六日目
たぶん、ろくなことにならないだろう。
よくて追い出される。最悪殺されるかもしれない。
けれど、俺のそんな予想は外れた。それもこれまた驚くべきことに良い方向に。
俺が思っていた以上に勇者とその仲間には価値があるのか、それとも上の人達がどれだけめちゃくちゃなことをする勇者達でも目的のためには生じる不利益を呑み込める器量の大きさを持っているのか。分からないけれど、どちらにせよ俺にとって都合がいいのは間違いない。
明日、幼なじみ達は『迷宮』に行くらしい。
噂には聞いたことがある。
ある日、何の前触れもなく、世界に突然複数現れたそれは人間に富と浪漫、そして死と恐怖を与えた。
入りくんで迷路のようになった迷宮の内部は、森に生息する魔物なんかとは比べ物にならないほどに狂暴で凶悪な迷宮生物と迷宮以外では手に入らない特殊な鉱石や魔法道具なんかに溢れているらしい。
今回あいつらが行くのは難易度が低く、新人騎士の修練の場なんかによく使われる比較的安全な部類の迷宮。
今回の迷宮探索であいつらの実力を正しく把握し、それを元にまた新しく指導の方針を定めるらしい。
心配がないと言えば嘘になる。
けど、俺が心配したところでこの話が止められるわけでもない。
それに、ここ数日で改めてよく理解したけれど、俺の幼なじみ達はどいつもこいつも俺が心配する必要なんてこれっぽっちもないくらいに常識はずれに強い。
俺ごときが心配なんてしようものなら、それこそ彼らに失礼というものだろう。
俺がすべきことは、彼らの心配ではなく、彼らが迷宮から帰ってきた時にどんな風に出迎えるかを考えることだ。
何をして帰りを待とうかな。
次回、迷宮へGO!