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転生して十年経ったので街を作ることにしました  作者: 笹村工事
第二章 街の予定地に魔物が溢れているので対処を始めるよ
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11 反撃開始 その1

「ごめん! 遅くなった!」


 俺は蒸気機関車の屋根から跳び降り、手近な魔物を切り裂きながら、魔導具で和花たちに通信する。


【大丈夫~。まだ誰も死んでないから~】

【むしろグットタイミング】

【気にするな! それよりもお前らは新種の魔物を潰せ! アレの動きが鈍った瞬間に他の魔物の動きも鈍った! アレさえどうにかすればあとはどうにでもなる!】


 和花の助言を受けて、俺はみんなに指示を出す。


「五郎と有希は俺と一緒に新種の魔物退治! 他のみんなはそれ以外の魔物に対処! 指揮者権限のあるみんなは適時指示を出して部隊を誘導して!」


 短く指示を出し、俺は振り返る事も無く新種の魔物に向かう。

 他に意識を割く余裕は無い。まずは新種の魔物を倒す事に集中しないと。


 だというのに、新種の魔物はこちらが嫌がることをやってくれる。


「ルアアアアアッ!」


 新種の魔物が吠え声を上げると同時に、わらわらと魔物が俺に向かって来る。

 10体前後だが、いちいち相手している間に、カルナが与えた傷から完全回復しかねない。


 だから、まずは向かって来る魔物の動きを止める。

 手にした魔術武具、村正に過剰な魔力を注ぎ込み巨大化させると、地面に突き刺し魔術を起動する。


「溢れ溺れよ、神変鬼毒酒!」


 村正から生み出した魔術毒を、こちらに向かって来ていた魔物に地面を伝い流し込む。

 それにより魔物たちは、身体が麻痺しろくに動けない。


 けれどその代償に、俺は村正を使えなくなる。

 しかも、魔術毒を生成し流し続ける間中、魔力は消費しっぱなしだ。


(長くは持たない。短期決戦で潰さないと)


 俺は手早く決断すると、新しい魔術武具を召還する。


「武具召喚、天下名槍、蜻蛉斬り」


 手に重みが生まれる。見るまでもなく蜻蛉斬りが召喚されたのを実感すると、真っ直ぐに新種の魔物に突っ込む。


「ルウウウオオオオウウ」


 新種の魔物は手にした杖を掲げ声を上げる。

 その途端、数十の光の矢が、俺の前方に現れた。


「ギヒ」


 笑うような声を上げ、新種の魔物は俺目掛け一斉に打ち放つ。

 それは一瞬。俺が居た場所を貫いた。


 地面が抉れ、幾つもの穴が開く。

 盛大に土煙が上がる中、俺はそれを空から見下ろしていた。


 新種の魔物が光の矢を生み出した瞬間、俺は蜻蛉斬りを支えにして、棒高跳びの要領で上空に跳び上がったのだ。

 魔術により身体強化された俺は、10m以上の高さまで跳び上がる。

 それを、魔物は楽しげに笑いながら見上げていた。


「イヒヒヒャヒャヒャ!」


 上空に跳び上がり落ちていく俺に照準を付け、再び数十の光の矢を生み出す。

 そしてそれが解き放たれようとした瞬間、先んじて俺の蜻蛉斬りが、魔物の顔を串刺しにした。


「ガアアアアアアアッ!」


 串刺しにした蜻蛉斬りは、そこから更に回転しながら貫き、新種の魔物の顔から離れると俺の手の元に。

 俺の思い通りに動き回る自在槍としての機能を十二分に果たす。


(これでくたばってくれると良いんだけど)


 淡い期待を抱くも、勿論そんな物は叶わない。

 顔を貫かれた新種の魔物は、傷口を一瞬で塞ぐと、また何十もの光の矢を生み出し俺に撃ち放つ。


「くそっ」


 思わず悪態をつきながら、地面に着地した俺は回避に専念する。

 魔物に流れ弾が跳ぶのは構わないが、仲間のみんなに向かっては堪らない。


 周囲の気配を読みながら新種の魔物の攻撃を誘導しつつ、ギリギリで避けていく。


(神与能力を発動させるために、幾らかわざと受けるか?)


 俺の神与能力、死亡遊戯は、敵からダメージを受ければ受けるほど、能力が強化される。

 けれど、即死すればそこで終わるので、使い所が難しい。


(発動すれば、少々身体が吹き飛ぼうが死ななくなるのは良いけど、そこに行くまでに即死クラスの攻撃受けるとマズいからな)


 魔王との戦いの時は、最初にわざと左腕をふっ飛ばさせ能力を発動し、そのあと胴体の3分の1をえぐられた状態でも戦い続けられたので、やりようによってはどうにでもなる。

 能力発動中は、魔力も増大するので、潤沢な魔力で肉体を一時的に補完し、戦い続けたんだ。


(とはいえ、あの時は魔王が俺を舐めてくれたから、即死攻撃を食らわなくて済んお蔭で可能だっただけだからな。この魔物が、そうしてくれるなら良いんだけど。それに――)


 新種の魔物が放ち続ける光の矢を避け続けながら、俺の脳裏には泣きそうなリリスの表情が浮かぶ。


(気にしてる場合じゃないのは分かってるけど、泣かせたくはないな)


 じれるように俺が悩む中、新種の魔物は光の矢を撃ちながら俺に突進してくる。

 俺に当てることを捨て、逃走進路を塞ぐように光の矢を撃ち続け肉薄すると、手にした杖に光の刃をまとい殴りかかって来る。


「くそっ」


 俺はそれを蜻蛉きりで受け止める。

 新種の魔物は全体重を、撃ち合わせた杖に乗せ、俺の動きを止めると、


「イヒッ」


 神経に触る笑い声をあげ、新たな光の矢を生み出し俺に撃ち出そうとする。


「そりゃ、悪手だろ」

「ギイッ!?」


 余裕のある俺に、疑問の声を上げる新種の魔物は、


「真っ二つ切り!」


 背後から近づいていた五郎に、力いっぱい斬りつけられた。

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