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Tomorrow Hunt  作者: hiro
13/14

魔女

12


宿屋に到着するとモコモはすぐさま変身を解いた。


『お疲れ様。』


『うん〜、、』


バフッ


気力のない返事とともにモコモはベッドに倒れ込む。


無理もない。ハンター試験に加えて、その後もずっと能力を使い続けていたんだ。


宿泊手続きの最中も、頑張って立っていたんだろう。


『モコモ、意識はあるか?』


『大丈夫ー、話くらいは聞いてられるんよー。』


『じゃあセルネ。よろしく頼む。』


俺は倒れ込んだモコモの隣に腰を下ろし、セルネは向かいのベッドに座った。


『じゃあ話すね、、』


息苦しさは続いており、居心地の悪さは変わらない。


『聞いていると思うけど、私は無能力なの。その理由を話すには昔私に起こったことを聞いてもらう必要があるんだけど、。』


長くなるけどいいよね、とそう言うと過去の出来事について話してくれた。


内容はこのようなものだった。


幼い頃に両親とセルネの家族3人で訪れた古城の周りには鮮やかな花が咲き誇り、澄んだ湖が美しい景色と散った花弁を浮かべていたと言う。


そこに訪れた理由は覚えていないが、何かおめでたいことがあった気がするらしい。


しかしそこで、魔女に出くわし両親と自身の能力を封印されたセルネは気を失い、目を覚ますと国に戻っていて、校長に保護されていたとの話だった。


『それで、校長の養子になったのか。』


『うん。』


『セルネにそんな過去があったなんて、、、話してくれてありがとうんね。』


『色んなものを封印された私は、魔女の干渉をずっと受けていたせいで身体能力が上昇し続けているの。』


『だからいきなりCランクなのか。』


『うん。校長先生の養子になったのは早く本当のお父さんお母さんを助けるためにと、校長先生の提案を受けたから。』


『私はいち早く両親を救い出したい。今まで2人に話してなかったのは2人がハンターじゃない一般人だったからと校長先生にとめられていたからで隠してた訳じゃないんだよ、、』


セルネは申し訳なさそうにしているが、当然俺達には彼女を責め立てることも、責め立てる気もない。


『なるほどな。


昨日学園に行った時にマルクでの出来事について先生たちが話していることが聞こえたんだ。その時に魔女や魔人の存在を耳にしたな。』


『うん。魔女に干渉されたことによって変わったものは身体能力と透視能力っていうのかな、相手の心の中が読めるの。でもライは特別。何故か分からないけどライの考えは全て頭の中に流れてくる。』


『な、なんだその能力。』


何やら恐ろしい力だが、ようやく合点がいった。


『それで昨日、俺が先生たちの会話を思い出している時にマルクに魔女に関係する魔物がいることを知って向かったんだな。』


『うん。でも結果は違った。魔法使いは魔女や魔人によって生まれるものがほとんどだけど、あそこに居たのは自然発生した弱い個体、私が追い求める魔女とは全然関係なかった。』


モコモは黙って聞いている。


セルネはここからが本題、と言った感じで話を再開する。


『私は2人とはここまでにしようと思ってる。2人は他の子を見つけてチームを組んでよ。』


『嫌だ!』×2


黙っていたモコモも、当然俺もそれには納得できなかった。


セルネは顔を伏せたと思ったら、再び見上げた彼女の顔は満面の笑みで目からは大粒の涙をこぼしていた。



『フフフフフフフフフフフフフフフッ』


突如として、どこからともなく不気味な笑い声が部屋に鳴り響いた。


部屋は異様な雰囲気に包まれ、部屋という空間が外界から隔離されたということは自身の能力の発動により感知できた。


部屋の外から音が全く聞こえないのだ。


そして次に部屋が歪み始める。


『モコモ!セルネ!気をつけろ!』


部屋は、ハンター専用宿屋ともあって安い部屋でもなかなか大きく、戦闘できるスペースはどうにか確保できそうだ。


俺の掛け声に疲れている体を起こして警戒を始めるモコモだが、セルネは動かなかった。


それどころか、体が透け始めている。


『おい!セルネ!どうした!?』


セルネの元に咄嗟に手を伸ばすと、手はそのまま彼女をすり抜けた。


『なに?!これはどういうことだ、どうなっているんだ?!』


すり抜けた手を確認しても異変はない。


おかしいのはセルネの方だ。


『ラ、ライ!セルネの顔んが...!』


何かに気づいたのかモコモの言う通りセルネの顔を見ると、顔は暗闇に染っている。


『フフフフ、この子はいい仲間を持ったようだね。』


暗闇からは口もないのにセルネでは無い別の女性の声が聞こえる。


『お前は何者だ?!』


『私かい?私はトゥリー。四大魔女の一人さ。』


『セルネから両親と能力を奪ったのはお前か?!』


『そうさ、、ん??、、、、、、おやおや、これは面白い冗談だね。まさかこんなことがあるんだね。フフフフフフフフフ』


魔女トゥリーは再び不気味に笑い、時間が経つにつれセルネの体はどんどん透明になっていく。


彼女の体が無くなった時、なんの痕跡もなくなってしまう予感がする。


『本物のセルネはどこにいるんだ?!』


『私がそれを教える義理があるかい?』


やはりここにいるのは本物のセルネでは無いようだ。


腰の銃が紫色に光っているのを確認し、音の弾を銃に込める。


これまで、自身の音の能力によって出来たのは見方の支援のみだった。


しかし、銃と音の相性は未知数。


計算通りであれば、特殊なコーティングが施された音の弾は音速×銃の発射速度が加わり破壊力を持って対象にダメージを与えることが出来る。


しかし、今はダメージを与えるのではダメだ。


今込めた音の性質は、自分の能力の範囲内に入った時に警告をするアラームのようなもので銃で発射したからといってダメージは一切ない。


目覚まし時計も実は自身の能力で作った音を閉じ込めており、試験会場ではギリギリ能力の範囲である100m以内に入っていたため鳴ったのだった。逆に言うと範囲外であれば時間になっても音はならない。


再びこの音の弾『Informing』が俺の範囲に入った時、感知できる仕組みになっている。


銃を構える頃には暗闇からは音が聞こえなくなっていた。


トゥリーはおそらく、もうこの場にはいない。


プスッ


念の為、銃声を音で覆い射出音を最小まで抑えて撃つ。


引き金を引いた次の瞬間部屋は元に戻りセルネだけがいなくなっていた。


暗闇と化した顔の部分に打ち込んだinformingは貫通することなく吸い込まれていったが、暗闇のその先の何に当たったのか、この能力がこの先発動することがあるのか、そんな期待を持つことさえ出来ない絶望だけが部屋に充満していた。

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