術では最大分岐点とされている日。
精霊歴2023年08月17日〜08月31日。
【アッシュとアメリアが生存している場合】
獅子座のお祭りがアスガイアとペルキセウスの両国で行われ、災いを沈める儀式を行う。
【アッシュとアメリアが処刑された場合】
アスガイアはペルキセウスの次期国王夫妻を無実の罪で殺したとし、魔法や召喚を用いた全面戦争へ。両国とも滅亡。
【アッシュのみ生存した場合】
獅子座の扉が開かれて、黒いドラゴンが現れる。呪われた心臓を魔法の小箱に収め、封印し災いを収束させる。だが剣聖アッシュ王子は、妻の死に心を傷めそのまま行方不明に。
【全てのルートでも可能】
全てを終わらせるため、神に選ばれし者が原罪を背負い、天に召される。
* * *
実に半年ぶりに、時系列と未来予測の儀式を行うがアメリアもラルドも未来予測の分岐点を読んで思わず言葉を失った。
(何よこれ、殆どのルートで災いが収束するどころか状況が悪化しているじゃない? レティアの命が危うい食事会もネックだわ。体調不良で欠席しなきゃ、私もアッシュ君も処刑される。それに、悪魔像トーラス王太子以外は亡くなる食事会って何?)
「えぇと……ほら、アメリア。冷静になりましょう。まずは時系列からして、行事イベントにすべて重ねているため少しずつ間違っています」
「あっ……そういえば、行事イベントに出来事を凝縮してまとめてあるから、まるで一日で全部終わっているように見えるけど 。実際は数日かけて行ったこともあるわよねこれが精霊界との時差ってヤツ?」
現実の記憶と照らし合わせると、どう計算しても合わない部分もあり、時間差が生じるというよりもその日付け周辺に起きたことをザックリとまとめてしまった感じだ。
日にちのズレの理由は、人間界と精霊界に時差があるせいらしい。確かに人間の世界でも離れた土地では朝と夜が同時に起きていたり、日にちが違っていたりする。アスガイアとペルキセウスだって、隣国ではあるが二時間くらいは時差があるはずだ。
「はい。それに例えば、アメリアの誕生日はバレンタイン周辺ですが、完全にバレンタインデーの日というわけではありませんし。僕が剣聖の剣を錬金したのも、エイプリル・フール開始で、完成まではもう少しかかっています」
バレンタインデーと縁結びの神様への参拝とアメリアの誕生日は、それぞれ別の日にちだったはずだが、この記録だけ見ると全てが同じ日にちで記録されていた。
ただし、アメリアのようにバレンタインと誕生日が非常に近い場合は、何故か誕生日プレゼントと称してチョコレートを渡してくる者が多い。そういう意味では、アメリアの誕生日はバレンタインデー……というカウントで合っている。
「この中の誕生日設定で合っているのは、僕のクリスマスイヴ生まれってところだけです」
「ふぅん……。さすがは精霊神よね、私みたいにバレンタインデー周辺みたいな曖昧な日にちじゃないし」
「ははは。けど、クリスマスイヴも降誕祭前日ってだけですから、実はこじつけで記念日を増やしてるだけですよ。そういう意味ではこの自動書記くらい、記念日というのはザックリしててもいいのでしょう」
時差は仕方がないものの自動書記というものは、時系列を作る際には日付変更がたまにしか行われないのだろうか。それとも、この記録を行った天使様はよっぽどズボラなのだろうか、とアメリアは首を捻った。
アッシュ王子の誕生日に至っては、イースター週間のあたりというだけだった。きっと熾天使様の中では、アッシュ王子はイースター生まれという曖昧な記憶で登録されているに違いない。
実はイースターというのはクリスマスとは異なり、毎年日付が違うのである。今年がたまたま04月09日、花祭りの次の日だっただけだ。
「そ、そうよね。注意事項にも時間に差が生じるって書いてあったもの。もしかしたら少しずつ記録がずれて残ることで、後の世にまったく違う内容が残ることがあるのかも知れないわ」
「では、次の作業として以前アメリアが作った精霊歴2023年の予言を読み直します。そうすれば、現状と予言がどこまで当たっているのか検討がつくはずです」
なるべく不吉な展開は考えないように笑って語っていたラルドだったが、次に過去に自分達が割り出した予言を取り出す目は真剣だった。




