記憶と契約
、、、はぁはぁ、、はぁ、、
バタッ
あぁ、痛いよぉ。
なんで僕はこんなところにいるの?
その少年に起き上がる力は既に残っていなかった。
『、、誰か、、助けてよぅ、、』
ヒュー
暑く乾いた風が砂を巻き上げ少年を襲い続ける。
自分がなぜ砂嵐が巻き起こるこんな砂漠にいるのか、少年は何も覚えていなかった。
もう、死んじゃうよ。
少年には言葉を発する力すら残ってはいなかった。
自分の心臓の音が次第に遅く、弱くなっていくのがはっきりと聞こえる。
少年が生きることを諦めたその時、ゴーッとまるで低い唸り声のような強風が再び少年を襲った。
『「・・おい・・死・・じゃ・・よ・・」』
どこからともなく聞こえた声は例えるなら狂った道化のようであった。
その声は低い風の音と重なって少年は全てを聞き取れた訳では無いが、しかし意味は何となく感じ取れていた。
唸り声がなり止むと、砂嵐はいつの間にか止んでいて、少年の目の前で大型の魔物、それも地竜がヨダレを垂らしていた。
少年は朦朧とする意識の中で、再び死を覚悟した。
あ、あ、、水、、
み…み……ず……
プシャァア
水、水だっ。
少年は大量の水を頭からかけられた。
ほんの少し力を取り戻した少年が見上げたそこには、筋骨隆々とした男が立っていた。
『おうボウズ、大丈夫か?』
地竜を背に、少年に微笑んだ男に涙を流した少年の顔は直ぐに恐怖に変わった。
まさに今、男の後ろで地竜が咆哮と共に襲いかかろうとしていた。
突如、咆哮は悲鳴へと変わり、地竜の首は切り落とされいた。
『ところでボウズ、なんでこんな所に一人でいたんだ?』
すると少年は安心したのか気を失ってしまった。
あれからしばらくして、自分を助けた男が当時B級ハンターのガイアであることを知った俺は、国に伝わる伝説になぞらえて、剣士であるガイアを支える銃士になって恩返しすることが夢となっていた。
『銃で決まりなら早速契約を始めてなさい。あ、そういえば私の名前はゾフィーよ。』
ここで名乗るのか、本当に変な人だ。既に入室時の原型はとどめていない。
それにゾフィー、、どこがで聞いた気もしないが、。
まぁいい。今はまずは契約だ。
武器には精霊が宿っており、その精霊と契約を交わすことによって武器を使用することが出来る。
銃に両手をかざし、祈りを捧げると二丁拳銃を装備した悪魔にも見える精霊が現れた。
10cm位のその精霊は視線を尖らせて観察を始める。
『お前が、俺様のパートナーか。俺は魔王を倒す伝説の銃になることが夢なんだ。お前は俺の夢を叶えてくれるのか?』
魔王。それはあくまで空想上の存在だが、昨日学校で聞いた魔女やら魔人の存在が頭をよぎる。
それにしても中々野心家な精霊だな。
だが、ガイアさんを目指すのであれば上昇志向の高い精霊と組んだ方がこちらとしても望むところだ。
『あぁ、そのつもりだ。俺はライ=トーラス。よろしく頼む。』
『仕方ねぇ。俺の名前はバステだ。これからよろしくな。』
そう言うとバステは再び武器の中に宿り、銃がほんのり紫色に光り輝いた。
『終わったみたいね。契約者以外の者は精霊を見ることは出来ない、というか、精霊が対談のための空間を展開するから何も分からないんだけど、その顔は上手くいったようね。』
『はい。』
『はい2人とも!武器は光を発している間使用することが出来るわ。精霊の活動可能時間の長さが武器の使用時間の長さよ。あなたたち同様精霊も強く、長く活動できるようになるものだから頑張って鍛えなさい。ボダラくんはすぐ使えると思うけど、ライくんは能力の関係上精霊と後で色々話し合っった方がいいわね。』
『まぁこんな所でいいかしら。』
彼女はそう言うと、頑張れ!ハンター!と2人の背中を押し、外に送り出した。
『色々急だったな。』
『そうですね。』
『俺はもう行くけど、お前セルネと虎の7位の、、モコモだっけ待つんだろ?』
『それが、、』
と事情を説明しようとすると、頭の中に声が流れてきた。
『『ライくん、後でモコモくんと学園まで来なさい。セルネさんについて話します。これについては他の生徒には内密にお願いします。』』
校長のテレパシーだ。
『ん?』
『あ、いや、そうです。2人を待ちます。』
『そっか。じゃあ俺は早速これを試してくるかな。』
そう言って、彼は腕のブレスレットを輝かせると地面に消えていった。
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